この本( 「Uniformen der Nationalen Volksarmee der DDR 1956-1986」 )は東ドイツ(DDR)で出版された物で、東ドイツ軍(NVA)の創設から終盤に至る迄の歴史に関する記述があり、その上で、各時代毎の軍服や記章類の変遷が説明されている。もちろん、東ドイツ軍の歴史についても書いてあるよ。
DDRとは、「Deutschen Demokratischen Republik」ドイツ民主共和国(通称 東ドイツ)だ。
NVAとは、「Nationale Volksarmee」国家人民軍だってば。
「親愛なる同志諸君!!
今こそ、輝ける栄誉と共にある東ドイツ国家人民軍の偉大な歴史に思いを馳せようではないか!! 我等が敬愛する人民の父、エーリッヒ・ホーネッカー議長と共に!!」
(  ̄ー ̄)ノ
〓〓〓〓〓 ワー バンザーイ バンザーイ ワーイ
ヽ(ー`ヽ)ヽ(´ー`ヽ)ヽ(´ー`)
目次
1 表紙と裏表紙
2 階級章(肩章)の構造と兵科色
3 本文の一例
4 掲載のイラストについて
5 階級章と記章、説明の一例
6 巻末の内容
7 追加情報
1 表紙と裏表紙
2 階級章(肩章)の構造と兵科色
3 本文の一例
4 掲載のイラストについて
5 階級章と記章、説明の一例
6 巻末の内容
7 追加情報
表紙と裏表紙
これが「ユニフォーメン」の表紙だが、不満を覚えるのは、この陸軍制服の襟章は、単なる厚紙の上にプレス加工の金属の薄板を張り付けただけの何とも安っぽい代物である点だ。デザインだけは旧ドイツ軍と同じだが。
ただ 、これはこの本に載っているが、60年代迄は襟章も正に旧ドイツ軍を彷彿とさせる物だった。
そして、この階級章は中尉になる。東ドイツ軍では尉官と佐官の階級と星の付け方はソ連軍と同じなので、ソ連軍の尉官は4階級だから、中尉で星が3つ、大尉で4つになる。
その階級を示すと:
1 Unterleutnant 下級少尉
2 Leutnant 少尉
3 Oberleutnant 中尉
4 Hauptmann 大尉
となる。もちろん、旧軍時代に1番の階級は無い。
兵科はどうやら「Raketentruppen und Artillerie sowie Truppenluftabwehr」ロケット砲兵及び防空兵。
これが裏表紙。
一番左下が、「Marschall der DDR」東ドイツ軍の共和国元帥だ。
因みに、この本の大きさは:
縦22.5㎝、横20㎝、厚みは2.3㎝程。
階級章(肩章)の構造と兵科色
この階級章(肩章)も襟章と同じく、只の安っぽい厚紙製だ。これも初期の頃は旧軍その物と言える造りだった訳だが、時代が進むにつれて簡略化されている。
右側の逆三角形の記章には中央に国章があり、周囲に文字が書いてあるが:
国章の上部分に FÜR DEN SCHUTZ
他の部分に DER ARBEITER UND BAUERN MACHT
とある。
まぁ、共産国の軍隊は、労働者と農民による軍隊だからね。(ARBEITERが労働者、BAUERNが農民)
これが、本文267ページに記載の東ドイツ軍の兵科色。
規模が小さい分、理解しやすくて良いね。
本文の一例
これが本文の一例だが、本文は写真も多く使われているので其の点は良い。だがもちろん、内容を理解するためには当然ドイツ語の深い理解が欠かせないので、難しいね本当に。
掲載のイラストについて
この「ユニフォーメン」掲載のイラストは:
1 1956年建軍当時の物が14ページ。
2 それ以降の50年代後半の物が4ページ。
3 60年代の物が12ページ。
4 70年代から80年代の物が48ページ。
そして上の画像は「1956年当時の陸空軍下士官兵の制服」のイラストだが、見ての通りいまいち出来が良くない。
だがこの水準は、上記1の1956年建軍当時の物の14ページだけなので、それ以降は、まったく問題はない。
上掲のイラストと比べてみると、その水準の違いは明確である。
そしてこれは、「1979年当時の兵士用パレード装及び通常勤務時用制服」だが、写実的で細部まで分かりやすいイラストだ。
このイラストを見て興味を引かれるのは、足下のブーツの描写だ。
このブーツの照り返しの描きかたの違いは興味深く感じないだろうか?
右が詳細で中央が普通、左が簡略という感じだが、一見同じように写実的なイラストでも細部に違いが現れている。
もう一つ、丁度コートを着用したイラストであるので、東ドイツ軍と旧国防軍とのデザインの違いを説明すると:
1 東ドイツ軍のコートには袖口の折り返しが無い。
2 東ドイツ軍のコートはボタンが「縦に五組」( 私が持っている将校用コートではね )
3 旧国防軍のコートはボタンが「縦に六組」
この様に袖口だけでなく、ボタンの配列が違うので、改造すれば良いとは思いませんけどね。
階級章と記章、説明の一例
この様に、各時代毎の階級章と記章をカラー写真を豊富に使って掲載されているのだが、一つ残念なのが、この本には勲章の名称は記述されているが、実物の写真が載せられていない事だ。
それが載っていれば、さらに価値が上がったろうね。
その様に残念な点が有るにしても、本当に、階級章だけでなく記章類も旧ドイツ軍その物と言える程に似通ったデザインになっている。
それにしても、ドイツ連邦軍では階級章のデザイン一つ取っても旧軍時代とは大きく変化しているのに、ソ連の支配下に入った共産政権下の東ドイツ軍の制服や階級章や記章類が、どうしてここまで旧ドイツ軍のデザインを踏襲しているのか?
東側でこそ、旧ドイツ軍のイメージはナチスと同じように嫌悪されるのかと思えば、以外とそうではなかったようだ。この当時こそ、見た目と中身が違うことを理解していたのだろうか?
ワルシャワ条約機構(ドイツ語表記 Staaten des Warschauer Vertrages)諸国内で、東ドイツ軍以外ではポーランド軍も旧軍時代を色濃く引き継いだデザインだ。又それだけでなく、このソ連以外の東側諸国内でいわゆる「国家元帥」の階級が存在しているのは、東ドイツとポーランドだけだ。この点からしても、東側諸国内でのこれ等二国の地位の高さが示されていそうだ。
巻末の内容
巻末部分には上の画像の様に、記章類の装着位置や階級章の星を付ける位置を示す細かい規程等が記述されている。
追加情報
次に示すのは東ドイツ軍の基礎教本「Handbuch Militärisches Grundwissen」の巻末付録からだよ。
ここには国旗等が載ってるが、右上が国防委員会委員長の旗、中段が国家評議会議長のスタンダードだ。
東ドイツ陸軍、空軍と国境警備隊の階級章だ。こうしてみると、本当にデザインは変わらんな。星の付け方がソ連軍になっているぐらいだ。
それと、旧軍のGeneraloberstは上級大将だが、東ドイツ軍では大将だな。
さて、階級名の日本語表記について疑問があるので書いておく。よくUnteroffizierの訳を伍長と書く例が多いが、これは軍曹でなければ駄目だろう。
これの例証としては、「Handbuch Militärisches Grundwissen」の巻末付録にワルシャワ条約機構軍とNATO軍の階級章も載せられているが、そこには階級名が原語とドイツ語で表記されている。
そこで、アメリカ陸軍の階級と対照してみると、SergeantがUnteroffizierとなっている。
ちなみに、イギリス陸軍のSergeantはFeldwebelとなっているから、只の訳ではなく対等の階級になっている訳だ。
そもそも、欧米諸国では伍長は下士官ではないのだから。
では何故、Unteroffizierを伍長と訳す例が多いのかと言えば、それは日本陸軍では下士官の最下級が伍長だったからに過ぎない。
もう一つ書くと、Armeegeneralを上級大将と訳したりしているが、これも米軍と比較すると、General of the ArmyがArmeegeneralとなっている。
ソ連軍の上級将官の階級名の訳はややこしい物があるけどね。他の国に存在しない階級だし。
ところで、この中将と大将の表記が逆になっているぞ。
こちらは飛行服と作業着用の階級章。
これは旧軍時代の様なデザイン性は無いな。
これで勲章の正章と略授の一部が分かるな。しかし、何故一部しか載ってないんだ?
勲章名は上の「uniformen」に記載されているけど、シャルンホルスト章が有るのにクラウゼヴィッツ章が無い不思議さ。
クラウゼヴィッツもナポレオンに果敢に抵抗した軍人であるし、そして共産圏でも影響の強い「戦争論」の著者なのにね。
その勲章名は:
Karl Marx Orden
Held der DDR
Held der Arbeit
Fliegerkosmonaut der DDR
Hervorragenden Wissenschaftler des Volkes
Friedrich Engels Preis
Theodor Körner Preis
Scharnhorst Orden
Kampforden 「Für Verdienste um Volk und Vaterland」
Orden 「Banner der Arbeit」
Orden anderer Staaten
Medaille für Teilnahme an den bewaffneten Kämpfen der deutschen Arbeiterklasse in den Jahren 1918-1923
Medaille für Kämpfer gegen den Faschismus 1933-1945
Hans Beimler Medaille
Clara Zetkin Medaille
Verdienstmedaille der DDR
Medaillen zum Ehrentitel der NVA, der Grenztruppen der DDR und der Zivilverteidigung sowie zu anderen Ehrentiteln der DDR
Verdienstmedaille der NVA, der Grenztruppen der DDR und der Zivilverteidigung
Ehrenzeichen 「Für Verdienste in der Reservistenausbildung」
-andere Verdienstmedaillen der DDR
Medaille zum Ehrentitel 「Kollektiv der sozialistischen Arbeit」
Verdienstmedaillen anderer Staaten
Medaille der Waffenbrüderschaft der NVA
Medaillen der Waffenbrüderschaft und Militärische Erinnerungsmedaillen anderer Staaten
-anderer Medaillen der DDR
Jusbiläumsmedaille 「30 Jahre NVA」
Medaillen für treue Dienste der NVA, der Grenztruppen der DDR und Zivilverteidigung
Medaillen für treue Dienste anderer Bereiche
Vaterländischer Verdienstorden in Gold, Silber und Bronze
Nationalpreis 1., 2. und 3.Klasse
Hervorragender Wissenschaftler des Volkes
Verdienter Arzt des Volkes
Verdienter Lehrer des Volkes
Verdienter Techniker des Volkes
Verdienstmedaille der NVA in Gold, Silber und Bronze
Medaille für treue Dienste in der Nationalen Volksarmee in Gold, Silber und Bronze
Medaille für treue Dienste in der Kasernierten Volkspolizei
Medaille für treue Dienste in der Deutschen Grenzpolizei
Medaille für treue Dienste in der Deutschen Volkspolizei
Medaille 「Ehrenzeichen der Deutschen Volkspolizei」
Leistungsabzeichen der Nationalen Volksarmee
Medaille für vorbildlichen Grenzdienst
Medaille für ausgezeichnete Leistungen des Ministeriums für Staatssicherheit
Verdienter Eisenbahner der DDR
Verdienter Bergmann der DDR
Verdienter Meister
Meisterhauer
Bester Facharbeiter
Aktivist des Fünfjahrplanes
Medaille für ausgezeichnete Leistungen im Wettbewerb
Brigade der hervorragenden Leistung
Hervorragende Jugendbrigade der DDR
Verdienstmedaille der Deutschen Reichsbahn
Verdienter Meister des Sports
Medaille für die Bekämpfung der Hochwasserkatastrophe im Juli 1954
Preis für künstlerisches Volksschaffen
上の画像の勲章で入ってないのがあるから、全部じゃないけど、何か抜け落ちたかな。それにしても数が多すぎる。
次は記章だが、ソ連軍の参謀大学や士官学校卒業者は特別扱いなんだろうね。(´・ω・`)?
最後に職務章、これで一通り示せたかな。
さて、いかがだろうか?当然ながら東ドイツ軍の制服のデザインと歴史的変遷を理解する上では、非常に役に立つ資料となるだろう。
ただ、この様な軍服の資料を見ていて、いつも思うのは、服の前面は載せられていても、後面を載せる事がほとんどない点に不満を感じるね。
この本に載せられたイラストでも、後ろ姿が描かれているのは二点だけだからね。
また、東ドイツ軍についてより調べるとしても、この「ユニフォーメン」の巻末に参考資料一覧が掲載されているが、そこには50種類の文献が示されている。しかも、それで一部だそうだ。
本当に調べていこうとしたら、際限がないね。(´;ω;`)
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