学術会議が問題化する前の6月2日の参院財政金融委員会で自民党の有村治子議員が「千人計画」を採り上げ政府に見解を質している。
日本では文科省や外務省が関係するが、誰が参加し、どんな便宜を受けているか把握しておらず、無防備を露呈した。
日本学術会議は、続発した科学者の不正行為に強い危機感を持ち過去に何度か倫理規定などを示してきたが、平成18(2006)年にも再発防止の対策を関係諸機関に促す「科学者の行動規範について」を声明として出している。
2017年に軍事研究云々の声明を出した時の会長・大西隆東大名誉教授は「中国の方から話があって仲良くしましょうということでしたが、・・・『千人計画』については、一切関係がないですね」と同上誌で語っている。
学術会議は組織として「千人計画」に関わってはいないかもしれないが、個々の会員や元会員、連携会員などが関係していることは明確になっている。しかも日中間組織の連携が個人活動を容易にしているとは言えないだろうか。
平成18年の行動規範では「責任」「行動」「説明と公開」「利益相反」などの小項目があり、「人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献するという責任を有する」「研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性・客観性をもって公表する」などと記されている。
ここでの「社会」は日本だけでなく国際社会も包含するであろうが、上記の数少ない例示からは科学者が日中の関係を忘れてはいないだろうか。
筆者はパレスチナのベツレヘムにあるゴルゴダの丘へ通じる「ヴィア・ドロローサ」(「苦難の道」:キリストが十字架を背負って歩いた道)を歩いたが、学術会議は自ら「日本」という宝物を背負って刑場に向かっているのではないかとさえ思えてならない。