土井正男・東大名誉教授は現在も北京航空航天大学でソフトマター物理学を教えている。
9年前に北京の理論物理学の研究所で連続講演をした際に知り合った中国人の先生から「千人計画」に誘われた。
こちらも申請など先方ですべてやってくれ、時々の帰国は学会を兼ねているので出張費が出る。
東大時代のように科研費の取得や学会に顔を出すなどの気配りもなく研究に集中できるので「楽園」ですと語る。
どちらも中国の「国防7校」の重要拠点であるが、土井氏は「よもや日本にそんな技術がありますかね?」と語り、警戒の様子は一向にない。
もっとも、警戒や疑心を抱けば渡海する決心には至らなかったかもしれない。
ビーム機能化学の専門家である真嶋哲朗・阪大産業科学研究所名誉教授も准教授になった教え子から「千人計画」への応募を勧められ、「見事に」選ばれ、高度人材向けの10年有効ビザまで発給されている。
霊長類の遺伝子を研究する高畑亨教授(43)は浙江大学に5年前に選ばれ1500万円と5年分の研究室運営費5000万円を支給されて赴任している。
給料は准教授並み(平均年収700万円前後)であるが、『ネイチャー』や『サイエンス』に論文が掲載されると1500万円のボーナスが出る。
習近平主席が「科学大国」を宣言して〝論文掲載数世界一″を目指すため、外国人の論文も中国の大学や研究所発の論文としているが、日本や米国の研究者は発表の形にはこだわらないという。



