第92回 福井・慶家誠太朗プレーイングコーチ「チームを変えた新人と主将の存在」
今月1日からキャンプがスタートしました。三国球場での1週間の日程を終え、7日からは、おおい町総合運動公園野球場で練習に励んでいます。野田征稔監督の口ぐせである「何でも一番!」を実現させるため、野田監督、谷村智啓コーチ、そしてキャプテンの織田一生(福井高−東北福祉大−TDK千曲川−TDK)を軸とし、チーム一丸となって今シーズンも戦っていきたいと思っています。
昨シーズンは福井ミラクルエレファンツにとっては飛躍の年となりました。2008年の設立以来、4期連続で最下位に陥っていた福井でしたが、昨シーズンは前期は2位、そして後期には初優勝をすることができました。初めて臨んだ地区チャンピオンシップでも、石川ミリオンスターズに負けはしたものの、3試合全てが2点差以内と決して力負けしていなかったと思います。
チームが変貌を遂げた最大の理由は、選手の意識が変わったことにあります。北田亘(坂田南高−専修大)や西川拓喜(三島学園高−白鷗大)といった技術的にも精神的にも高いレベルの新人選手たちが入ったことで、チーム自体が非常に活性化されたのです。彼らの野球への姿勢や練習態度が若手のいいお手本となり、ベテラン勢にはいい刺激となりました。
加えて、キャプテンの織田が捕手に戻ったことも大きかったですね。後期の優勝は藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)、岩井昭仁(岐阜総合学園高−愛知学院大−ヒタチエクスプレス)、高谷博章(北海高−浅井学園大)の投手3本柱のおかげと言っても過言ではありません。優勝したとはいえ、一つ一つの試合を見ると、圧倒的な力を見せつけての勝利ではなく、接戦をモノにしたゲームが非常に多かった。僅差での勝利はまさに投手陣の踏ん張りがあったからです。そしてその裏には織田の存在がありました。彼が投手陣をうまくリードし、全幅の信頼を得ていたからこそ、投手陣は安心して投げることができましたし、バックも落ち着いて守ることができたのです。
とはいえ、昨シーズンも最初からうまくいっていたわけではありませんでした。開幕は黒星スタートとなったものの1点差での敗退。さらに2試合目から3連勝と、まずまずのスタートを切りました。ところがGW以降、故障者が相次いだこともあり、引き分けをはさんで8連敗を喫し、最下位に陥ったのです。さすがにこの時ばかりは前年の10連敗を思い出し、焦りも生じました。
この暗いトンネルからなんとか抜け出そうと8連敗後、ミーティングを開き、野田監督や織田が「気持ちを切り替えていこう!」と選手たちを鼓舞しました。それに応えてくれたのが、故障から復帰したばかりの岩井だったのです。翌日、故障明け初の先発を務めた岩井はそれまでのうっ憤を晴らすかのような見事なピッチングを披露してくれました。結果は3−0の完封勝ち。この勝利を機にチームが気持ちを新たにすることができたのです。
前述したように初めて臨んだ地区チャンピオンシップでは石川に負けてしまいました。4−6、1−0、3−4という接戦で、2球団の力の差はまさに五分だったと思います。しかし、勝負の世界ではその僅かな差こそが大きいわけです。敗因は小さなミスの積み重ねにありました。盗塁ミス、送りバントのミス……。シーズン中にはできていたことが福井はできず、逆に石川は普段通りの野球をしていた。この差だったのです。毎年、プレーオフを経験している石川とは違い、福井は初めての経験。それだけに選手には短期決戦でのプレッシャーが襲いかかっていたのでしょう。精神的な弱さが露呈してしまいました。今シーズンは、ぜひこの経験をいかしていきたいですね。
さて、僕自身はプレーイングコーチとして2年目となるわけですが、正直、はじめは責任の重さと不安でいっぱいでした。しかし、打診を受けた当時は前期から後期にさしかかる時期で、チームの雰囲気もよく、非常に乗っていた頃。なんとかその状態を保って優勝したいという思いから、引き受けることにしたのです。僕自身の役割は“コーチ”という肩書はあるものの、やはり現役選手ですから、まずは自分がレベルアップすることが重要だと考えています。そこから教える引き出しを増やしていくことで、選手育成につなげていければと思っています。
今キャンプはというと、故障者も出ておらず、非常に充実した毎日を送ることができています。チームの雰囲気も昨年以上にいいですね。昨シーズン、プレーオフで悔しい思いをした分、「今年こそは地区、リーグ優勝したい!」という強い思いがひしひしと伝わってきます。実は、それはキャンプ前から感じていたことでした。2月の合同自主トレで久しぶりに会った選手たちに会うと、驚くほど体が鍛え上げられていたのです。オフの間、自分でしっかりとトレーニングをやってきていたのです。「今年はいける」。そのとき、そう感じた手応えは、今も日に日に大きくなっています。今シーズンはひと回りもふた回りも成長したエレファンツをファンに見せられることでしょう。今から開幕が非常に楽しみです!
<慶家誠太朗(けいや・せいたろう)プロフィール>福井ミラクルエレファンツプレーイングコーチ
1983年3月26日、福井県生まれ。小学4年から野球を始める。鯖江高、松坂大、福井ミリオンドリームを経て、2008年に福井ミラクルエレファンツに入団した。遠投116メートルの強肩と50メートル6秒の俊足を武器とする外野手。昨季よりプレーイングコーチに就任。右投右打。
◎バックナンバーはこちらから
昨シーズンは福井ミラクルエレファンツにとっては飛躍の年となりました。2008年の設立以来、4期連続で最下位に陥っていた福井でしたが、昨シーズンは前期は2位、そして後期には初優勝をすることができました。初めて臨んだ地区チャンピオンシップでも、石川ミリオンスターズに負けはしたものの、3試合全てが2点差以内と決して力負けしていなかったと思います。
チームが変貌を遂げた最大の理由は、選手の意識が変わったことにあります。北田亘(坂田南高−専修大)や西川拓喜(三島学園高−白鷗大)といった技術的にも精神的にも高いレベルの新人選手たちが入ったことで、チーム自体が非常に活性化されたのです。彼らの野球への姿勢や練習態度が若手のいいお手本となり、ベテラン勢にはいい刺激となりました。
加えて、キャプテンの織田が捕手に戻ったことも大きかったですね。後期の優勝は藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)、岩井昭仁(岐阜総合学園高−愛知学院大−ヒタチエクスプレス)、高谷博章(北海高−浅井学園大)の投手3本柱のおかげと言っても過言ではありません。優勝したとはいえ、一つ一つの試合を見ると、圧倒的な力を見せつけての勝利ではなく、接戦をモノにしたゲームが非常に多かった。僅差での勝利はまさに投手陣の踏ん張りがあったからです。そしてその裏には織田の存在がありました。彼が投手陣をうまくリードし、全幅の信頼を得ていたからこそ、投手陣は安心して投げることができましたし、バックも落ち着いて守ることができたのです。
とはいえ、昨シーズンも最初からうまくいっていたわけではありませんでした。開幕は黒星スタートとなったものの1点差での敗退。さらに2試合目から3連勝と、まずまずのスタートを切りました。ところがGW以降、故障者が相次いだこともあり、引き分けをはさんで8連敗を喫し、最下位に陥ったのです。さすがにこの時ばかりは前年の10連敗を思い出し、焦りも生じました。
この暗いトンネルからなんとか抜け出そうと8連敗後、ミーティングを開き、野田監督や織田が「気持ちを切り替えていこう!」と選手たちを鼓舞しました。それに応えてくれたのが、故障から復帰したばかりの岩井だったのです。翌日、故障明け初の先発を務めた岩井はそれまでのうっ憤を晴らすかのような見事なピッチングを披露してくれました。結果は3−0の完封勝ち。この勝利を機にチームが気持ちを新たにすることができたのです。
前述したように初めて臨んだ地区チャンピオンシップでは石川に負けてしまいました。4−6、1−0、3−4という接戦で、2球団の力の差はまさに五分だったと思います。しかし、勝負の世界ではその僅かな差こそが大きいわけです。敗因は小さなミスの積み重ねにありました。盗塁ミス、送りバントのミス……。シーズン中にはできていたことが福井はできず、逆に石川は普段通りの野球をしていた。この差だったのです。毎年、プレーオフを経験している石川とは違い、福井は初めての経験。それだけに選手には短期決戦でのプレッシャーが襲いかかっていたのでしょう。精神的な弱さが露呈してしまいました。今シーズンは、ぜひこの経験をいかしていきたいですね。
さて、僕自身はプレーイングコーチとして2年目となるわけですが、正直、はじめは責任の重さと不安でいっぱいでした。しかし、打診を受けた当時は前期から後期にさしかかる時期で、チームの雰囲気もよく、非常に乗っていた頃。なんとかその状態を保って優勝したいという思いから、引き受けることにしたのです。僕自身の役割は“コーチ”という肩書はあるものの、やはり現役選手ですから、まずは自分がレベルアップすることが重要だと考えています。そこから教える引き出しを増やしていくことで、選手育成につなげていければと思っています。
今キャンプはというと、故障者も出ておらず、非常に充実した毎日を送ることができています。チームの雰囲気も昨年以上にいいですね。昨シーズン、プレーオフで悔しい思いをした分、「今年こそは地区、リーグ優勝したい!」という強い思いがひしひしと伝わってきます。実は、それはキャンプ前から感じていたことでした。2月の合同自主トレで久しぶりに会った選手たちに会うと、驚くほど体が鍛え上げられていたのです。オフの間、自分でしっかりとトレーニングをやってきていたのです。「今年はいける」。そのとき、そう感じた手応えは、今も日に日に大きくなっています。今シーズンはひと回りもふた回りも成長したエレファンツをファンに見せられることでしょう。今から開幕が非常に楽しみです!
<慶家誠太朗(けいや・せいたろう)プロフィール>福井ミラクルエレファンツプレーイングコーチ
1983年3月26日、福井県生まれ。小学4年から野球を始める。鯖江高、松坂大、福井ミリオンドリームを経て、2008年に福井ミラクルエレファンツに入団した。遠投116メートルの強肩と50メートル6秒の俊足を武器とする外野手。昨季よりプレーイングコーチに就任。右投右打。
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