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二度と家には帰りません!~虐げられていたのに恩返ししろとかムリだから~【Web版】 作者:みりぐらむ

第三章

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プロローグ

(1/4) ←わけあって本日は四話投稿してます。

三章開始です!


※一部、書籍化の影響で見慣れない単語や一人称が変わった人物がいます。

改稿している余裕がないので、このまま進めます。ごめんなさい……。

 サージェント辺境伯家のお屋敷から、王都へ戻る日がやってきた。

 作ってもらったばかりの服を着て、いざ出発!


 同じ馬車に乗っているのは、子猫姿のエレと料理人で獣人のミカさん。

 エレはいつもと同じようにわたしの膝の上で丸まっている。

 ミカさんは尻尾を揺らしながら、ずっと窓の外の景色を眺めていた。


 そうそう! ミカさんは妖狐っていうちょっと変わった獣人なんだって!

 竜に次ぐ長命な獣人で数千年生きることもできるって……すごいよね。

 ミカさん自身はまだひよっこだって言ってた。

 それでも軽く千年近くは生きてるらしい。

 狐の姿に変化することもできるし、その姿で空を駆けることもできるけど、手が汚れるからなるべく人に近い姿で過ごしたいんだって。


 馬車の周囲には王都から一緒に来ていた騎士たちが馬に乗って、護衛してくれている。


 行きとは違って、馬車の外装がとても簡素なものになっている。

 王立研究所の研究員だってことは、知られても特に問題はないんだけど、特別研究員だってこととサージェント辺境伯家の養女だというのは隠していたほうがいいらしい。


 たしかに特別研究員と辺境伯家の養女になったっていう話が伝わったとき、宿舎の部屋にさまざまなお誘いのお手紙や使いの者たちがやってきた。

 ただ顔を見てみたいという内容のものから、婚約者にしたいというものまでいろいろあった。


 お手紙や使いの者たちという間接的なものでもどうしていいかわからなかったのに、各地で行われる歓迎会や領主様による晩餐会になんて出席したら……。


 どう考えたって、わたしだけでは対応できないし、体力的にも難しいだろうからってことで、養父様が簡素なものにしてくださった。

 といっても。簡素なのは外装だけで、中は豪華なまま、乗り心地に変わりはない。


 護衛してくれる騎士たちも、所属がわからないようにマントを外してくれている。


 とにかく、目立たずにまっすぐ王都へ向かおうとしていたんだけど、途中で豪雨に見舞われて、立ち寄る予定のない村で休むことになった。


「ここまでひどい雨ですと、馬たちの負担も大きくなります。ここでしばらく休みましょう」


 護衛の騎士たちのまとめ役である隊長さんがそういって、馬房付きの宿へと向かった。

 大部屋に全員が入り、雨でびしょぬれになった体を拭いたり、風の魔法で乾かした。


「なんだか妙な気配なのよ~」

『うむ。なにやらおかしい』


 すると、ミカさんと子猫姿のエレがそんなことを言い出した。

 どうやら、ミカさんは子猫姿のエレの言葉がわかるらしく、二人で……一人と一匹で……あれ?獣人だから、二匹で? とにかく、ミカさんとエレは向かい合ってぼそぼそと何かを話し合っている。


 護衛の騎士たちは子猫姿のエレが本当は子猫ではなく、大精霊だということを知っているのでそんな様子を見ても、驚いたりはしない。


『では、我が外を見てくるとしよう』

「じゃあ、私は中なのよ~」


 子猫姿のエレはそういうと、ミカさんに向かって大きく頷き、霧のように消えた。

 ミカさんはどこからか小さな紙を取り出して、それにまたもどこからか取り出した筆で何かを書き、紙にふっと息を吹きかけた。

 紙は蝶々になって大部屋を一周すると、廊下へと出て行った。


「えっと……?」


 わたしはその様子に首を傾げると、ミカさんが手のひらにぽんっと拳を当てた。


「今のは、ふるぅい魔法の一つで、悪い知らせを教えてくれるものなのよ~」

「もしかして、ここに悪いものがいるの?」

「いるっぽい感じがするから~、調べましょってこと!」


 ミカさんがそういうと、話を聞いていた隊長さんや護衛の騎士たちが考えるような仕草を始めた。


 わたしにはその『いるっぽい』というのがわからないので、またしても首を傾げた。

 しばらくすると、ミカさんが放った蝶々が部屋に戻ってきた。

 蝶々はミカさんの手のひらに乗ると、元の紙に戻った


「この宿にはいないのよ~。でも、外にいるみたいだからぁ、出ないほうがよさそうね!」


 ミカさんは紙を指でなぞりながら、そう答えた。

 その言葉に、隊長さんが渋い表情になった。


「予定外ではありますが、本日はこの宿に泊まることにしましょう。明日は状況を見て、出発ということで」


 隊長さんの言葉にわたしは頷いた。

 こうして、その日はこの宿に泊まることになった。


 夕方、宿の一階にある食事スペースでみんなと一緒に晩ごはんを食べていると不穏な話が聞こえてきた。


「また全身に湿疹が出来て倒れたってな。これで何人目だ?」

「十三人だ。子どもや年寄りばかり倒れていく……」


 それほど大きくもないこの村で十三人も倒れているなんて、大変なことじゃない!?

 わたしが驚きの表情を浮かべている間にも、常連さんのようなおじさんたちの会話は続いている。


「まだ、みんな息があるが、時間の問題だな」

「なんだって大雨と同時にこうもバタバタと倒れるかな……」


 まだ息があるということは、わたしが薬となる種を生み出せば、助けることができるのでは?


 そんなことを考えていると、そばにいたミカさんがニコッと微笑んだ。


「チェルシー様、お部屋に戻りましょうね!」

「え?」


 晩ごはんを食べている途中だったので、驚いていたら、周囲にいた護衛の騎士たちもうんうんと頷いている。

 もしかしたら、部屋に戻って薬になる種について話し合うのかな?

 よくわからないまま、わたしはミカさんに引きずられるようにして部屋へと戻った。

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