「よし、じゃあカラオケ行くかぁ~」 「そうだね~!」 クラスの後ろで、そんな声が聞こえる。 元気な子、お洒落好きな子、食欲旺盛な子……色んな子がいつも集まっている。 だがそこに私の姿は居ない。 「それじゃあ、皆さよなら!」 「「さようなら~」」 教室の中でこ「よし、じゃあカラオケ行くかぁ~」 「そうだね~!」 クラスの後ろで、そんな声が聞こえる。 元気な子、お洒落好きな子、食欲旺盛な子……色んな子がいつも集まっている。 だがそこに私の姿は居ない。 「それじゃあ、皆さよなら!」 「「さようなら~」」 教室の中で友達同士の声が聞こえる。 そんな中でも私は絵を書き続ける。 先生や人々はもう少し人と話せというが、私はそうしたくはなかった。 今にも足を上げたくなりそうなのを抑えて、私はペンを走らせる。 欲しいのは本当にそれではない…… 本当の「私」を隠しても意味なし。 そう思いながらも人の気配が消えていくにつれて、私の心は心細くなっていく。 (自分の絵が好きならそれで十分だろ) そう思ってても、寂しさは埋まらない。 そして誰も居なくなった教室で、私は静かに席を立つ。 何処にもいない誰かを求めて、私は帰路へ向かう。 「おい、お前」 いきなり後ろから声が聞こえた。 振り返ると、明るさが残る夕暮れに、1人の人影が見えた。 如何にもいかつそうな金髪の女子生徒だ。 「あ……貴方は……?」 「いいから絵を見せてくれ」 「え……」 私は近づいて来た彼女に言われるがまま、タブレットを渡した。 「画像フォルダ、見せてくれないか?」 「……いいですけど……」 恐る恐る私が許可を出すと、彼女はタブレットに釘付けになった。 そして画面をスライドさせる毎に、表情を大きく変えていった。 「……ほーん……上手いじゃん……」 「え……?」 「だから、上手いって言ってるんだよ。色使いも綺麗だし凄いよ」 その言葉を聞いて、私の視界は一気に明るくなったような気がした。 自分の絵を見てくれる。 付き合いじゃない自分を見てくれる。 本当の自分を見てくれる人…… それが今、私の隣に出てきたのだ。 「あ……あの、どういう用件で……??」 「あ、行ってなかったな。今年の文化祭のポスター…… 美術部が立体物手出してあいてないんだよね。 んで誰か探してたの。良かったらやる? この絵なら十分行けるわ」 そう言いながら彼女はタブレットを閉じて、こちらに差し出した。 私の絵を必要としてくれる。学校中の人が見てくれる。 先生も、親も、遊んでいる皆も、私を見てくれるかもしれない。 そう思うと、夜が明けたかの様に明るい気分になった。 受けよう。 いや、受けない理由がない! そう思いながら、タブレットを受け取ろうとした……その時。 耳の中から鳥の声が鳴り響いた。 「おーい、もう朝ご飯よ~」 次に私が気が付いた時には聞きなれた声が耳から入った。 暖かな温もりの中で、私は冷や水を浴びたような気分になった。 (夢……か) 私はがっかりしながら、布団の中から体を起こした。 そのまま朝食を食べに行こうとしたが、ふと目の前に液タブが目に入った。 そういえば家でも遅くまで描いていたっけ… そう思うと、私は急に夢の中でいた彼女が恋しくなった。 (……自分から動く必要もあるか……) 待ってるだけではおいしいものは来ない。 そう思いながら、私は改めて朝食へ向かった。 朝日が燦燦と輝く、初夏の朝の事だった。
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紫雀
天柱太陽
2020年9月17日 10時07分
爪毛
天柱太陽
2020年9月17日 10時07分
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