「嘘だろ……」 HPに並ぶ番号に、俺は愕然とした。 あると思っていた。45の文字。 並んでいたのは43と47…… 「……ッ!!!」 言葉にならない感情と共に、俺は番号が描かれた紙を、破り捨てた。 そんな俺の耳に、あの時知らなかった駅名が響く 「……夢か……」 ロングシートの端っこでうたた寝をしていた俺は、現実に引き戻された。 ドアの方を見ると、列車は目的の駅へと滑り込む最中だった。 「全く、久しぶりに友人と会うのにねぇ……」 俺は悪態をつきながら、ホームを降りた。 あの春は、地獄だった。 やれる事は全てやった。 その筈だったのに……友人とは違い、俺は第一志望に落ちた。 周囲の人達はよくやったというし、第二志望に受かったから…… と思っていたが、どうにもその心の傷はいえなかった。 だからだろうか、研究に熱心になったのは。 「栄養剤買うか……」 俺はいつものように、駅中のコンビニでそれを買った。 時間を無駄にしたくない、出来るだけ成果を出したい。 そう思って身を削り始めたのもその頃だった。 それ故か、その後の目標はちゃんと取る事も出来た。 健康状態を犠牲にして。 昔とは違う、やせ細った俺を見てアイツはどう思うのだろうか。 自分を大事にしろというのか、それとも。 店に向かう途中、俺はビルが立ち並ぶ夜景を見つつ、 静かに飲み干したカンを捨てた。 ※※※ 合格祝いに貰ったゲームを久しぶりにバスの中で見た。 もう旧式になるだろうに、まだやってる人がいるとは。 不思議に思うと同時に、プレイする子供の弾ける笑顔を見ると プレゼント袋を破ったあの頃が懐かしくなる。 「お待たせしました、次は終点~」 そんな事を思っていると、目的地の駅前に付いた。 僕はゆっくりと荷物をしまい、降りる準備をした。 子供もしまうが、その顔は満足そうに見える。 どうかその笑顔が続きますように。 (アイツ、あの後元気にやってるみたいだな……) ふとスマホを開き、SNSのアカウントを見ながら静かに思った。 周囲は沢山お祝いしてくれたし、進学先の先生も歓迎してくれた。 だがそれは上辺だけだった 合格するまでと合格した後では、僕の世界は地獄の様だった。 引っ越した先に友人はおらず、常に1人で息苦しかった。 その内進学校にあるまじき虐め問題を見て嫌気を指し、僕は学校を止めた。 周囲が悲観する中、高認を受けて何とが大学に行けたが…… 出世街道とは程遠い。 アイツも同じ様に僕を勿体ないと思うのだろうか。 ストレスで大分太った僕を見て。 自虐的に思いながらも、僕はバス停から降りて行った。 アイツが羨ましかった。 アイツがとても羨ましい。 だけど でも それ以上に、 アイツとの勉強時間が楽しかった。 アイツの将来がより良い物になると祈った。 だからこそ また会いたい。 だからこそ 幸せを願う。 今夜、夢の先で、親友と再会する。
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黒井森之亮
天柱太陽
2020年9月10日 7時20分
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