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ずん飯尾・阿佐ヶ谷姉妹「ゆるふわ中年芸人」大人気の今の時代ならではの深い理由

連載「道理で笑える ラリー遠田」

ラリー遠田dot.#ラリー遠田
阿佐ヶ谷姉妹とずん飯尾和樹(C)朝日新聞社

阿佐ヶ谷姉妹とずん飯尾和樹(C)朝日新聞社

 さらに、出口の見えないコロナ禍によって、人々が癒やしを求める風潮はますます強くなっている。他人をいじったり傷つけたりすることがなく、言葉遣いや発言にも品があり、見ているだけで心が温かくなるようなゆるふわ中年芸人は、今の時代にこそ必要とされている存在なのだ。

 また、飯尾と阿佐ヶ谷姉妹に共通するのは、一般人には手の届かないスターというイメージが全くなく、庶民的な暮らしをしているのを公言していることだ。阿佐ヶ谷姉妹の2人は、いまだに阿佐ヶ谷の庶民的なアパートの隣同士の部屋で暮らしており、近所で買い物をして料理をするような生活をしている。

 コロナ禍で外出自粛やリモートワークが余儀なくされるようになり、多くの人は家にいる時間が増えた。そのことによって、当たり前の日常の価値に改めて気付いた人もいるのではないか。

 平凡な日常を心から楽しんでいる彼女たちの姿を見ていると、私たちが当たり前のように過ごしている日々の中にも、ささやかな幸せや喜びが隠れているということが実感できる。

 かつての日本で「おじさん」や「おばさん」に悪いイメージがあったのは、若者の人口が多く彼らに存在感があったからだ。超高齢社会を迎えている現代では、いまや国民の大半がおじさんやおばさんと呼ばれる存在になっている。

 その与えられた属性を無理に否定するよりも、おじさんやおばさんとしてどう前向きに生きるべきかが問われる時代になった。飯尾や阿佐ヶ谷姉妹はその模範解答の1つである。

 ゆるふわ中年芸人は、超高齢社会に不安を抱え、コロナ禍に疲弊した日本人の心を癒やす一服の清涼剤なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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