「おバカ」だから、という免罪符

「おバカ男子」問題で気になることのふたつめは、ほんとうにそれが「男子あるある」かもしれないとしても、そこで「おバカ」と笑い飛ばされる行動に、他者への暴力的なふるまいの萌芽があった場合でも「男子にはよくあること」として済ませてしまっていないか、ということです。

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ほんとうは正面から向きあって厳しく叱るべき行動なのに、そして、女の子かが同じことをしたら決して看過されないのに、「男の子はそんなもんだよ」「男子はどうせ言っても聞かないよ」「やんちゃだねー」と許容してしまっていることが、けっこうあるのではないか。そして、それは男の子の育ち方において、もしかすると大きな問題を含んでいるのではないか、と感じます。

私自身、何度言っても同じことをくりかえす息子たちを前に、「もういいか、注意しなくても......」とあきらめたい誘惑には常にかられています。そういうときに「男の子はそんなもんだよ」という言葉は、もうあきらめて放り出したいという気持ちを正当化してくれます。

日々の子育ての中で、正しさばかりを追求できないのは仕方ないことですし、実際、ほんと うに些末(さまつ)なことはほうっておいてもいいのでしょう。ただ、「男子あるある」で流しがちなことの中に、ほんとうは受け流してはいけないものが混じっていないかと、立ち止まって考えるべき場面もあるのではと思います。

なぜかというと、そうやって「男の子は仕方ないよねー」で流してしまったことの積み重ねが、大人になってからの男性たちが他人や自分自身の痛みに気づけない鈍感さ、まさに「有害な男らしさ」の遠因になっているかもしれないからです。

これからの男の子たちへ:「男らしさ」から自由になるためのレッスン/大月書店
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