埼玉・行田も子豚盗難 130頭、3県合わせ820超
2020年09月12日
埼玉県行田市の養豚場から子豚約130頭(時価325万円相当)が盗まれていることに経営者らが気付き、10日、県警行田署に被害を届け出た。現場は豚の盗難が相次いで発生した群馬県と隣接しており、同一犯の可能性もある。一連の被害は3県で823頭に上り、生産者やJAは自治体や警察と協力して、家畜や農産物の盗難を防ぐパトロールに乗り出すなど警戒を強めている。
10日午後2時50分ごろ、農場の経営者から「子豚が盗まれた」と同署に通報があった。
農場では豚の総数を定期的に数えていて、9日に数えた頭数と前回数えた7月下旬の総数と著しく差があることに気付き通報したという。同署は、この間に盗まれたとみて、農場周辺の警戒を強め、窃盗事件として捜査している。埼玉県内では5月に本庄市で子豚2頭が盗まれている。
豚が逃げないようコンクリート塀で囲われていた農場は、親豚と子豚を飼養。子豚だけで約2500頭を飼育しているという。
県畜産安全課は、近隣県でも家畜の盗難被害が相次いでいることを受け、8月28日に県内約100戸の養豚農家に注意喚起の文書を出した。畜舎の出入り口や窓を施錠し、防犯カメラを設けることや、家畜の数を小まめに確認することなどを呼び掛けていた。8月31日には、県警にパトロール強化を求めていたところだった。
同市での子豚の盗難事件を受け、県は11日、改めて県家畜保健衛生所などを通じて県内約100戸の養豚農家に盗難と豚熱被害防止を呼び掛ける文書を郵送した。
肥育前の子豚は生きたまま大量に、出荷前の肉豚は少数をその場で処分して盗む──。
群馬県を中心とした豚窃盗事件で判明した手口だ。被害豚舎の近くの山林では豚のものとみられる内臓が入ったごみ袋も見つかっており、警察が事件との関連を調べている。
同県東部にある豚舎から子豚や育った肉豚計50頭余りが盗まれたのは、8月10日夕から11日朝の間だった。出勤してきた従業員が豚舎の異変に気付いたという。
肥育した豚を集めた豚舎の入り口で、経営者が「ここに大量の血を水で洗い流した跡があった」と地面を指さし、「3頭の動脈を切り、血を抜いて持ち去ったのだろう」と怒りを押し殺した。
生後50日前後の子豚舎には、血痕はない代わりに、犯人のものとみられる足跡が複数あったという。舎内は通路の両側に鉄格子で囲われた複数のスペースを設けており「子豚の足跡がなかったから、犯人は1頭ずつ抱えて持ち出し、50頭を運び去ったのではないか」とみる。
近接する地域でも被害が確認され、現場近くの山林に捨ててあったごみ袋から豚の内臓とみられる肉塊が見つかったという。被害農家は「その場で解体したのだろう。犯人が捕まらなければ夜も眠れない」と言い、事件の早期解決を願った。
一連の家畜盗難は8月を中心に茨城、栃木、群馬、埼玉の4県で18件発生。このうち豚は栃木を除く3県で820頭以上が盗まれた。被害豚舎のほとんどは周囲に人家がなく、夜間は無人だった。
10日午後2時50分ごろ、農場の経営者から「子豚が盗まれた」と同署に通報があった。
農場では豚の総数を定期的に数えていて、9日に数えた頭数と前回数えた7月下旬の総数と著しく差があることに気付き通報したという。同署は、この間に盗まれたとみて、農場周辺の警戒を強め、窃盗事件として捜査している。埼玉県内では5月に本庄市で子豚2頭が盗まれている。
豚が逃げないようコンクリート塀で囲われていた農場は、親豚と子豚を飼養。子豚だけで約2500頭を飼育しているという。
県畜産安全課は、近隣県でも家畜の盗難被害が相次いでいることを受け、8月28日に県内約100戸の養豚農家に注意喚起の文書を出した。畜舎の出入り口や窓を施錠し、防犯カメラを設けることや、家畜の数を小まめに確認することなどを呼び掛けていた。8月31日には、県警にパトロール強化を求めていたところだった。
同市での子豚の盗難事件を受け、県は11日、改めて県家畜保健衛生所などを通じて県内約100戸の養豚農家に盗難と豚熱被害防止を呼び掛ける文書を郵送した。
群馬 山林に内臓捨てる?
肥育前の子豚は生きたまま大量に、出荷前の肉豚は少数をその場で処分して盗む──。
群馬県を中心とした豚窃盗事件で判明した手口だ。被害豚舎の近くの山林では豚のものとみられる内臓が入ったごみ袋も見つかっており、警察が事件との関連を調べている。
同県東部にある豚舎から子豚や育った肉豚計50頭余りが盗まれたのは、8月10日夕から11日朝の間だった。出勤してきた従業員が豚舎の異変に気付いたという。
肥育した豚を集めた豚舎の入り口で、経営者が「ここに大量の血を水で洗い流した跡があった」と地面を指さし、「3頭の動脈を切り、血を抜いて持ち去ったのだろう」と怒りを押し殺した。
生後50日前後の子豚舎には、血痕はない代わりに、犯人のものとみられる足跡が複数あったという。舎内は通路の両側に鉄格子で囲われた複数のスペースを設けており「子豚の足跡がなかったから、犯人は1頭ずつ抱えて持ち出し、50頭を運び去ったのではないか」とみる。
近接する地域でも被害が確認され、現場近くの山林に捨ててあったごみ袋から豚の内臓とみられる肉塊が見つかったという。被害農家は「その場で解体したのだろう。犯人が捕まらなければ夜も眠れない」と言い、事件の早期解決を願った。
一連の家畜盗難は8月を中心に茨城、栃木、群馬、埼玉の4県で18件発生。このうち豚は栃木を除く3県で820頭以上が盗まれた。被害豚舎のほとんどは周囲に人家がなく、夜間は無人だった。
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[米需要の危機](上) コロナ 外食直撃 需要“蒸発” 想定の倍
東京・神田、上野に、すし店6店舗を展開する「神田江戸ッ子寿司(ずし)」は、本格的な江戸前ずしを手頃な価格で提供する人気店として知られる。しかし新型コロナウイルス禍により、以前は昼時に満席だった店内には、空席が目立つ。
感染対策で、客席を間引いたことだけが理由ではない。オフィス街の客が減り、会食用の出前も大幅に減った。すし人気を支えていた訪日外国人客もゼロで、今も全体の客足は8割ほどにしか戻っていない。2店舗は休業中だ。
「すしの命はシャリ。おなかいっぱい食べてもらおうと無料で大きくしている」と中店の松原智司店長。だが、客数・出前の減少に伴う米の使用量減少は避けられなかった。4~9月の全店舗の米飯仕入れ量は19トンと前年同期の半分以下だ。9月単月でも4割減と低迷している。松原さんは「冬にまた感染が拡大しないか気掛かりだ」と、集客対策を模索している。
内食堅調でも
米の需要減少は、コロナ禍で加速している。農水省によると、2020年6月までの1年間の需要量は前年同期比22万トン減った。人口減などでこれまで想定されていた毎年の減少量10万トンの2倍超で、この先も歯止めがかかる兆しは見えない。
内食需要こそ堅調だが、飲食店やコンビニ向けなど業務用の落ち込みが大きい。家庭用と業務用を合わせた主要卸の販売量は4月以降前年割れが続き、大手米卸は「麺類などに需要を奪われ、家庭用が全体を補い切れていない」と分析する。
米の需給は緩和局面に突入した。20年産は主産地の豊作基調や、作付けが適正量を超えたこともあるが、追い打ちとなったのは想定外の規模での需要減少だ。そのため、来年6月末の民間在庫量は221万~227万トンとなり、米価低迷が問題となった14年産の水準にまで膨らむ見通し。
6年ぶり下落
過剰感を反映するように、20年産米の価格は下がった。産地と卸との相対取引価格は6年ぶりに下落し、9月の相対取引価格の全銘柄平均価格は1万5143円と、前年同月から676円安い。
業務用米への仕向けが多い関東産は、1000円以上、下げる銘柄が目立つ。業務用米の生産も多い茨城県内のJA担当者は「14年産当時のように再生産が難しい水準にまで価格の下落が進まないか心配だ」と明かす。
大幅下落を食い止めるため、JAグループは20年産のうち20万トンを長期計画販売とし、過剰感の払拭(ふっしょく)を目指す。しかしその米は来秋以降に主食用米市場に戻るため、大手米卸は「抜本的な対策とはみていない」と冷静で、「21年産の生産を適正量まで減らせるかだ」と強調する。
◇
米需給が緩和し、価格下落を食い止められるか、正念場を迎えた。コロナ禍での需要減、作付けの過剰傾向──。生産・消費の現場で何が起きているのかを探った。
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2020年10月21日
日本の再建は生命共済から
「日本の再建は生命共済から 農村復興は農協互助組織による長期資金の獲得に始まる」。賀川豊彦の揮毫(きごう)が戦後、よちよち歩きの農協共済の発展に大きな威力を発揮した▼本紙連載中の「協同の系譜 賀川豊彦」(筆者・和田武広氏)にある。ものの価値を知るには〈源流〉に学ぶにしくはない。協同組合は「与えられたもの」ではないことが彼の生涯からよく分かる。「およそ運動と名のつくものの大部分は、賀川豊彦に源を発している」。大宅壮一にそう言わしめた賀川のスタートは、神戸・スラム街での救援活動だった▼ここから労働争議、農民組合、生協、医療、関東大震災のボランティアと運動円を広げていく。ベストセラー作家でもあった。印税収入を惜しみなく運動に投じた。1922年のアインシュタイン来日は『死線を越えて』が大ヒットした改造社の招きで実現した▼協同組合(産業組合)は昭和初期、既得権益を持つ商工業者と大衝突した。「産業組合への関与・保護は過当だ。税制の特権を廃止すべきだ」。その理屈は近年も聞いた記憶がある。〈反産〉の脈流は今日もなお続いている▼賀川が暮らした東京・松沢村の家は資料館となり、新宿からほど近くにある。JA関係者の訪問が少ないという。寂しい限りではないか。
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2020年10月24日
無人トラクター 未来へ快走 富山で農道走行実演
遠隔操作する無人のロボットトラクターが農道を走行し、作業を終えた農地から次の農地に移動する。人の姿をしたマネキンが道を横切ると、トラクターは停止し、道を譲った──。富山市の農業生産法人の農地で22日、こんな未来的な光景が繰り広げられた。
次世代トラクターは、農研機構が代表を務めるコンソーシアム(共同事業体)が開発し、実演会で紹介された。ロボットトラクターが無人で農道を走行するのは珍しく、特に有人で事前にテスト走行せず自動走行するのは全国初だ。
これまでロボットトラクターは、農地の中で自動運転・作業ができても農地間の移動は人の運転が必要だった。政府は2016年に、農地間の移動を含む遠隔監視の無人自動走行システムを20年までに実現する目標を掲げ、開発を進めてきた。
農研機構・NARO開発戦略センターの原田久富美センター長は「生産者は現場には行かずに作業計画を実行でき、労働生産性が大きく向上する」と意義を語る。
ドローン(小型無人飛行機)で事前に農地を計測し、データを基にトラクターが農地の場所や出入り口を認識して走行する。操作は400メートル以上離れた法人の事務所から行った。トラクターに搭載したカメラなどで遠隔監視できる。機体には障害物センサーがあり、人などを検知すると自動で止まる仕組みだ。
21年度は現地で運用試験を行い、22年度までに社会実装できる機体の開発を目指す。実演会は野上浩太郎農相も視察し、「日本の農業に大きな可能性をもたらす重要な取り組みだ」と話した。
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2020年10月23日
オレンジ色のサツマイモ 2品種開発 チップ用「あかねみのり」 干し芋用「ほしあかね」 農研機構
農研機構は、芋の内部の色がオレンジの加工用サツマイモ「あかねみのり」と「ほしあかね」の2品種を開発した。既存品種より収量性が高く、「あかねみのり」はスライスして揚げるサツマイモチップ、「ほしあかね」は干し芋に向く。2021年春から種苗メーカーが苗を販売する予定だ。
「あかねみのり」は、「べにはるか」と「作系22」を交配して選抜した。芋の形状がそろい、表面の凹凸が少ないため加工しやすい。育成地の茨城県つくばみらい市での収量は10アール換算で3・9トン。芋の内部がオレンジの加工用品種「ヒタチレッド」の1・4倍だった。サツマイモネコブセンチュウとつる割病に抵抗性がある。北海道や鹿児島県での栽培が見込まれている。
「ほしあかね」(左)と「べにはるか」の干し芋(同)
干し芋に向く「ほしあかね」は、「関東136号」と「ほしキラリ」を交配して育成した。芋の裂開や形の乱れがなく、加工しやすい。干し芋の一部が白っぽく不透明になる品質障害の、シロタの発生が少ない。「ヒタチレッド」や「べにはるか」より1割以上収量が多かったという。育成地の収量は10アール換算で3トンほどだった。茨城県などでの栽培を見込む。
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2020年10月22日
[新型コロナ] 業務用ブロッコリー国産拡大へ コロナ禍逆手に「スマート」導入 静岡市の農業生産法人
静岡市の農業生産法人、鈴生は新型コロナウイルスの影響で外国人技能実習生が来日できないことを機にスマート農業を導入し、業務用ブロッコリーの面積拡大に乗り出した。手作業が中心だったブロッコリー栽培を機械化し、面積を3ヘクタールから10ヘクタールに拡大。輸入が大半を占める業務用ブロッコリーで、国産のシェア拡大を目指す。(岩瀬繁信)
同社は県内各地で露地野菜を延べ160ヘクタール栽培する。業務用ブロッコリーは菊川市で、2019年に3ヘクタールから始めた。市内の栽培面積はレタス、エダマメと合わせて約27ヘクタール。社員5人と外国人実習生3人、パート従業員5人で栽培していた。
同社常務の鈴木靖久さん(38)は「業務用ブロッコリーは輸入と冷凍がほとんど。国内で需要の取り合いをせず生産を増やせる」と力を入れる。
ところが20年になり、新型コロナで突然の人手不足に襲われた。外国人実習生3人が帰国し、代わりに3人来日する予定が、3月の時点で来られないことが判明。パート従業員も学校の休校措置で勤務時間が減った。3月から始まるエダマメの種まきが遅れ、市場価格が高い6月前半の出荷を逃してしまった。
ブロッコリーの作付けも危ぶまれたが、4月に農水省がコロナ禍の人手不足対策としてスマート農業を導入試験する事業を開始。同社はブロッコリーの苗の移植機と収穫機による機械化一貫体系に活路を見いだした。苗を8~10月に定植し、11~3月に収穫する。
収穫機は、引き抜きから上葉と茎の切り落としまで自動化する先端機種だ。手作業では8、9人必要だった人手が3人に減ると見込む。一方、手作業では大きくなった花蕾(からい)だけを選び1枚の畑の収穫を数回に分けるが、機械は一斉収穫しかできない。10アール当たりの収量は手作業の800キロに比べ、機械は600キロほどに減る計算だ。
サイズのばらつきは業務用のため、ある程度認められる。収量の減少は面積の拡大でカバー。移植機で定植も効率化し、10ヘクタールの栽培を計画する。全体の収穫量は24トンから60トンに増えるとする。
実際に移植機を使い始めた従業員の長田利宏さん(42)は「株間や深さの微調整ができ、精度が高い。操作がシンプルでパートさんでも運転できる」と評価。10アール当たりの作業は、運転者と補助者の2人で1時間前後。苗の運搬も含めた延べ時間は手作業と比べ3割以下に減った。ただし雨天時など土の状態が悪いと精度が落ち、補植に2人必要で時間もかかる。
同社では来日できずにいた外国人実習生も11月からの配属が決まった。来シーズン以降は、スマート農機と実習生の力を合わせ、一層の面積拡大を目指す。
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2020年10月22日
農政の新着記事
荒廃農地対策を拡充 地域の計画策定補助 農水省21年度
農水省は2021年度、荒廃農地対策の拡充に乗り出す。農地の有効利用に向けた農家や住民の地域ぐるみの話し合いや、農地の簡易な整備などにかかる経費を助成。ミツバチの蜜源作物の栽培や放牧など農地を低コストで維持する取り組みも後押しする。新たな食料・農業・農村基本計画にも盛り込んだ多様な農地利用を進め、生産基盤の維持・強化を目指す。
21年度予算の概算要求で、農山漁村振興交付金のうち、最適土地利用対策として新規で5億円を要求する。同省によると、……
2020年10月25日
農水・環境省が連携強化 地域振興、環境負荷減へ
野上浩太郎農相と小泉進次郎環境相は23日、地域の活性化や農林水産業の環境負荷の軽減などに向け、農水省と環境省の連携強化に合意したと発表した。新型コロナウイルス収束後の社会を見据え、食や再生可能エネルギーの地産地消、農地の多面的機能の発揮、鳥獣被害の軽減、食品ロス削減といった多分野で緊密に連携。両省の施策の相乗効果を目指す。
食と再生エネ地産地消・ 農地の多面機能発揮・ 鳥獣被害の軽減
両閣僚が東京・霞が関の農水省で共同記者会見を開き、合意文書を発表した。中央省庁のこうした連携の合意は珍しい。菅義偉首相が重視する省庁の「縦割り打破」の一環で、小泉氏から持ち掛けた。
共同会見で、野上氏は「合意でさらにスピード感を持って進められる」。小泉氏は「農水省と環境行政は非常に親和性が高く、密接な関係だ」と述べた。
連携の柱の一つが、地球温暖化の防止に向けた「脱炭素社会への移行」。農林水産業の二酸化炭素排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指し、農山漁村での再生可能エネルギーの導入や、バイオマス(生物由来資源)エネルギーの利用促進などで協力する。会見で小泉氏は「農協を含め、地域で農業を支えているプレイヤーは、再生可能エネルギーのメインプレイヤーとなれる」と期待した。両省の庁舎の木造化や使用電力の再生可能エネルギー化でも協力する。
都市一極集中から地方への「分散型社会」の実現には、休暇先で働く「ワーケーション」を農山漁村で推進。森林の整備・保全などを通じた防災・減災や、農地の多面的機能の発揮に向けても取り組む。野生鳥獣の適正な個体数管理や鳥獣被害の軽減、そのための人材育成でも連携する。
循環型の経済への移行も目指す。生産から廃棄まで一連の食品ロスの削減、プラスチック資源の再利用を推進。持続可能な生産と消費拡大に向けた農水省のプロジェクト「あふの環(わ)2030」を、消費者庁の協力も得て進める。
農水省は、農林水産業の生産力向上と環境負荷軽減を技術革新で両立する「みどりの食料システム戦略」の検討、環境省は持続可能な地域づくりを目指す「地域循環共生圏」に取り組んでいる。連携でこれらの実現も加速化させる。
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2020年10月24日
日英、EPA署名 年明け発効めざす
日本と英国の両政府は23日、経済連携協定(EPA)に署名した。農産物の関税削減・撤廃は、日本と欧州連合(EU)のEPAの内容を踏襲するが、英国には輸入枠を新設しない。両政府は、両国の国会での承認を経て、2021年1月1日の発効を目指している。
英国のトラス国際貿易相が来日し、茂木敏充外相と東京都内で署名式を開いた。共同記者発表で、茂木外相は「この協定を日英関係をさらに強化、発展するための基盤にしたい」と強調。トラス氏は、英国が求める環太平洋連携協定(TPP)加盟に向け「道が開かれる」と述べた。
農産物の関税は、協定発効と同時に日英双方が日欧EPAと同じ税率を適用する。日欧EPAで輸入枠を設けた25品目については、英国には輸入枠を新設しない。ブルーチーズを含むソフト系チーズ、ココアや小麦粉の調整品など10品目は、日欧EPAの輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する。
牛肉や豚肉など、日欧EPAでセーフガード(緊急輸入制限措置)を設定した品目は、英国とEUから輸入量の合計が日欧EPAの発動基準数量を超えた場合、英国に発動する。日欧EPAと同様に、米は関税削減・撤廃の対象から除外した。
両氏は署名式前に会談し、来年1月1日に協定を発効できるよう協力することで一致した。日本政府は26日召集の臨時国会に承認案を提出する。
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2020年10月24日
茨城・栃木「治水事業」 農地移転も選択肢 来季作付け白紙か
昨年10月の台風19号で大水害を起こした栃木県と茨城県を流れる那珂川と久慈川流域で、国土交通省、両県、沿川16市町が「緊急治水対策プロジェクト」を進めている。1月に始まり、堤防整備や河川の掘削などを行い、5年後の完了を目指す。氾濫に悩まされてきた地域だけに期待がかかる一方、農地や住居の移転を伴う事業も選択肢として示され、地権者からは不安の声が上がる。コロナ禍で住民説明会が遅れており、事業の進展に影響が出る可能性もある。(木村泰之、中村元則)
「堤防で治水」は限界 行政説明に複雑
台風19号では那珂川水系と久慈川水系の本支流計16カ所で堤防が決壊。越水・溢水(いっすい)も16カ所で発生した。こうした災害を防ぐため、同プロジェクトは両河川合わせ1015億円を投じる。2024年度まで、河川掘削などをして通水能力を高める他、堤防を整備し、川の水を逃がす「霞堤(かすみてい)」を栃木県那須烏山市、茨城県常陸大宮市、那珂市に、130ヘクタールの遊水地を常陸大宮市、城里町に設ける。増水時の下流の流量を減らすのが狙いだ。
現在は河川掘削や堤防内の樹木伐採が水戸市で進む。国や県、市町による住民説明会は7月下旬に茨城県ひたちなか市、8月上旬に水戸市で行ったが、他の地域では新型コロナウイルス禍で多人数の説明会開催が難しく、遅れていた。
住民の関心が高いとみられるのが、那珂川沿川の栃木県那須烏山市、茂木町、茨城県水戸市、大洗町の一部を対象に選択肢として検討される「防災集団移転事業」だ。川が蛇行し、川幅が狭くなる、複数の川が合流する──などリスクの高い場所で、被災の恐れのある住居を高台に集団で移す。暮らしや営農に関わるだけに、心配する声も少なくない。
茂木町では住宅など42棟、公共施設など45棟の浸水被害が出た。肉用牛の繁殖・肥育をする瀬尾亮さん(65)は、台風で那珂川沿いの牧草地が浸水。牛23頭が流された。17頭が生還したが、6頭の行方は分からないまま。牧草地も10月に復旧したばかりだ。
堤防整備などの防災事業には「大感謝」と賛成するが、移転事業は「うわさで聞くが、誰がどう進めているか分からず、農地や住居が心配だ」と不安を募らせる。
移転事業は東日本大震災の津波で被災した東北などで実績はあるが、国交省常陸河川国道事務所の堀内輝亮副所長は「川の氾濫や堤防の決壊では珍しい」と説明する。
那須烏山市下境地区では住宅49戸、事業所など6棟が那珂川の浸水被害を受けた。農地は9月までにほぼ復旧したが、水稲の代替作物とされたエン麦の作付けは一部にとどまり、雑草が生える所が多い。同地区では22日に国と市による説明会が開かれ、霞堤の新設と、集団移転についての説明があった。終了後に同事務所は、住民の了承を得たとして、霞堤の設計に必要な測量に入る考えを示した。集団移転は市が霞堤の整備状況に合わせ住民の意向を踏まえて、方針を示す構えだ。
説明会に参加した農家は複雑な心境だ。地区内に水田40アールを持つ男性(73)は「霞堤を造ると聞いて、米作りを諦める人は多いのではないか」と話した。水田80アールを持つ別の男性(66)も「集団移転の話が出て、自分の農地がどうなるか分からない。来春からの米作りは白紙だ」と顔をしかめる。
同事務所の堀内副所長は、強力な台風が頻発する状況では堤防だけの治水は限界があるという。「台風19号と同様の水害があった時、住民の命が守れない。住民の納得を最優先に安全な住環境を提案しつつ、工事を進めたい」と話す。
<メモ>
近年の洪水で甚大な被害を受けた河川では、国、都道府県、市区町村が連携して、再度の災害を防ぐため「緊急治水対策プロジェクト」に取り組んでいる。
流域全体でハード・ソフト一体となった対策をしており、2019年の台風19号では7水系で実施。
5~10年かけ、決壊箇所の「災害復旧」や河道掘削などの「改良復旧」に、7水系合わせて5424億円(災害復旧1509億円、改良復旧3915億円)を充てる。
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2020年10月24日
[米需給の危機](下) 56万トン減の衝撃 産地努力だけでは…
全国で56万トン減──。16日、農水省が示した2021年産主食用米の適正生産量の減少幅に、福島県水田畑作課の担当者は「ショッキングな数字だ」と戸惑いを隠せない。減少率は1割近くで、それに基づき県の生産目安を設定する場合、面積換算で4000ヘクタール強の減産が求められる。
呼び掛け急ぐ
「実際そこまで減らせるのか」。主食用米を大規模に切り替えるには地域・生産者の話し合いの期間が必要となる。早期の計画策定を呼び掛けるため、県は目安の提示を例年より1カ月前倒しする判断をした。
20年産で県は、新型コロナウイルス対策の地方創生臨時交付金を使って飼料用米の複数年契約に10アール当たり5000円の独自助成を打ち出し、飼料用米を前年より310ヘクタール積み増した。備蓄米も拡大させ、主食用米の作付面積の減少幅は、北海道に次ぐ1200ヘクタール。生産目安に近い水準まで抑えられた。だが21年産はこれ以上の対応が求められる。
需給緩和の危機感は市町村に広がり始めた。会津「コシヒカリ」の産地の喜多方市は、主食用と飼料用などの米の収入試算を示し、非主食用米への転換を呼び掛けるちらしを作成。11月に生産者に配布する準備を急ぐ。
課題は農家の手取りだ。国や県などの助成金を最大限活用し、多収品種で大幅な増収を実現すれば、飼料用米の収入は主食用並みになる。だが「コシヒカリ」で切り替えると、10アール2万円程度減収する見込み。市農業振興課は「国の支援策が示されないと転換を呼び掛けづらい」とこぼす。
壁は不公平感
JA主導でこの局面を乗り切ろうとする動きもある。富山県のJAみな穂は、非主食用米の共同計算方式を、目安に沿った作付けの要にする。水田面積が約5000ヘクタールの管内を「1圃場(ほじょう)」と捉え、備蓄米や米粉用米、輸出用米の用途別の生産量をJAが事前に調整して生産者に配分。交付金を踏まえ、いずれを作付けしても手取りが同じ水準になるよう調整する。「転作が進まない理由は不公平感だ。それがなくなれば、需要に基づいて生産できる」(営農部)と考える。
麦・大豆の作付けは「地域営農とも補償事業」を活用し、水田の円滑な受委託を進めたブロックローテーションで、機械化体系を整える大規模生産者に集約する。生産者からの評価を積み上げ、JAの米集荷率は90%を超える。管内の20年産主食用米の作付けは生産目安以内になった。
21年産の転作で増加を見込むのが輸出用米だ。販売先の大手米卸・神明から取引ニーズがあると言われ、取り組みを拡大する。ただ「輸出用米などの非主食用米は主食用米より収入が減る課題がある」(同)という。
米需給の均衡は産地の大幅な作付け抑制が不可欠だが、かつてない10万ヘクタールの規模で主食用米から転換するには、現状、国からの支援は乏しい。稲作経営や地域農業を維持するため、支援の充実を求める声が高まっている。(玉井理美、音道洋範が担当しました)
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2020年10月23日
[米需要の危機](中) 減らない作付け 潜在的な課題 表面化
米主力地帯の秋田県は、2020年産の主食用米の作付面積(7万5300ヘクタール)が、県農業再生協議会の設ける生産目安を5000ヘクタール近く上回った。県の担当者は「主食用米は事前契約の割合が9割と高く、需要に応じた生産を進めた結果だ」と説明する。
需要ありきで
18年産から国が生産数量目標の配分を廃止し、産地主体の需要に応じた生産へと政策が転換した。全体需給の均衡を優先していた現場は「売れる分だけ作ってよい」との受け止めも一部見られ、揺らぎが生じた。作付けの調整は難しくなり、県内の飼料用米や加工用米、備蓄米などの転作は縮小した。
政策が変わる前の17年産まで、目標以上に削減する深掘りに取り組んでいた。県は野菜を大規模に生産する園芸メガ団地を造り“米偏重”からの脱却も掲げたが、結果だけを見れば、20年産の主食用米は増えた。
同県男鹿市で主食用米を中心に水稲10ヘクタールを栽培する小野一義さん(71)は「売り上げと労働力のバランスを考えると主食用米を作る判断になる」と話す。小野さんが暮らす約80戸の集落で40代以下の農家はいない。高齢化が進む中で、少ない労働力でも安定して生産できる稲作に頼っている。一方、飼料用米や加工用米は助成金を考慮しても主食用米より手取りが減ることを敬遠し、積極的ではないという。
新型コロナウイルス禍に伴う全国的な米の需要減少から、順調に進んでいると思われた県産米の販売環境に、逆風が吹いたとも感じている。小野さんは「地域の米作りを改めて考える時なのか」と自らに問い掛ける。
人気銘柄ゆえ
米の生産量が国内最大の新潟県は、新型コロナ禍で需給緩和への懸念が高まった7月、県とJAグループが生産者に、「田んぼ一枚転換運動」を呼び掛けた。しかし、20年産で備蓄用や米粉用、輸出用などへの転換面積は約900ヘクタールと、目標には届かなかった。9月時点の主食用生産量は60万トンに迫る。県の目安を6、7万トン上回る見込みだ。
全国トップ銘柄の県産「コシヒカリ」は販売価格が高く、非主食用米への切り替えが難しい。「全国区の銘柄産地は作れば売れるとの思い込みが少なからずある」(大手米卸幹部)との見方もある。
県は21年産の生産目標を例年より前倒して示し、地域で作付けの検討を促す方針だ。今年度の9月補正予算で、非主食用米への転換に10アール当たり5000円の支援策を打ち出した。「稲作県では米価下落は所得に直接響く」と警戒する。
生産目安を上回るのは東北や関東などの多くの県が該当する。目安に沿った生産が、うまく機能しているとは言い難い。これまでも需給緩和が叫ばれていたが、作柄低迷で回避されてきた。それが「コロナ禍や主産県の豊作傾向が重なり潜在的にあった課題が表面化した」(東北の産地関係者)。
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2020年10月22日
熊 寄せ付けない町へ
熊の捕獲や人身被害が相次ぐ中、人間の生活圏に熊を近づけない対策が各地で広がってきた。訓練を受けた犬による追い払い、餌となる果実の回収などで熊が来ない環境をつくり、出没件数が減る効果も出ている。専門家は「地域ぐるみの対応が成功の鍵を握る」と指摘する。(船津優也、松村直明)
長野県軽井沢町 “犬の手”借り 撃退
山あいの道をぐんぐんと進む犬。熊のにおいがしないか探りながら歩き、遭遇したら吠えて威嚇し、追い払う。長野県軽井沢町の委託を受け、地元のNPO法人ピッキオが育成した「ベアドッグ」のタマだ。
6~10月は、ベアドッグを連れたNPOスタッフが昼夜問わず町内を巡回する。「追い払いを繰り返すことで、熊は『ここは危険』と認識し、近寄らなくなる」。犬の飼育兼訓練士を務める田中純平さん(46)は、そう強調する。
町内では、かつて市街地での出没件数が年間50件、多い年で100件以上あった。町とNPOは、米国の事例などを参考に2004年度からベアドッグを導入。巡回活動を続けたことで、09年度には市街地での出没件数が6件にまで減った。19年度までの平均年間出没件数も9件と、ピーク時を大きく下回る水準で推移。20年度の出没件数は取りまとめ中だが、例年並みの見込みだ。
NPOには、猟犬の血筋を持ち熊に立ち向かえるよう訓練した「カレリア犬」4頭が常駐する。地域住民から熊を目撃したという連絡があると現地に向かい、追い払う。
町は「町を挙げて、追い払いや近づけない工夫を続けることが大事。親熊から子熊に人里に近づかない習性を受け継がせ、共生につなげる」(環境課)と強調。広報誌などを通じてNPOへの連絡を町民に呼び掛ける。夏と冬の年2回、町民向けに勉強会も開いている。
福井県勝山市 放置柿 無料で回収
自家用に栽培する柿の実は放置されることが多く、餌となって熊を誘い込む恐れがある。そのため福井県勝山市は昨年から、食べる予定がない果実を無料で処理し、出没件数の減少に貢献している。
市によると、自家用の柿は実が付いても食べないものが、毎年一定量出る。処分に費用がかかる場合もあり、肥料として農地にまく人がいる。においに誘われた熊を引き寄せないよう、指定する場所に持ち込めば市が処理を請け負う。市内の約7000戸にちらしを配るなどして周知している。
熊の動きが活発になるのは10月以降。その前に果実を回収しておこうと、今年は9月末から回収を始めた。既に10トン以上が集まり、10月25日まで受け付ける。今年の熊の出没件数は、前年同期と比べて3割程度少ない状況だ。
市は「熊は柿を好む。人間の生活圏に入ってくることがないよう、地域には可能な限り屋外に果実を残さない状態にしたい」(農林政策課)とする。
ドングリ各地で凶作 捕獲数も増加傾向
環境省によると、2020年度の捕獲数(8月時点)は3207頭。4月以降は増加傾向にあり、統計を公表している08年以降で過去最高だった19年度の8月時点の3681頭と、ほぼ同水準で推移する。人身被害の人数も19年度8月時点と同じ60人に上る。
19年度は捕獲、人身被害数とも大きく増えたが、その要因の一つは熊にとって秋の餌となるドングリ(堅果類)の全国的な凶作だ。
20年度も凶作傾向が懸念されている。9月末現在で、同省に情報提供のあった17都府県のうち、ブナ、コナラともに7割が凶作だった。
東日本の複数の市町村担当者からは「去年に続いてドングリは少ない。目撃や捕獲は増えており、冬眠の時期まで警戒が必要」との声が出ている。
緩衝帯設置、捕獲準備… 地域挙げ生活圏分離を
獣害対策に詳しい福島大学の望月翔太准教授の話
熊の出没に対する根本的な対策は①誘因物の除去②緩衝帯の設置③出てきた際の捕獲への準備──が重要だ。これらを実践することで、人間と熊の生活圏を分けることができる。逆に言うと、どれかが一つでも欠ければ、熊の出没や被害を減らすことは難しくなる。
対策は地域を挙げて実践する必要がある。特定の場所で対策をしても、できていない所から侵入されるからだ。
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2020年10月22日
温暖化で豪雨発生増 「西日本」級 確率3倍 気象研
気象庁気象研究所は20日、地球温暖化が豪雨の発生確率に与える影響について分析し、2018年の西日本豪雨クラスのものは、温暖化していない場合と比べ発生確率が3・3倍になるとする研究結果を公表した。17年の九州北部豪雨クラスだと確率は1・5倍になる。同研究所によると、局地的な大雨の発生確率に対する温暖化の影響を解明したのは初という。
1981~2010年の30年間の気象データを対象に、西日本豪雨の被害を受けた瀬戸内地域と九州西部の2カ所で、50年に1度の大雨が発生する確率を調査。工業分野からの温室効果ガスの排出がある場合と、温暖化の影響がなかったと仮定した場合とで大雨の発生確率を比べた。
瀬戸内地域では、温暖化していない場合の発生確率が1・5%。温暖化している場合は4・8%に上昇した。九州西部でも、温暖化していなかった場合の豪雨の発生確率が1・9%に対し、温暖化している場合は2・8%に上昇した。
同研究所は豪雨の発生要因として、気圧配置や大量の水蒸気流入などを挙げ、これらの形成に「地球温暖化が影響を及ぼしている可能性がある」との見方を示す。温暖化が進む中、大規模な被害をもたらす豪雨の発生に警戒するよう改めて呼び掛けた。論文は9月発行の学術誌に掲載された。
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2020年10月21日
新たな土地改良計画素案 生産基盤強固に 農水省
農水省は、土地改良事業の今後5年の指針となる新たな土地改良長期計画の素案をまとめた。生産基盤の強化を明記し、新たにスマート農業の導入による生産コスト削減を政策目標に盛り込んだ。農村振興では、中山間地域でも所得を確保できる基盤整備を推進する方針を打ち出した。具体的な内容や成果目標(KPI)などの検討を大学教授ら有識者による会合で進め、政府は来年3月に閣議決定する予定だ。
同省は素案を、食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会(部会長=平松和昭・九州大学大学院教授)に提示。①生産基盤の強化による農業の成長産業化②多様な人が住み続けられる農村振興③農業・農村の強靭化(きょうじんか)──を柱に据えた。
具体的には、生産基盤の強化に向け、自動走行農機や情報通信技術(ICT)による水管理など、スマート農業が活用できる基盤整備を推進。農地の大区画化なども進め、新たな担い手確保や法人の設立・育成につなげる。基盤整備を効果的に活用し、荒廃農地の発生防止や解消も目指している。
この他、米から野菜や果樹など高収益作物に転換し、産地化を促すため、水田の汎用(はんよう)化や畑地化も進める。畑地でかんがい施設の整備を推進して、高品質な野菜や果樹の生産を増やし、輸出拡大にもつなげたい考えだ。
農村振興では、所得と雇用機会の確保、農村の定住条件の整備を重視する。特に中山間地域は、農地の大区画化や大型機械の導入が難しいことを踏まえ、地域の検討を基に、水路や農地の基盤整備と生産・販売などの施設整備を一体的に推進。地域の特色を生かした営農活動を促し、所得確保を実現する。
農村の定住条件の整備や田園回帰の受け皿づくりを目指し、農道や集落排水施設の老朽化対策を進めるなどして、生活インフラを確保する。組合員の高齢化で体制が弱体化している土地改良区には、地域の幅広い人材の参加を促す。
農業・農村の強靭化へ、災害に対応した排水施設整備やため池対策などを盛り込んだ。
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2020年10月21日
対越ミカン解禁「早期に」 首脳会談で方針一致
ベトナム訪問中の菅義偉首相は19日、ハノイで同国のグエン・スアン・フック首相と会談し、日本産温州ミカンの同国への輸出解禁について、早期実現を目指す方針で一致した。会談後の共同記者発表で両首脳が言及した。解禁に向けた協議は2017年から始まっており、首脳間の一致で加速化する可能性がある。
現在、ベトナムには、条件付きで認められているリンゴや梨を除き、日本産の果実を輸出できない。温州ミカンの解禁に向けた両政府の協議は現在、検疫対象とする病害虫の検討を進めている。解禁には今後、具体的な検疫条件を協議する必要がある。
財務省の貿易統計によると、温州ミカンの19年の輸出額は、前年比14%増の約4億8000万円。主な輸出先の香港と台湾で7割超を占める。農水省は、ベトナムへの輸出について「人口が多く期待ができるが、検疫条件に左右される部分もある」(園芸作物課)と指摘する。
首脳会談では、日本がベトナム産の果実リュウガンの輸入解禁や、同国産の生果実の検査体制の簡素化も早期に実現させる方針で一致した。菅首相は共同記者発表で、これらについて「早期実現を目指す」と語った。フック首相も「輸出入を早く解禁できるよう促進する」との考えを示した。
同国への温州ミカンの輸出解禁については、自民党の二階俊博幹事長が今年1月に同国を訪問し、フック首相と会談した際にも、早期解禁を要請していた。
食料品輸出額4・1%増 東南アジア、中国けん引 4~9月
財務省が19日発表した2020年度上半期(4~9月)の貿易統計速報(通関ベース)によると、日本の食料品輸出額は前年同期比4・1%増の3838億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い世界経済が停滞した影響が懸念されたが、東南アジアや中国向けが伸び、全体をけん引した。
国・地域別に見ると、東南アジア諸国連合(ASEAN)が7・8%増の704億円、中国が13・0%増の692億円で、全体を押し上げた。一方、米国は16・5%減の434億円、欧州連合(EU)は14・3%減の134億円と振るわなかった。
食料品の輸入額は8・5%減の3兆3729億円だった。肉類が9・3%減の7339億円、穀物類は3・1%減の3797億円、野菜が7・7%減の2524億円、果実は1・9%減の2983億円。魚介類も17・5%減の6610億円となった。
食料品以外も含めた全体の輸出額は19・2%減の30兆9114億円、輸入額は18・1%減の32兆262億円。2上半期連続の貿易赤字だった。
9月単月では、日本の食料品輸出額は前年同期比15・7%増の691億円。主要国・地域向けが全て増えた。食料品輸入額は8・8%減の5267億円だった。
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2020年10月20日