広岡氏が、長年ひきこもり続ける40代当事者の部屋のドアを素手で叩き壊し、「降りてこい!」などと怒号を浴びせた上、抵抗を続ける本人を7時間にわたる「説得」で追い込む。こうしたシーンが放送されると、Twitter等で「暴力的だ」などと炎上したのだ。

 翌4月には、『社会的ひきこもり』等の著作のある精神科医の斎藤環氏が、ひきこもり経験者や研究者、ジャーナリストと共に会見。「『支援という名の暴力』を好意的に報道するのは人権意識が欠けている」などと、放送内容を批判する事態にまで発展した。

 批判を受けた広岡氏は、粗暴な振る舞いがあったとして、謝罪の意を公表したものの、TVタックル問題のほとぼりが冷めた翌年の17年7月頃から、再び、テレビメディアに取り上げられるようになった。いずれの番組も、ひきこもる当事者を「家庭に迷惑を及ぼす存在」として批判的に見せる一方で、同センターや広岡代表の活動を好意的に扱った。そして、ひきこもる人々を無理やり引き出すかたちでの支援のリスクに触れることはなかった。

 19年に立て続けに起きた「川崎市登戸通り魔事件」や元農水省事務次官が長男を殺害した「練馬事件」では、メディアの報道が「ひきこもり」を巡って過熱。その際も、ワンステの特集を組み、広岡氏をスタジオゲストに呼んで「ひきこもり」にまつわる社会的課題について解説させた情報番組もあった。

 こうしたメディアの風潮や広岡代表の政治活動に、訴訟に参加する被害者の一人はこう危機感を募らせる。

「テレビで報道されるワンステと、施設内で行われていることは印象が全く異なります。ワンステは広岡さんの出世の装置で、僕たちは、そのための道具にされているだけな気がする」

引き出し業者の介入で
決定的に悪化した家族関係

 広岡代表は自著の中で、ピックした人々を施設で集団生活させる目的について、「親子関係の修復」と述べている。ところが皮肉なことに、全く逆の結果に至る例も少なくない。