筆者は広岡代表に対し、意に反して連れ出すピックや、自由を奪って生活を強いる支援に関する違法性の認識について問い合わせたが、23日(金)17時の期限までに回答を得られなかった。同代表はこれまでも、本人の意に沿わない引き出し行為について、自著やメディア各社取材で繰り返し否定しており、訴訟の争点の1つになるとみられる。
同様の支援手法を用いる業者は各地に存在するが、なかでもワンステは、突出して被害を訴える元生徒の数が多い。ある日突然のピックのみならず、主な拠点である湘南校や、職業訓練校である御殿場校での寮生活やプログラムについても、元生徒たちから批判の声が上がっている。
代理人の一人である徳田暁弁護士(神奈川県弁護士会)は、「声を上げられずにいる被害者が他にもたくさんいるはず」とみて、提訴翌日の29日には、専用ダイヤルを設置し、被害情報を集める予定だ。
【ワンステップスクール被害者ホットライン】
2020年10月29日(木)13時〜16時(1日限定)
電話:045-264-9882
代表のカリスマ化と市議選出馬に
危機感を募らせる被害者たち
広岡代表は今年2月、拠点のある御殿場市の市議会議員選挙に無所属で出馬した。当選には至らなかったが、わずか7票差の次点という結果に、ワンステに対する強い被害感情を持つ元生徒たちの間では大きな衝撃が広がっている。
「選挙の結果に、恐怖を覚えました。彼が、表向きの支援の良い部分だけを語って市民の代表に選ばれてしまうことは、とても危険なことです。ワンステで実際に何が行われてきたのか、その違法性を知ってもらうためにも、やっぱり訴訟をしなければと思ったんです」(30代被害者)
広岡代表は、17年春に自著を出版したほか、インターネット上でも法人サイトとは別に、個人サイトの運営や動画チャンネルの開設、SNSの個人ページ開設などセルフプロデュースに余念がない。
そんな発信力のある同代表の、若く、熱意のある支援者としての姿は、メディア各社がこぞって好意的に取り上げ、「ひきこもり」に関する凄腕の解決人のように扱ってきた。
しかし、ここ数年は同センターの支援手法に対し、広く疑問の目が向けられるようにもなってきた。きっかけは、16年3月21日に「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系列)で放送された激しいピックの様子だった。