一部タクシーでマスク着用が必須に!?
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、使う機会が増えたのがマスク。他者にウイルスを移さない、移らないためにも、できる限り着用しているという人も多いはずだ。
そしてこれからは、タクシーを利用する際もマスク着用が必須となるかもしれない。東京都のタクシー会社の一部が、マスク着用を拒否した人の乗車を断れるよう、国に要請したのだ。

実はタクシーなどの道路運送事業者は、正当な理由がなければ乗客の受け入れを拒絶してはならないことになっている。道路運送事業に関する法律「道路運送法」の第十三条には、そのことも明記されているが、ただ「次の場合を除いて」として、このようにも書かれている。
当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。
ここに登場する「運送約款」とは、サービスの提供元と利用者との取り決めを定めたもの。平たく言うと、乗車時のルールのようなものだ。
今回の要請はこの運送約款に、乗車時にはマスクの着用を義務化することなどを盛り込むものとなっていて、認められれば従わない人の乗車を断れるようになるという。
現状だと認可の見通しは不明
管轄する関東運輸局によると、今回のような約款変更の要請は8月31日が最初で、10月16日現在、法人から9件、個人から1件の計10件寄せられているという。審査は個々に行われ、認可されるかどうかの見通し、具体的な判断の時期などは話せないとのことだ。
マスクの着用が必須となれば感染予防につながりそうだが、タクシーは電車やバスと比べるとプライベートな空間という印象もある。運転席と後部座席がガラスで仕切られていることもあり、よりマスクを外したくなるという気持ちも分からないでもない。

なぜ、今回のような変更を求めたのだろう。要請をしたタクシー会社の一つ、日の丸交通の担当者に話を伺うと、運転手が乗客のマナー違反で悩みを抱えていることが分かった。
「友人がコロナ」とマスクなしで会話
ーー運送約款の変更を要請した背景を教えて
電車やバスと異なり、タクシー車内は密になる可能性が高く、行先や経路確認などを確認するために会話も必要となります。また、コロナの影響によって利用者数も減少(2019年比で4割減)しております。
そうした状況下でも、比較的需要の旺盛な夜間の繁華街での利用者はマスクの着用率が低く、ドライバーから不安の声が数多く寄せられたことから、ドライバーと利用者の安全と安心を確保するために申請をいたしました。
ーーマスク着用を拒否する人はいるの?
9月に利用者のマスク着用率を社内調査した結果、2843人のうち着用者は2305人(約81%)で、19%の人はマスクをつけていませんでした。タクシーはマンツーマンでの接客で、トラブルを避けるためにも、ドライバーから利用者へマスク着用をお願いすることは難しい状況です。

ーー運転手らが困った、実際のケースなどはある?
繁華街から複数名で乗車した利用者の車内の会話で、「友人がコロナに感染した」と話していた本人がマスクを着用していないことがありました。また、出産を控えている妻を持つドライバーからも、マスクを着用していない利用者には恐怖を感じるという声が寄せられております。
ーー現状では、どのように対処している?
現在はマスク着用のお願いをするステッカーを掲示しているのみです。
常備されたマスクを着用すれば乗車可能
ーー約款変更が認可された場合、乗車拒否の判断はどのような基準で行われる?
マスクの着用を求めている場合において、旅客がマスクの着用なし(正当な理由により装着できない場合を除く)で乗車しようとした場合、マスクの着用を求める内容となっております。
ーー乗車拒否されたら、乗客は絶対に乗れないの?
車内にマスクを常備してあり、利用者がしていない場合は「これをつけてください」と渡して、それでもマスクをつけない利用者の場合はお断りする場合があるという内容です。

ーー乗車後にマスクを取れば降ろされる?
下車を強要することは考えていなく、あくまでマスクの着用をお願いして運送を継続します。
ーー乗客らに呼びかけたいことは?
当社ではタクシー車内の除菌・換気はもちろん、飛沫感染ボードなど出来る限りの感染予防対策に努めてまいりますが、マスクの着用をお願いすることが次に利用するお客さまへの感染予防になりますので、ぜひご理解いただきたいと思います。

マスク着用の義務化を求めている背景には、新型コロナの感染リスクがあるにもかかわらず、未着用で話すといった、マナーを守らない乗客の存在があった。
マスクをすれば必ずしも感染を防げるわけではないし、感覚過敏などで着用できないこともある。しかし、タクシーの車内はいわば密室空間のため、私たちも今一度、マスク未着用だと接した人がどう思うかなどを考えて、行動や言動に配慮するべきだろう。
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