新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した青森県弘前市の飲食店が、弘前保健所に対して事前に体調不良の従業員が複数いることを相談していた問題で、保健所は来店客だった医師の感染を知った店側からの連絡で初めて、従業員を検査対象としていたことが20日までの東奥日報取材で分かった。店側は、それ以前の今月上旬に複数回、保健所に相談していたが、検査は行われなかった。
県によると、同店では今月1日から従業員が体調不良を訴え、その後も複数人が喉の痛みなどの症状を訴えたことから、店側は5日に保健所に対し「医療機関を受診したが、症状が続いている」などと相談。保健所は従来の基準に従い、症状や行動歴などで検査の要否を判断。県外や海外への移動歴がなく、県外の人との接触も認められなかったことから検査を勧めず、地域の医療機関の受診を促していたという。
来店客の医師の陽性が判明したのは12日。これを受けて検査を受けた従業員2人の陽性が14日に判明。翌15日には新たに従業員5人と来店客7人の計12人の感染が分かった。県は同日夜、クラスターが発生したとして店名を公表した。
16日以降も陽性者が確認され、20日現在で県内在住の客37人、従業員21人の計58人の感染が判明。同居人や知人ら2次感染者も増え、これらを含んだクラスター関連の患者は合計で100人規模となっている。
県感染症対策コーディネーターの大西基喜医師は、感染拡大が落ち着いた段階で保健所の対応を検証する方針。「県外との接点が認められなくても、より柔軟に検査の要否を判断し、少しでも早い段階で積極的な検査につなげられなかったか確認したい」と話している。