お世話になります。えびすい@GMB.tokyoです。
GoogleマイビジネスやInstagramを利用して集客アップサービスを提供する、とある会社の存在を知りました。
世間にはいわゆるグレーやブラックな手法を提供し、対価を得る「MEO」業者さんが多数存在します。
ただし、スパム行為や悪質商法(GoogleやInstagramのガイドライン違反)をしていると類推できるだけで、明らかにしている証拠がないため名指しすることは難しいです。
そんな中、なぜこの会社をとりあげたのかというと、この会社は社長自ら、自社のサービス内容の解説動画のなかで、明らかにスパムと判断できる説明をしていたからです。
さらに問題だと思ったのはこの社長、Googleの元社員(Google Asia Pacific. Marketing and Communications)という経歴だからです。
元Googlerが在籍した会社のプロダクトのガイドラインを踏みにじるサービスを展開するのは信じがたい。ガイドラインを知らないとも思えない。
こういうきっかけで書こうと思いました。
ガイドラインを守らないと、いきなり検索結果に表示されない、アカウント自体が停止、もしくは削除されるという罰則をうけることになります。
どういうことをしたらGoogleマイビジネス・マップのガイドラインに反することになるのか、この動画での社長の説明を解説します。
■この会社が提供しているサービス内容
株式会社Lim(以下Lim)は、人工知能活用「Lim MEO」という名称で、Googleマップ上で効率的に上位表示を実現するサービスを提供しています。
月額19,800円のシルバープランから、98,000円の専属プランで、Googleマイビジネスへの登録、外部被リンク作成、口コミ増加施策などを行っています。
Instagramでは、「インスタフォロワーを自動で増やす」というページでサービス内容が紹介されていて、ビジネスプラン・月額¥14,980/月など3つのプランが用意されています。
紹介しているページでは、世界中の有名企業に信頼されているとして、佐川急便、東芝、群馬県、ソフトバンク、RIZAP、DBS(シンガポール銀行)、DACグループのロゴを掲載しています。
さて、具体的にどこがスパム行為もしくは悪質商法なのか、説明します。
■報酬を払いクチコミを書いてもらうのはNG
Lim社長曰く
「うちには“Limローカルガイドコミュニティ”というのがあって、実際にホンモノの人間がクチコミをします。偽物はダメですよ。」(30分50秒)
Googleマイビジネス・マップのクチコミは、実際に現地に赴き体感した方が書けます。現地に行っていない方は書いてはいけませんし、Googleはスマホの位置情報もチェックしていますので、実際に行ったかどうか判別可能です。
さらに、クチコミを書く人がホンモノの個人のアカウントか偽物アカウントにかかわらず、対価を得てその見返りにクチコミを書くのはガイドラインに違反します。
この会社が、無償で引き受けて、ローカルガイドコミュニティのローカルガイドさんも無償で現地に赴き、体感してそのクチコミを書くのであれば何ら問題はありません。
しかし、”MEOシルバープラン”・¥19,800/月額で提供する中に”口コミ増加試作(原文ママ)”とLimのWebサイトにあります。
■人為的に被リンクを増やしても効果は無い
Lim社長曰く
「どのサイトにリンクを置いたら被リンク(サイテーション)に一番効果があるのか分析し、そのサイトからリンクを貼ります。」(29分35秒)
まず、外部のウェブサイトにリンクを貼ってもらう「被リンク」に関していうと、Googleから評価されていないウェブサイトからの被リンクは表示順位をあげることに対して全く効果が無いです。数が多くても同じく効果が無いです。
評価されていないウェブサイトというのは、知名度のないポータルサイトや個人のブログなどです。評価されているウェブサイトは、公的機関のサイトや信頼性の高いメディア、専門分野で支持を集めているウェブサイトのことをいいます。
Googleウェブマスタートレンドアナリストのゲイリー・イリーズ氏が、2017年6月にアメリカで開催されたSMX AdvancedというSEOカンファレンスにおいて、被リンクを増やすためにお金を払うことを、
literally throwing money out of the window,(文字通り、窓からお金を捨てるようなもの)
と発言しています。 また、
they now are way better at ignoring these paid or manipulated links(Googleは、それらのお金で購入されたリンクや人為的に操作されたリンクを〈評価する要素から〉除外することがうまくなっている)
とも話しています。
Google: Buying Links Is Like Throwing Money Out The Window
Limの説明を再掲します。
どのサイトにリンクを置いたら被リンク(サイテーション)に一番効果があるのか分析し、そのサイトからリンクを貼ります。
評価されているウェブサイトに勝手にリンクを貼ることはできません。編集権限を持っているウェブサイトでないとリンクを貼れません。
お金を払って彼らが所有するウェブサイトからリンクが貼られるということはどういうことか。
かつて一世を風靡した外部リンク施策ですね。
検索エンジンからペナルティをうける可能性があります。
■人為的にアクセス数を増やす、アクセスエリアを詐称するのはスパムです
Limの一番のウリは、”Word Server Access System”というシステムです。
これは、動画の28分から説明がはじまります。箇条書きにするとこうなります。
- Limは世界中にサーバーを所持していて、香港からコントロールしている
- サーバーではiPhoneのチップへ万単位の数で操作の指示を送ることが出来る
- チップからGoogleマイビジネスで登録した店舗情報や公式ウェブサイトにアクセスしてページビューを稼ぐ
- サイトの滞在時間もコントロールし、評価されやすくする
- アクセス元は、海外からではなく日本国内からのアクセスであるように詐称する
簡単にいうと、あたかも数万人が特定の店の情報を見ているように偽のアクセス数を稼ぎます、といっています。
本来、Web上の情報へアクセスした数、閲覧数は、人間がスマートフォンやパソコンで閲覧した数であることが求められます。
機械的に表示させたのであれば、それが何万回であろうが宣伝にはなりません。しかし、Googleの検索サイトであたかもその情報が多数検索され、人からアクセスされていると思わせ、人気のある情報、知名度のあるお店と思わせ、その情報が有益であると思わせる施策をLimはとっている。
当然これは、Google検索に対するスパム行為です。日本国内からのアクセスであるように詐称する、人間の操作のようにアクセスする、というのはあくまでそうしてスパム判定から逃れらようとしているだけで、機械的に閲覧数を稼ぐことそのものはスパム行為です。
さらに、あたかも日本国内からのアクセスであるようにという接続元を詐称する手法は「IPスプーフィング」といって、それ自体では攻撃できませんが不正侵入等を目的とした不正アクセス時によく利用される手法です。
■”Word Server Access System(WSAS)”でInstagramへのスパム行為も
さて、LimはもともとInstagramを利用した集客システムの提供からはじまった会社のようです。
こちらのサービスもWSASを利用しているようです。
アクセス元の詐称の他、自動操作であたかも人間が操作しているように、サービスを申し込んだアカウントに大量の「いいね」をして、あたかも人気のアカウントのように見せるスパム行為をしているようです。
ここで注目したいのはこのサービスが有効だという、Limのロジックです。
”現在インスタグラムのアップデートにより全ての自動運用ボットは正常な作動はなされません。そんな中、Limの技術によりインスタ自動運用は世界でも弊社のみが現在提供できるサービスとなりました。”
動画もあります。
対して、Instagram社のコミュニティガイドラインはこちら。
有意義で純粋なやり取りを大切にしてください。
「いいね!」、フォロー、シェアを人為的に集めたり、同じコメントやコンテンツを繰り返し投稿したり、利用者の同意を得ずに商業目的で繰り返し連絡したりしないでください。スパムのない環境を維持しましょう。
LimはInstagram社に検知されないから大丈夫と言っている、しかしInstagram社は人為的に集めるのはNGといっている。
Limの考えは、たとえて言うと「万引きも見つからなければ問題ない」と言っているのと同じですね。
あきらかに、Instagramのエコシステム、コミュニティを毀損するスパム行為です。
■まとめ
悪質業者、スパム業者がそのスパム手法を公然と説明して営業活動をしているのはあまり表に出てこないので、とりあげてみました。
なぜスパムなのか、なぜ悪質なのかできるかぎるわかりやすく書いたつもりですが、わかっていただけたか不安です。
営業にくる業者さんが悪質なのかそうでないのか、判断する材料としてすこしでも役に立てば嬉しいです。
以上。