「はい、アップルサイダー・
ホット・トディ」
「こっちも美味しそう……!」
グリューワインを飲み終えた頃に
差し出されたんは青森産
リンゴジュースの
甘酸っぱい香りにスパイスが
奥深さを加味したホットカクテル。
マスター独自のレシピで
カルヴァドス(りんごのブランデー)を
使用してより奥が深い感じ。
身体の芯からあったまる優しい味。
少しずつ飲んでいる内に、
ちらほらと来客があり、マスターは
注文の対応で忙しくなった。
スマホに手を伸ばすと、もう0時を
少し過ぎている。
この1杯を飲み終えたら
帰ろっかなぁ。
そう思った時、画面上にLINE通知。
タカヒロからや。
『今何してんの?」
『Stax で飲んでんねん
今日はホットカクテルで』
愛海のお勧め用に撮ってた
グリューワインの写真も添えて。
『モルドワインか。ええな』
モルドワイン?とググったら
「ホットワイン」は和製英語で、
英語だと「モルドワイン」って言う。
ちなみに「グリューワイン」はドイツ語。
より正確に言うなら「グリューヴァイン」
思わん所から小っちゃい時
海外にいたという話の片鱗を
感じて、少し面白い。
『でも、飲みすぎなや』
俺い居てへんのやから』
保護者みたいな言葉が届いて笑った。
『大丈夫やん!
今日は疲れてるから控えめ』
ホット・トディは、残り1/3ほど。
冷めへんうちに飲もうと残りを
飲み下している内に、
新しいLINEが着信。
『少し電話できへん?」
電話――そう言うたらタカヒロと
電話したことはない。
帰り道、喋りながら歩くのっていいかも。
『ちょっと待ってて
帰りながらかけるから!」
返信してから残りを飲み干し、
マスターを呼んでおあいそ!
「足元気ぃつけて!(笑)」
「はーい。今日は大丈夫」
「ありがとうね」
頑丈なドアを開けて外に出たら
冷たい風が頬を撫でた。
ホットカクテルで身体が
温まってたんでマフラーを緩めに
巻いて階段を下りていく。
『電話大丈夫。オケ」 送信した。
緊張感を誤魔化すように、
咳払いをして喉の調子を整えた。
画面をじっと見てたら
着信音が響いてワン呼吸置いて
応答ボタンをタップする。
「うん」
変に緊張して「何を話せばええんやろ」
と混乱してくる。
チョット間があいて「元気してた?」
「うん......」しか言えない。
が普通に「みんなと楽しくしてる?」
「楽しいよ。たこ焼きはもう
飽きてんけど楽しかったで。」
大阪のたこ焼きは奥が深いねん。
出汁が効いてるタイプや
トッピングも種類が多くって
ソースもやたら種類が多くて
迷うけどアタシはポン酢マヨ...
話聞いてたらを無性にたこ焼きが
食べたくなって、明日食べに行こうかな
という気になってくる。
『由美子って忙しいんちゃうん?」
「うん……今週はずっと大変やった」
『体調大丈夫か? 飲みすぎるなよ』
「うん。疲れてんけどなぁ
体調は大丈夫やしあんまり飲んでへん」
「ならええねんけど。変なムシが
つかんようにしてや」
「ふふ、なにそれ」
バーって半ば男女の出会いが多く
お洒落で男前も多いから。
けどStax はその辺がちゃう。
客同士で交流が生まれるけど
どちらかが歓迎してへん様子やったら
マスターが気付いてさり気なく
やめさせてくれるから。
だから、男女ともに居心地がよくて、
賑やかさはあるけれど
落ち着いている、いいお店。
あそこで飲んでいる限り、
嫌な目に遭う心配はほぼゼロ。
この間はふざけて「タカヒロママ」って
呼んで渋い顔をされたけれど、
こういうところがちょっぴり
大阪のオカンっぽい。
笑いながら返すと、電話口で
「いや……」って少し歯切れ悪くなった。
「由美子1人で飲んでると心配』
「ええ…にそんな酒癖悪くない」
「そうか?」
疑うような声音に、む、と
口がへの字になった。
「そうやで!最初に会った日は、
ちょっと飲みすぎて珍しく足に
酔いがきただけやんか……」
言い訳するように言いながら、
ふと疑念が湧いてくる。
……もしかして、酔ったら男に
誘いをかけたり、誘いに乗ったり
するって思われてんの?
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