忙しすぎて | ココ

ココ

筆文字アート作家として
歩み始めました。

感性を育みながら
言葉を必要とする方と
寄り添っていきたい。


テーマ:


「はぁ……」


夜9時を過ぎたオフィスで、

疲れ混じりのため息を吐き出す。


今日はなかなかの集中力を発揮

出来てんけども午後がミーティング

続きやって時間が取れへんで

明後日が締め切りの

新規記事企画案チェックが

あまり進んでいない。


明日も明日でリニューアル関連の

ミーティングが連なっており、

あまり作業時間を確保出来へんから

今日中にもう少し片付けておかんとな…。


そう思いつつ疲れた目をぎゅっと

閉じては目頭を揉んでいると、

コトンとデスクに何かが

置かれる音が聞こえた。


「お疲れ様、工藤さん」


その声で視線を上げると、

コンビニの袋を手にした

横山さんが立っている。


小さい瓶入りの炭酸ジュース。


アタシが疲れた時によく

飲んでいるものやった。


「差し入れ」


「ありがとう、

まだ帰ってへんかった?」


「色々整理したい事があって

もうすぐ帰んねんけど……

工藤さん、なんか煮詰まってる? 

手伝えることあれば言って」


「……じゃあ、ちょっと意見

聞かせてもらっていい?」


発想はええねんけど今ひとつ

物足らん記事案を見てもらう。


ややエンタメ寄りのテーマなんで

アタシ一人が悩んでいるより

彼の知恵を借りた方がスムーズ。


少し場所をあけてモニター前を譲ると、

素早く企画を読み進め彼は

「なるほどなぁ」と呟く。


「確かに、もう一声欲しいな。

ちょっと待って」


自席に戻ると、何やらカタカタと

すごい勢いで文字を打ち込む横山さん。

しばらくして、チャットツールの

通知ポップアップが現れる。


「今送った」


早速開いてみると、

参考になりそうな情報のリンクや、

どういうところを取り入れたら

良さそうなんか、

ひとことメモが連なっている。


「さらっと見た感じの

フラッシュアイディアやねんけど

そのへん使えると思うねん」


「……すっごい助かる!」


自分にはない引き出しを

目の当たりにし、

疲れも忘れて目が輝く。


力強く頷いて言うと、

横山さんはちょっとびっくりした

ような表情になって

それから「よかった」と笑った。


「俺、もうちょいしたら

帰るけど、工藤さんも早めに

切り上げてや。それ水曜〆やろ!

水曜なら俺も手伝えるから」


「うん、ありがとう」


横山さんが帰ったあと、

追加で2〜3記事をチェックし

つつスマホを開く。


タカヒロからは雑談のあとに、

『金土日と来週半ばまで予定

詰まってて会えなさそう』って

届いていて、少し気分が

重くなるのを感じた。


……久しぶりに、はっきり

「好き」やと認識した相手

だからかなぁ。


ふとした時に会いたいな、

なんて感じてしまってたり

次にいつ会えるんか、分かれへん事に

思いの外沈んでる自分に驚く。


一方で、先日の愛海の言葉も

耳から離れずにいた。


『本気で好きやったらお別れ覚悟で

早めに話さんと由美子の

傷が深くなるだけやから」


……重々わかっている。


せやけど、タカヒロと過ごす時間を

手放したないって言う強い気持ちが

あるのもまた事実。


曖昧なままにしておくことで

今の心地いい関係が続くんやったら

その方がいいかも、って

思わずにはいられへんアタシ。


もしも。


もしも、最初に会ったあの日.........


--------勢いで誘いをかけず、

またBARかどっかで再会できる方に

賭けてゆっくり関係を

築いとったら、何かが

違ってたんかな?


今更やねんけど、そんな考えが

........後の祭りって事やから。


「……帰ろ」


ため息とともに呟き、

PCをシャットダウンする。


彼の意思を確認する覚悟も、

自分の思いを伝える覚悟も、

まだできそうになかった。


それからの1週間は、まさしく

“怒涛”というべきものやった。


片付けても片付けても

次々湧いてくる仕事。


横山さんや花園さんが手伝って

くれてたけど、3人揃って

22時過ぎまで残業してた日々で、

週の後半は疲れを通り越して

ある種のハイになってくる。


そんな中で、毎日欠かさず

送られてくるタカヒロからの

ちょっと緩いメッセージが、

数少ない癒やしやった。


でもそんな癒やしも、

今後を思えば複雑な部分もある。


曖昧な関係と、

決心できない曖昧なアタシ。


そこから逃れるようにして

仕事に打ち込む……というサイクルを

繰り返している内に、

長くも短くも思えた1週間は

やっと終わりを告げた。


.....…今日、どうしようかな。


23時20分。自宅最寄り駅を

出たところで、アタシは家に帰るか

Bar Staxに行くかで迷い、足を止めた。


普段なら、帰りがこんな時間やし

家に帰っててんけど。


疲れ切った状態で、さらに

お酒まで入れたら、

帰ってメイクを落として

お風呂に入って髪を乾かし

……という一連のプロセスが、

この上なく面倒やねんもん。


今週はハードすぎて、

へとへとなんやから

帰ってさっさと寝てしまった方が

いいのはわかっている。


でも、先週の金曜はほとんど

“ Stax ”で飲めてへんし

…週末を3連続でタカヒロと

過ごしててんから1人静かに

過ごすのは少し寂しい気もする。


……1時間だけ、バーに行って.......


そう決めたアタシは

寒空の下を足早に歩き始めた。







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