愛海とデート | ココ

ココ

筆文字アート作家として
歩み始めました。

感性を育みながら
言葉を必要とする方と
寄り添っていきたい。


テーマ:


朝食を食べてから数時間――。


二人でソファにだらっと座って

海外ドラマを見るという、

怠惰な休日のお手本のような

時間を過ごしていた。


その後は荷物を持って一旦家に寄り、

身軽になってから車で御堂筋を走る。


そうして東急ハンズ心斎橋店の前で

車を止めてもらった。


長い信号待ちをして横断歩道を渡る。


時刻は13時50分過ぎに着いた。


そろそろ愛海も到着してるはずや。


周囲を見てみると、手持ち無沙汰な

様子でスマホを眺めている

彼女の姿が目に入って来た。


時間ぴったりくらいに来ることが

多い愛海やけど少し早めに到着した模様。


「お久しぶり!」


──と、背後から声を掛けて

愛海がピクって肩を跳ねさせた。


目の前にいるんはショートブーツに
レザースキニーが脚の長さを
強調している、スタイル抜群の美女。


高校時代からの親友、愛海の姿。


「彼氏できたんやったら教えんと」


「……っ、見てたんや!」


恐々尋ねると、愛海は「ハンズ前で

車下りたところから。

私は先にホテルへ向かってんや」


……墓穴を掘ってしまった。


「てかなぁ。彼氏出来たん?

久しぶりやろ!作る気あれへんのか

って思ってたわ。

彼氏どんな人なの?」


「彼氏ちゃうねん!そろそろ時間だし、

お店入ろう」


愛海を置いて歩き出したら後ろから

「え〜! 彼氏ちゃうんや」って

ブーイングが聞こえて来た。


これから2時間ほどお話やし。


その間に洗いざらいぶちまけ

させられるんは分かってる。


さっさとお店の中に入った。


「いらっしゃいませ」


「14時予約の白坂しらさかです」


「2名様でご予約の白坂様ですね。

お待ちしておりました。

お席へご案内いたします」


店内はほとんどがソファ席で、

席同士の間隔も広く、ゆったりとしている。


ほぼ満席で、騒がしくはないものの

賑わっており、密談雑談には

もってこいという感じだ。


アタシも愛海もまずはダージリンを

頼んで、アフタヌーンティーセットの

到着を待つ。


「……で? 彼氏じゃないってホンマ?」


「彼氏、ではない……」


「でも、この中途半端な時間に

送ってくれたってことは、

昨日泊まってたんと違う?」


「…………」


愛海の鋭い指摘に、内心「うっ」となる。


言われてみれば確かにそうや。

夕方やったら午前中から昼過ぎ

くらいまで遊んでいて

そのついでに送ってくれた……

というのもありえるけれど、

今は午後2時。


解散するんは違和感のある時間。


微妙な顔で固まったアタシを見て、

彼女は意外そうな表情になった。


「え、なに。まさかセフレ?」


堂々と発せられた、昼間のカフェには

ふさわしくない単語に、アタシ

は慌てて周囲へ視線を走らせる。


しかし、席同士がしっかり離れている上

それぞれのテーブルで話に

花が咲いてるから誰もこちらの

ことなど気にしてへん。


「大丈夫やって!誰も聞いてな

ないで!

その反応はセフレなんや?

由美子がそういうの作るって

なんやびっくりするわ」


このタイミングで

アフタヌーンティーセットと

紅茶が運ばれてきて、

しばし写真撮影タイムに。


圧倒される程美しい。


「これは絶対美味いな」


うんうんと頷き、早速サンドイッチを

手に取って食べ始めた。


2人ともお昼を抜いていたので

それなりにお腹が空いていて、

あっという間に下段の半分ほどを

平らげ、紅茶を飲んで小休止を入れる。


「それで、なんでセフレ作ったの?」


「セフレではないねん......

気がついたら男女の中……?」


「なにそれ、告白うやむやに

されてるとかじゃないやんな?」


「うん。最初に誘ったんは

こっちやし告白もしてない。……

っていうか、ワンナイトの

つもりやったから

なんか戸惑ってんねん」


「ちょっと待ち〜ぃ。色々と

気になるところありすぎて

何から聞けばいいのかわからん」


次の皿に手を伸ばす愛海。

「出会いから」と先を促され、

アタシはぽつぽつと話し始めた。


「この前いつも行ってるバーで

初めて会って、ええ人って気になって」


「うん」


「そしたら、ちょっと酔い過ぎて

送ってもらってんや」


「ほう」


「何もないまま別れて二度と

会えなかったらやだな!

って思って、中に誘ってんけど」


「超大胆行動やんか」


「たぶん結構酔っ払ってた」


「だろうな」


一息ついて、アタシもサンドイッチに

手を伸ばした。


提供直前に調理されたのか、

まだ熱が残っており、で美味しい。

ぺろりと食べきってしまい、

話の続きに戻らされた。



「さっき言うたように……

ワンナイトやと思っててん!

絶対モテそうな人やったし

連絡先交換しなかったし、

朝起きたらいなかったし」


「でも……?」


手を組んだ愛海に期待の籠もった

眼差しを向けられ、ティーカップの

赤茶けた水面へ視線を落とした。


「でも……うちに、わざと。

わざとやで!

忘れ物していって。1週間後に

取りに来てんけどもその時は

連絡先交換したらあっさり

帰っていってん」



「おお……? 向こうは1回で

終わりたくなかったんや!最初に

連絡先聞いとけよって感じやん」


「あ、初めて会った時は

スマホ忘れてとってんて!」


「ドジっ子……? ドジっ子なん?」


「うん、割と」


本人が聞いていたら

「子は付けるな」とか渋い顔やろな。


思わず想像して、ちょっと

笑ってしまった。







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