「……っ!」
固まっているうちに、
キスをされながらゆっくり押し倒されて、
素肌を晒した背中がシーツへ沈んだ。
緩いウエストを紐でぎゅっと縛って
落ちないようにしていたスウェットは、
紐を解かれるとあっという間に
ずり下げられてしまう。
下着の上から弱い箇所をツン、
と押されてまた声が漏れそうになり、
きつく唇を噛んだ。
「噛むなって」
「ぁ……、や……!」
頬を撫でていた手が唇に触れた
かと思うと人差し指が口に差し込まれた。
ベースを奏でる、いわば大事な
商売道具の指に傷をつけたりしたら
ヤバイんで歯を立てないように
薄く口を開かざるを得なくなる。
……タカヒロってアタシが
そうするんをを分かって
やってんねん.....絶対。
非難がましい目を向けたら
くすっと笑った彼は、
無遠慮に指を進めてきた。
逃げ惑う舌を追いかけた指先が、
表面のざらついた部分を擦り、
刺激を与えてくる。
「……っ、ふ……」
そうしてたらじわじわと気持ちよさが
湧き上がってきて、こんなところまで
感じるのかと愕然としてしまう。
ハッとして首を振り、
身体の脇で固まっていた手を
どうにか動かしてタカヒロの手を
遠ざけてみるねんけど……。
キスで思考を乱されてるから
濡れた指先が胸の頂を軽く弾いて、
またぴくりと身体が跳ねた。
アタシの両手は、胸元を這う彼の手首を
緩く掴むだけになってて
なんの役にも立たってない。
逆に何やオネダリしてる感じ。
このままやったら恥ずかしくて、
抵抗を諦めたアタシは彼の
首筋に手を伸ばした。
……タカヒロは優しくて、
けども容赦はなくて、いっそ少し
性急にされた方が楽なんちゃうって
そう思ってきた。
髪の一筋から爪先まで、
アタシの身体で彼に触れられていない
ところはないんかも知れん。
そう感じるほどに唇や指先が
あちこちへ優しいキスを
落としていってんのに
決定的な刺激はくれへんから
物足らなくって身体が疼いた。
「……っ、いじわる……」
堪らず乱れた息の下でそう呟いたら
タカヒロはゆるりと口角を上げる。
「優しくしてるやん」
「…………」
確かに優しい。うん、
これ以上ないほど優しい。
でもその優しさは、ことこの場面に
於いては残酷なまでに意地悪。
眉尻が下がり、じとっとした
視線を向けたらタカヒロはまた
少し笑みを深める。
「そう…ごめん、意地悪した」
なだめるような優しいキスで
そのまま至近距離で見つめ合う。
アタシの反応を見ながら、
蜜をすくった指先がゆっくりと
入ってきて、待ちかねた刺激に
思わず甘い声が漏れた。
「あ、ぁ……っ」
「……今日は、あんま苦しくないと
ええんやけど!」
壺の中の様子を探るようにくるりと
掻き乱されて、弱い箇所を攻められて
「あぁっ」と声がかすれる。
気持ちのいいところをトントンと
軽く押し上げられると、無意識に
奥からきゅんとしてしまう。
「んっ……」
「ココ、好き?」
「……や、恥ずかしい」
指が動くたびに微かな水音がして、
そこがどうなっているかを反応で
伝え、頬が熱くなる一方。
残ってた理性も崩壊寸前。
みっともなく溺れてしまう
自分を押し止めるのは、
わずかな羞恥心だけ。
「……由美子」
でもそれすらも、彼の低くて
甘い声が名前を呼んだ瞬間に
溶けてゆく感覚に陥った。
「ね、もう……、お願い…っ」
さらさらとした黒髪を撫でて
アタシからキスをしたらタカヒロが
喉奥で笑った気がする。