土日祝日が休みの会社。
一週間の中で金曜日が
最も気が抜ける。
終業と同時に連れだって
居酒屋へ飲みに行く同僚も
多いけど、アタシは
お決まりの店へ行くのが習慣。
自宅最寄駅のそばにある、
個人経営の小ぢんまりとした
BAR 『Stax 』
活気あふれる商店街の
2階にあるそのバーは、
お手頃価格で本格的に
お酒を愉しめるお気に入り
のスポットだ。
騒がしくないねんけど
静かすぎもない絶妙な
雰囲気がめちゃくちゃ好きで
マスターの人柄も素敵。
3、4ヶ月前に初めて行って
毎週のように通っている。
日付が変わるまで
のんびりするのが常やし
一旦家に帰って軽食をとり
シャワーを浴びてから
行くのもお決まり。
先週の金曜日も
その例に外れず、
二度目の身支度を終えて
Staxに向かった。
「お、工藤さん。
いらっしゃい!」
名前も覚えてくれて
凄く親しみが持てる。
店内は既に7割ほど席が
埋まっている状態。
カウンターが空いてたんで
そこに向かい、まずは1杯、
『レッドアイ』をオーダー。
初めて見るグループの客が
速いピッチで飲んでいるため
マスターは忙しそうで、
アタシひとり静かに
落ち着いて飲んでいた。
(……今日、カップルが多いな)
グラスを傾けつつ、ふと思う。
ここはとても雰囲気が
良いし美味しいし値段も
良心的やし渋いお店だ。
カップルで行くんやったら
カフェの方がええって
思ってんけどって独り言。
格好のデートスポットが
近くにあるし、このBARは
一人客や友達同士の気楽な
飲み場といった感じやのに。
別に妬んでたつもりも
なかってんけど
しばらく恋人が居てへんから
結構意識してたんやって
思い至って、内心渋面になった。