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 新しいエネルギー基本計画の議論を経済産業省が始めた。再生可能エネルギーをどこまで活用するのか。石炭や原子力への依存をどう抑えるのか。今の計画に縛られず、大胆に見直すべきだ。

 エネルギーを巡る環境はここ数年、激変している。にもかかわらず2018年につくった現行の計画は、15年に経産省が決めた電源構成の目標を受け継いだ。その結果、国内の現実とも、国際的な潮流とも、かけ離れたものになっている。

 現計画は再エネを初めて「主力電源」と明記したものの、30年度の全電源に占める比率は22~24%に据え置いた。同時に「安全が確認できたものは再稼働」する原発で20~22%を賄うとした。

 現実に目を向けると、国際エネルギー機関(IEA)が集計した今年1~6月の国内の電源別発電量の速報値で、再エネは前年より2割増えた。コロナ禍による経済低迷で総発電量が減ったことも重なり、割合では23%と30年度目標の範囲に達している。安全性への懸念が根強い原発は6%にとどまる。

 脱炭素に向けた動きも世界で強まるばかりだ。50年までに二酸化炭素排出の実質ゼロ達成に賛同した国・地域は120を超えた。一方、日本政府は今春、5年前にまとめた温室効果ガスの削減目標(30年度に13年度比26%減)を据え置いて国連に提出し、国際的に批判を浴びた。

 梶山弘志経産相は7月、非効率な旧式石炭火力を30年にかけて段階的に減らす方針を表明。洋上風力を推進する官民協議会も発足させた。菅首相は来週、初の所信表明演説で50年に温室効果ガス実質ゼロの目標を掲げる方針というが、次期エネルギー基本計画で、その裏づけになる政策を強化する必要がある。

 脱炭素の手段として経産省原発の活用も掲げるが、世論の反対もあって実際には再稼働は進んでいない。安全対策コストの上昇で、経済合理性にも疑問符がつく。依存度をさらに下げ、将来の原発ゼロを見すえる計画を打ち出すのが責任ある態度ではないか。

 石炭にも原発にも依存しない社会をめざすためには、天候に左右される再エネを、真に主力として頼れる存在にすることが求められる。送電網の使い方の工夫や、蓄電池など電気をためる技術の革新に目を配ることが欠かせない。

 電力やガスでは市場の自由化も進んでいる。そんな中でも、エネルギーの安定供給をどう果たしていくのか。次期計画では、あるべき将来像を大ぶりに描き、その実現を促していく道筋を示さねばならない。

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