大学生と大麻 その害を甘くみるな

2020年10月23日 07時37分
 東海大硬式野球部の寮で複数の部員が大麻を使った疑いが浮上している。大麻事案が続く大学スポーツ界では、新型コロナウイルスによる影響も指摘されるが、その危険性を一層周知すべきだ。
 全日本大学選手権を四度制した名門、東海大野球部。発表によると、複数の部員が「興味本位で大麻を使用した」と話し、大学は野球部に無期限の活動停止を命じた。神奈川県警は大麻取締法違反の疑いで捜査を始め、大学は調査結果がまとまり次第、部員や監督らを処分する。
 大学スポーツ界では、日本大ラグビー部員が一月に都内で大麻を所持したとして逮捕。近畿大は今月上旬、サッカー部員の五人が大麻を使用したと発表した。新型コロナのまん延で思うように練習や試合ができず、心に隙が生まれた可能性が指摘される。確かに東海大は首都大学リーグの春季戦が中止となり、秋季戦は試合数を減らしていたし、近大の部員は「新型コロナで暇になり、興味本位でやった」と話したという。大学スポーツ協会は来週、薬物対策として指導者らの研修会を開く。
 警察庁のまとめによると、大麻事犯の二〇一九年の検挙数は四千三百二十一人で、五年前から倍増。二十代以下の若者が全体の59%を占める。二〇年上半期は前年同期比9%増の二千二百六十一人で二十代以下は69%に達する。大学生は一五年の三十一人から、二〇年は上半期だけで百十六人に上り、広くまん延しているようだ。
 背景に会員制交流サイト(SNS)の普及が挙げられる。元厚生労働省麻薬取締官の瀬戸晴海さんによると、大麻はSNSで「草」や「野菜」などの隠語で呼ばれ一グラム五千〜七千円で取引されており、覚醒剤の十分の一程度の価格で手に入るという。
 海外の一部には合法化した国や州もあり、「害がない」「依存性が低い」などの誤った情報が若者世代にとどまらず伝わっている。瀬戸さんによると、大麻に手を染めた若者の三割は覚醒剤など深刻な薬物の乱用に結び付く。ゲートウエー(入り口)ドラッグと呼ばれるゆえんだ。
 大麻にはテトラヒドロカンナビノール(THC)という成分が含まれ、酩酊(めいてい)感や幻覚をもたらし、乱用は精神疾患につながる怖さがある。暴力団などの資金源にもなる。
 コロナ禍でのストレス発散など言い訳にならないし、軽い気持ちで手を出すのは禁物だ。

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