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むすびに



 わたしは、第一作「千代鶴是秀の系譜」、第二作「東京墨壷の系図」、そして第三作目として「東京の忘れられた鑿鍛冶名人」を書いて来ました。第一作は友人からの要望でありましたが、第二、第三は、わたしの長男の智雄が当店のホームページを立ち上げたのが契機でした。
「正芳」 追入れ鑿 一組
 時代の急激な変化と共に、忘れ去られようとしている、かつて東京の墨壷堀り名人や鑿鍛冶名人といわれた人たちを、ホームページに載せて、世にその名を知ってもらうと共に、その名を後世に残すことが、大工道具全盛期の後半に多少なりとも拘わり、関係者の多く「正芳」 追入れ鑿 一分 裏もすでにこの世を去った現在、昔のことを知っている最後の世代となった65歳のわたしの責務であると思ったからです。幸いなことに、わたしは20代の頃から資料の収集や関連文献を読んだり、また関係者たちから話を聞くなどして来たことが、書き上げることを容易にしてくれました。特に二代目正芳の湯沢氏が70歳にもかかわらずお元気で、いろいろとお話をお聞きすることができたことは大変幸運であったと思います。

 わたしは三部作で東京の大工道具造りの名人たちについて書き上げましたが、地方には時代の流れの中にいつしか埋もれ、忘れ去られてしまった多くの大工道具造りの名人たちが存在します。郷土の関係者がその人たちのことを掘り出し、後世にその名を残していくことを望みます。
左 「正芳」 追入れ鑿 一分  右 「正芳」 追入れ鑿 刻印


                      平成20年6月吉日 記す

                           (有)スズキ金物店
                           代表取締役 鈴木 俊昭



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