美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい! 作:煉瓦
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煉瓦、Vtuberになったってよ
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ぐだぐだ配信しかしてないけどね
それはそれとして煉瓦さん最強に可愛い
【紅葉煉瓦のYou Tubeチャンネル】
#EX まつきり海へ行く
「そうだ、海へ行こう」
あるてま本社ビルにて、2期生の夏コミ感想動画を撮り終えた後のこと。
三々五々と解散する後輩たちを見送りながら、来宮きりんは唐突に言った。
隣で、とぼとぼ去っていく黒猫燦に手を振っていた世良祭は胡乱な目で来宮きりんを見た。
「海?」
「そう、海。せっかくの夏なんだからやっぱり海に行かないとね!」
よく分からない理屈だった。世良祭は首を傾げた。
そも世良祭は完全にインドアな人間だ。
大学で同じ講義を受けている人間からカラオケ、キャンプ、BBQと色々誘われるがその全てを断り、家でピアノを弾いたり音楽を聴くのが趣味な大学生だ。
だから仲良しの来宮きりんが海へ行こう、と言ってもその感性が理解できなかった。
「海は、あつい」
「えー、夏だよ? 海だよ? ほら、海の家でかき氷食べるのとか美味しいよ?」
「かき氷……」
ごくり、と喉が鳴った。
何を隠そう、世良祭は食べることと歌うことが何より好きだった。
昔、夏の終わりに家族とお祭りに行けば表情は変わらずとも内心ウキウキして出店巡りに精を出していた人間だ。
そんな世良祭だからこそ、海の家のかき氷という言葉はとても魅力的に聴こえた。
わざわざそんな言葉をチョイスした辺り、来宮きりんも世良祭の扱い方を心得ている、と言ったところか。
「ヘイ彼女、海行かないかーい?」
「……よきにはからえ」
そんなわけで海へ行くことになった。
◆
「ところで水着ある?」
「ない」
「じゃあ今から買いにいこー」
それぞれマネージャー、スタッフに挨拶を済ませて外へ出る。
冷房の効いたエントランスホールから外へ出るとムワッとした熱気が一気に襲い掛かってきた。
「暑い……」
「湿度かな、凄いよね。もしかしたら夕立来るかな?」
「帰ろう」
「えー、今日買って明日行くんだよ!?」
「……聞いてない」
「今言った!」
やけに自信満々の表情に世良祭は一つ溜息を吐いて、諦めた表情で歩き始めた。
しっかり者の来宮きりんが、意外とノリが良くて行き当たりばったり思考なのは決して短くはないあるてま生活で重々理解してきた。
だから無駄な問答を繰り返すより、諦めて従うのが一番だと理解している。
「凛音ちゃん? 水着売ってる場所分かってる?」
「……知らない」
「やっぱりねー、だってそっち駅と真逆だよ」
「なん、だと……」
ここで世良祭──結月凛音の為にフォローしておくと彼女は決して方向音痴ではない。
ただ土地勘が無いのに無計画に突き進んでしまうだけだ。
都会の喧騒から逸れないように、しっかりと手を引かれながら駅の方向へ歩いて行く。
来宮きりん──七星七海の足取りに迷いはない。
「ついたー」
「おー」
駅前のファッションビル、その水着売り場でお互いの水着を選ぶことになった。
と言っても既に時期は8月の半ば。
そろそろ水着シーズンも終了するとのことで、幾つかの水着がセール価格になっていた。
「七海は黄色?」
「んー、黄色って派手じゃない? そんな凛音ちゃんは紺色とかどうかな?」
「暑そう……」
「いやいや紺色は暑くないって。ほら、スクール水着だって紺だよ? 定番色!」
「むぅ、一理ある」
結月凛音、今どきの大学生にしては珍しく、プライベートで水着を持っていない系女子である。
生まれてこの方、水着なんてのは学校の授業でしか着たことがない。
だから普通の女子大学生なら知っている常識すら、結月凛音は持ち合わせていない。
「んー、フリルとかパレオの方が落ち着いてるから良いと思うんだけど、凛音ちゃんはスタイル良いからシンプルにビキニも捨てがたいなぁ」
「あまり派手なのは、苦手」
「どうしよっかなー」
「七海、七海」
考え込む七星七海の服の裾をちょいちょい、と引っ張りながら世良祭は一枚の水着を見せてきた。
「これ、七海に似合う」
「えぇ……、これ紐だよ凛音ちゃん」
それはストリングと呼ばれる、後ろから見ればただの紐を水着にした超過激なものだった。
これじゃあ本来隠すべき個所を隠すことは出来ないし、仮にこれを着て海水浴場へ行けば痴女認定は間違いないだろう。
幾ら七星七海がノリの良い性格でも、これを着る勇気は持ち合わせていなかった。
「凛音ちゃん、そんな期待に満ちた目で見られても私は着ないよ」
「似合う」
「似合うとかそういう話じゃないんだよねー」
「試着、しよう」
キラキラとした目で見つめられて、思わず七星七海はウッとたじろいだ。
この目で見られると思わず甘やかしたくなるのだ。
しかしこれはないだろう、と手に持った水着をぺローンと広げる。
「紐、だねー」
きっと結月凛音は下心抜きに、好奇心、物珍しさから着てほしいのだろう。
それが分かっているからこそ、思わず試着ならいいかなぁ……と意思がぐらつく。
「いやいやいやないない。そもそも水着の試着って色々マナーがうるさいからね。こんな紐は試着出来ないんじゃないかなって」
「むぅ……」
事実、試着室の横には色々と注意書きのようなものが書き記されていた。
それを認めた結月凛音は渋々と言った様子でこの場は引き下がってくれた。
しかしその目は虎視眈々と隙を伺っているようで、いつ買い物カゴに勝手にあぶないみずぎを入れられるか油断出来たものではない。
「たまには野外で配信とかしたいねー」
「海で配信……?」
「いいね!」
二人は次第にノリノリで計画を立てながら、引き続き水着を物色する。
結局、七星七海が選んだのはオレンジ色のホルターネック・ビキニ、結月凛音が選んだのは紺色のフレア・ビキニだった。
ここでしっかり者の七星七海は忘れずにビーチサンダルも買っておく。
これを忘れると当日文字通り痛い目を見るのだ、主に足裏が。
「いやぁ良い買い物をしましたなぁ」
「本当に明日行くの?」
「もちろん! 凛音ちゃんはいや?」
「……嫌ではない」
最初は若干面倒に思っていた結月凛音だったが、準備をしているうちに楽しくなってきたのは事実だった。
しかし気恥ずかしさからそれを素直に伝えられず、ちょっと斜に構えた返答になってしまった。
とはいえ七星七海も、結月凛音のそんな性格は承知の上で、妹を見守る姉のように微笑ましい気持ちになっているのだが。
必要なものを一式揃え終えてファッションビルから出る。
さて、これからどうするか……といったタイミングでぽつ、ぽつ、と雨が振り始めた。
「あー、やっぱり降ってきた」
夕立が来そう、という予感通りに雨脚はみるみる勢いを増していく。
この分ならコンビニで傘を買ったところで物の役にも立たないだろう。
幸い、ファッションビルからは屋根伝いに駅まで行くことが出来るので雨に濡れる心配はない。
「これじゃ今日はお開きかな」
「ご飯は?」
「ん、そうだね。ご飯は食べて帰ろうか。何か食べたい?」
「肉」
即答だった。
迷いなく結月凛音は肉が食べたいと言った。
「お肉、つまり焼肉かな? けど華の女子大生が2人集まって焼肉っていうのも」
「華の女子大生……?」
「凛音ちゃーん? どうしてそこで疑問が浮かぶのかなー? んー?」
「七海、こわい」
顔はニコニコ、空気はひんやり、七星七海の圧に思わず屈しそうになる。
「じゃあ居酒屋。食べ物たくさん」
「間違ってはいないけどなんとなく否定したい気持ちに駆られちゃうね……」
それから暫く、七星七海はスマホで駅からアクセスできる飲食店を調べた。
結果的に少しお高めの焼肉屋に行くことになったが、お洒落で女性客も多くて満足の行く食事になった。
しかし高い部位ばかり注文する結月凛音を前に、化粧室でコッソリお財布のお札を数えたのは内緒である。
◆
「凛音ちゃん! 海行くよ海! 起きて起きてほら早く!」
「んぅ……ぐぅ………」
「凛音ちゃん!?」
騒々しくアパートの扉を開き、七星七海がやってきた。
現在時刻は早朝5時である。
外は既に白ばんでいるとはいえ、世間はまだ就寝中の時間である。
幾ら結月凛音が寝るのが好きな人間とはいえ、この時間にまだ寝ていることを誰が責められようか。
「きりん、うるさい………」
「凛音ちゃん!?」
「すやぁ………」
「凛音ちゃん!?!?」
きっと夢と現実の境界線が曖昧なのだろう。
一言二言文句を言うものの、一向に起きる気配はない。
いっそのこと、ここでゲリラドッキリ配信でもしようかな、とVtuber来宮きりんとしての思考が鎌首をもたげるが、流石に本名で呼ばれてしまっては事が事なので自重する。
はぁ、とため息一つ。
仕方ない、とばかりに七星七海は勝手知ったる我が家とばかりに冷蔵庫を物色して朝食の用意を始める。
この食いしん坊のことだ、いくら眠くても朝食の匂いにつられて起きてくるだろう。
「むぅ、ごはん……?」
「おっはよー、凛音ちゃん。お寝坊さんだね?」
「……まだ6時」
お味噌汁を用意して、焼き鮭と納豆、そして白米。
これに後一品ほうれん草のおひたしでも用意できれば完璧だったのだが、まあ贅沢は言わない。
純和風の朝食の完成だ。
「だめだよー凛音ちゃん。この鮭前に来たときからそのままにしてたでしょ」
「……それは七海が勝手に買ってきたやつ」
「はぁ……。私が作らないとちゃんと料理しないんだから、だめだよホントに。一人暮らしなんだからさー」
「お母さんみたい」
「ッ──ごほっごほっ」
思わず白米が喉に詰まって咳き込む。
いや、確かに口うるさく言ってしまったがそれにしてもお母さんみたい、は不意打ちである。
麦茶を流し込みながら、はむはむと白米に焼き鮭を載せて口に運ぶ凛音を見る。
ほんと、この子はマイペースだよなぁ……と、思わずため息が漏れた。
「それにしても」
食器を洗いながら、結月凛音がベッドでくつろぐ七星七海へ声をかける。
「こんな朝早くから海?」
ポンポン、と枕を叩きながら七星七海が「んー」と空返事を返した。
「早いほうが空いてるでしょ?」
「まあ、たしかに?」
「それにお昼だと暑いよー」
「暑いのは、いや」
と、言っても海水浴場はちゃんと遊泳時間が決められていることが多い。
それを知らない七星七海ではないが、実のところ折角の夏季休暇なんだし少しでも長いこと結月凛音と一緒に遊びたいというのが本音だった。
しかしそれを素直に言うのは気恥ずかしいので、そっと胸に秘めるだけである。
「さて、片付けも終わったしれっつごー!」
「おー」
水着、ビーチサンダル、バスタオルに日焼け止め。
他にも色々カバンに詰め込んでアパートを後にする。
つぶやいたーに「これから祭ちゃんと海!配信もするよ!」と呟いて、スマホをポケットに仕舞う。
東京からアクセスできる海水浴場はそこそこ距離が離れている。
こんな時に車でもあれば便利なんだけどなーと思いながら、次の長期休暇の時は車の免許を取ろうと七星七海は心に誓った。
がたんごとん、と電車に揺られ。
時間的にも人が増え始めた頃。
ようやく海近の駅へたどり着いた。
「見てみて、海だよ海!」
「青い」
「海だからね!」
まあお察しの通り、七星七海は名前に海がつくように海が大好きである。
別に泳ぐのが特別好きなのではなく、ただ見ているだけでも満足できるタイプの人間だ。
今回海へ誘ったのも、せっかく仲良くなれた友達と大好きな場所でひと夏の思い出を残したいと思ったからだ。
「早速着替えよっか」
「かき氷」
「あとでねー」
ウキウキ気分で更衣室へ向かう。
とはいえ、浮かれててもしっかり者の七星七海である。
何も考えず着替えようとする結月凛音を一旦抑えて、更衣室をぐるっとチェック。
こういう場所にはよからぬ考えを持った人間がたまーにいるのだ。
何も問題無しと判断して、ようやく着替え始める。
余談であるが、結月凛音は自宅から水着を着てこようとした。
それをするとどんなに注意しても絶対に下着を忘れるから、とストップされていた。
「よし! 配信しよう配信!」
「おー。……ところで海でどうやって?」
「え……、あっ」
事ここに至り。
水場で配信は土台無理では? と気づいてしまった。
いや、幾らスマホで配信をすると言っても防水にも限度がある。
お風呂ならともかく、海水は一発アウトだろう。
「えーっと、配信は中止!」
「あ、はい」
つぶやいたーで「配信は帰ってからに変更!」と呟いておく。
いやぁ、しっかり者の来宮きりんがとんだ大失敗である。
その分、帰宅後の感想配信で語れることを沢山作らないといけないな、と思った。
「よし、今日はお泊まりだね」
「え?」
「なんでもないよー」
明日の予定まで想像を膨らませて、緩む頬をパンっと叩いて引き締める。
──あぁ、夏は終わりそうでも、思い出作りはまだまだ終わらない。
「新人Vtuber紅葉煉瓦のツイッター。よく他のVの人に空リプしてます。Vtuberってなんなんだろう…」
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