全部で18種!「ティラノ軍団」が世界中で発見されている!

小林快次先生の新連載 第2回!
今月から始まった小林快次先生の恐竜連載。前回は、世界で最も有名な恐竜化石の産地であるヘルクリーク層の化石の分布から、じつは巨大隕石が恐竜を絶滅させるよりも前にティラノサウルスの数は減少していたということを紹介しました。

絶滅の本当の要因はなんなのか? はたして巨大隕石を目撃していたのか? ティラノサウルスにはまだまだ大きな謎が残されているのです。

ティラノサウルスは1種類だけじゃない!

そんなわからないことだらけのティラノサウルスですが、研究は着々と進んでいます。そもそもティラノサウルスとひとくちにいっても、その種類は1種類ではありません。今日では、ティラノサウルスの仲間と目される種が、世界中に分布していたことがわかっています。

もちろん、恐竜の時代に戸籍は存在しませんから、どの種がティラノサウルスの仲間に属し、どれが属さないかという判断は非常に困難。そこで私たち恐竜学者は、ティラノサウルスに関する家系図を描き、「ここからここまでがティラノサウルス!」と勝手に決めています。

 

しかし、人間が黒髪なら必ず日本人であるとは限らないように、その定義は簡単ではありませんし、判断する人によってもティラノサウルスの仲間に入れるメンバーは変わります。

そこで2010年、「ティラノサウルス類の古生物学」と題された、それまでのティラノサウルス類の研究をまとめた論文が発表されました。そこに登場するティラノサウルスの仲間は18種。ここでは仮に、それらを「ティラノ軍団」と呼びましょう。

そしてこの軍団は、進化の程度によって、「一軍」「二軍」「三軍」に分けることができます。

まず、最も進化しているティラノ軍団一軍メンバーは以下の通り。

・ティラノサウルス(カナダ西部とアメリカ西部)
・タルボサウルス(モンゴル南部)
・ダスプレトサウルス(アメリカ西部とカナダ西部)
・アリオラムス(モンゴル南部)
・アルバートサウルス(カナダ西部)
・ゴルゴサウルス(アメリカ西部とカナダ西部)

この一軍メンバーは、「ティラノサウルス科」と呼ばれるものです。