グーグル提訴 巨大IT規制の契機に
2020年10月22日 07時49分
米司法省がグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。これは巨大ITの規制に米国が大きく踏み出したことを意味する。提訴が国際的な規制強化の契機となることを期待したい。
米司法省は、米国のIT大手グーグルがネット検索と検索分野の広告市場を支配し、公正な競争を妨げたとして米連邦地裁への提訴に踏み切った。
具体的には、端末メーカーに対して、自社の検索サイトを標準設定するよう要求したことなどが反トラスト法違反に当たると判断したとみられる。
今回の提訴は、巨大IT企業の規制に消極的な姿勢を示していた米政府が、方針を大きく転換したことを意味する。
グーグル側は反論しており、裁判は長期にわたる見通しだが、裁判の結果を待たずに規制が強化されることも予想される。
GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる巨大ITはいずれも米国企業だが、国境を越えて膨大な個人情報を蓄積し、その情報が大量に漏えいしたケースもあり批判が高まっていた。巧妙な節税や幹部の高額所得が、経済格差を助長しているとの指摘もある。
今月六日には米下院司法委員会がGAFAの市場独占に警鐘を鳴らす報告書を提出した。米政府の姿勢転換の背景には世論の変化や議会の動きがあったに違いない。
GAFAにはライバルを買収でのみ込み市場を支配する傾向がある。IT企業の核心部でもある電子取引には国境の概念がなく、それが国への納税意識の希薄さにつながっているとの見方もある。
検索機能などは原則無料で、消費者が情報や市場の独占の弊害に気付きにくいことも問題だ。
巨大IT規制を巡り、日本は米国に先んじて独禁法の活用を模索している。電子商取引でIT企業が市場参加者に優越的な地位を利用して無理な取引を押し付けていないかどうか、公正取引委員会などが監視を強めている。
欧州でも英国やフランスなどがGAFAへの課税強化を進めている。今回の提訴が追い風となって日米欧の足並みがそろえば、GAFAに対する規制は世界で動きだすはずだ。
IT企業は幅広い分野で生活の質向上に役立つが、一部企業が利益や情報を独占することは許されない。公平なIT産業の再構築に向けて、日本も国際連携を図り、積極的に貢献すべきである。
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