2011年11月07日
■松本人志・宮本茂スペシャル対談 テキスト起こし その1 ~前半30分~
NHK BSプレミアムにて放送された「松本人志大文化祭」。
この中でのスペシャル企画として松本人志がぜひ会いたいという人物との対談。
その人物とは任天堂のマリオシリーズ、ゼルダシリーズなどの生みの親、宮本茂(58)さんでした。
これをテキストに起こしてみました。
テキストに起こす際に、実際に映像を見るのとでは、
ニュアンスが若干違うように受け取れてしまう場合がある点をご了承ください。
あと、省いている言葉もありますのでご注意を。
(書かなくても話の流れに影響のない小さな言葉など)
ミスなどがあればご指摘ください。
このページは前半30分です。
後半30分はこちら。
・・・後ほどキャプチャした画像を追加しますorz
11/11追記 :テキスト起こし完了。
この中でのスペシャル企画として松本人志がぜひ会いたいという人物との対談。
その人物とは任天堂のマリオシリーズ、ゼルダシリーズなどの生みの親、宮本茂(58)さんでした。
これをテキストに起こしてみました。
テキストに起こす際に、実際に映像を見るのとでは、
ニュアンスが若干違うように受け取れてしまう場合がある点をご了承ください。
あと、省いている言葉もありますのでご注意を。
(書かなくても話の流れに影響のない小さな言葉など)
ミスなどがあればご指摘ください。
このページは前半30分です。
後半30分はこちら。
・・・後ほどキャプチャした画像を追加しますorz
11/11追記 :テキスト起こし完了。
<出会う松本人志と宮本茂>
宮本茂(以下、宮):こんにちわ。
松本人志(以下、松):あ、松本です。
宮:宮本です。
松:わざわざありがとうございます。
宮:いやこちらこそ。
<席に着く二人>
松:すみません、よろしくお願いいたします。
宮:こちらこそよろしく。
松:あのー、早速なんですけど。
色々その、僕は自分ではゲーマーとは思っていないんです。
奥さんにはあなた十分ゲーマーよって言われるんですけど、
ゲームセンターにそんな行くわけでもありませんし、常に何かゲームを持ち歩いているわけでもないし。
携帯(電話)で最近流行っている携帯のゲームもやらないんですけど。
のめり込んだゲームが10タイトルくらいはあって、
当然その1タイトルにはパート2やパート3もあったりするんです。全部で10タイトルくらいで。
ただそれはとことんやり込んじゃうんですよ、やり込んでやり込んで。
その10タイトルのうちの約半分以上が、ホント数年前に気付いたんですけど宮本さんの(ゲーム)でした。
宮:そうですか(笑顔で)。ありがとうございます。
松:当然、宮本さんの作品を選んでやってたんじゃなくて、後で気づいたら宮本さんのだった。
「なんだコレは」と思って。あーこの人凄いなって。で、なんかもう、嬉しくなっちゃって。
凄い人に会うと嬉しいですよね。この人ってどんな人なんやろうって。
いや、私生活は全然いいんですけど、ちょっと脳みそをお伺いしたいなーっていうかそんな感じになったんですよ。
宮:ガッカリされたらどうしよう。(笑)
松:いやいやいやいや!!
それがこう、ちょっとお会いしたいなと思った最初なんですけど。はい。
あのなんでしょうね。
気が付いたら自分のコントローラーを宮本さんに、僕自身動かされていたみたいなそんな感覚になりましたね。
どこから来るんでしょうねあの辺の発想というか。
宮:僕はね、えーと、任天堂に入ったんですよね。その時は別にゲームがいっぱいあったじゃなかったのでゲーマーでもなくて。
それからスペースインベーダーとかパックマンとか出てきて、同じくとことん遊んだんですよね。
とことん遊んでいるうちに会社の中ではゲームをよく知っている人になって。
それ以来、自分はずーっと作っているゲームで遊ぶのでね結構一生懸命・・・
松:あの、僕が凄いなと思うのはやっぱり凄く頭のいい人だと思うんですよね。
凄く頭のいい人のはずなのに、ものすごく幼稚な部分もちゃんと残してらっしゃって、
その自分もこういう仕事をしてて感じるんですけど。いや僕はもともとアホですけど。
いかに幼稚な部分を残しながら技術を取り入れながら表現していくかっていうのはすごく難しくて。
成長しすぎないように努力するというか、あのピクミンを見ていると本当にそうで。
すごく子供のままで(笑)。ピクミンは本当に最高ですね!
ピクミンのあの発想、あの子供の発想から、でも技術はしっかり付いてきて。
あのーなんて言うんでしょう?あの辺の幼稚さを保つというか、どうお考えですかね・・・?
宮:いや、自分自身遊びながら作るんですよね。
松:はい。
宮:あーあの、ある意味考えて作るんですよ、計画的に。
けど、実際作り始めると遊びながら作っていくので、だからそのままなんですよ。
子供のころから遊んでいた事とか色んな事が。
ただ、ちょっとずつ技術的な背景が分かってきたり、一緒に作る人との付き合い方が変わってきたり。
自分自身あんまり昔と違う事をしていると思わなくて、ずーっと昔と同じことを続けてる間に。
松:うーん。(唸り声)
宮:だから自分の作った物が、松本さんみたいに遊んでもらっている人がいつもすごい気になる。
松:あ、人の事ってやっぱり気に・・・?
宮:けっこう気になるんです。
人に合わそうと思うんじゃなくて、どう見て、僕(の見ている視点)と同じように見て遊んでほしいんですよ。
自分が作りながら見てる通りに遊んでもらえれば理想なんで。
松:「心技体」ってよくスポーツでいう・・・、技術と心と体とっていうその部分で、
その心って「童心」、この世界でいうと僕は「童心」が大事で、
そこに技術とか体力が合わさって面白いことが出来ればいいなーって思うんですけど。
それを宮本さんがまさにやってらっしゃるなって思うんですよねー。
宮:それしかでき・・・あ、あのね、会社に入ってオトナになっていく途中で、
けっこう技術とかの方が優位になってくる・・・
松:はいはい。(頷く)
そうですねぇ・・・。
宮:それが怪しいと思うようになったんですよね、どこかのキッカケで。30歳くらいかで。
それまではけっこう見せびらかす、色んな事したくなってたんですよね、育ち方からして。
30くらいになると少し、そういうものが怪しく見えてきたり。
で、「みんながそっち行ってるから」っていうのには
自分はそっちに行きたくないっていう方なのを思い出したりしてる間に、割と本音で作るというか。
松:うーん。(唸り声)
宮:結果は・・・、あ、結果関係なくじゃないですよ。
結果はすごい求めてるけども、「割と本音で作ろうや」っていう。
で、さいわい周りに、自分と一緒に作っているメンバーの中に色んな人がいて。
これがまたありがたいんですよね。
松:そういう人が集まってくるんですよねぇ。
宮:はい。
自分がクリエイティブでもあるけども、その人もクリエイティブですよね。ほとんどチームの。
ただそれをこう、どう作ってるかというと、自分が居いひん(居ない)とそうならへんやろうなーっていうのだけにはしたい、
っていうところで、自分がプレイヤーでいるのが一番わかりやすいですよね。
松:あー・・・。
いや、僕はまあ、僕にはできないですけど、すごく羨ましいお仕事やなぁ、と思いますねぇ。
宮:いやいやいや。(笑)
松:いやいや、僕はホント、表に出ちゃった事がすごくイヤで。
できれば表に出ずに自分のやりたい物がやりたかったですねぇ。
松:あの、マリオの・・・64(ロクヨン)のマリオも宮本さん・・・?
宮:そうですね。
松:ですよね。
宮:マリオは全部、初代から。
松:(嬉しそうな松本)
あのー、64のマリオ、僕がやり出した時に・・・すいません!ちょっと気持ち悪がられるかもしれないですけども、
もうね極端な話、あの世界からね、出たくなくなりましたね・・・。
宮:(笑)
松:あの世界にちょっと僕はもう、しばらく入り込んでしまって。(笑)
あの、極端な話、全くあれと同じ世界を創ってやろうかなと思うくらいに。(笑)
・・・入り込みましたね。
宮:箱庭を作ろうという感覚で。
松:あーああ、そうですね!
宮:子供の頃に遊んでた場所と同じ事を新しくまとめて、合理的にまとめて箱庭にする。
徐々に3Dになってきてどんどんそれがやりやすくなってきたんですよね。
あの時点で初めて立体にして。
松:革新でしたねー。いやー、素晴らしいですよ。
松:あのー、僕どうしても聞きたいんですけども、答えられない部分はしょうがないんですけども。
ホントに勝手な、個人的な質問なんですけども。
ピクミン3(スリー)は無いんですかね?
宮:(笑)
松:(笑)
宮:これ、実はね、その筋ではっていうか業界筋では毎年アメリカで夏前にしゃべる機会があって、
作ってる作ってるって言い続けて、今年やっと「次のハードで作るからね」っていうのを正式に言ったんですよ。
だから・・・。
松:(喜びながら笑う松本)
宮:まだ、いつとは言ってないですよ。(笑)
松:(笑)
すみません、これもうホント僕が無茶苦茶うれしいんですけど!そうですか!
宮:はい。(笑)
もう5年間ちょっと作っては止め、ちょっと作っては止めってことを繰り返してて。
松:いやー、3いつ出んねやろー、いや、(3は)ないのかなーって思って、
また最初からやろうかなーって今思ってたところなんですけども。そうですか!
宮:はい。やはりやります。やってます。
松:あのー、これね僕が周りから言われる事なんです。
僕は、これまた素人みたいに宮本さんにそういうこと言いたくなるんですけど。
どうしても・・・、例えば、
自分がやっていたコントをもう一回やってくれ、別にキャラはそのままで台詞さえ変えてくれればええやんけ、
って好きな人は言ってくれるんです、でも僕はそれをやりたくなくて。
プラス何かが無いと絶対やる意味がないって僕は思うんです。
そんな事言っている癖に、ゲームに関しては、ピクミンに関しては宮本さんに
「もう同じでもいいから、もうステージ違いでもやってくれ!」
って僕は思うこの矛盾さ!(笑)
宮:うんうん。(笑)
松:あー、やっぱファンは勝手なもんやなーって思うんですよ。
宮:それは・・・
松:ピクミン1のときは登場人物1人なんです。で、ピクミンも3色なんです。
でも(ピクミン)2になってから博士と助手と2人になって、ピクミンも5色になる。
(ピクミン)3はプラスそこに何かを、たぶん宮本さん乗せてきはると思うんですけど、
あ、もちろん乗せてくれるのはうれしいですし、そうなんですけど、
でもファンにしたら
そんなに込み入らなくても、もう前のままで、ステージさえ替えてくれれば僕らは十分楽しめるんですけどね。
宮:(笑)。うーん、そう・・・
松:すみません。(笑)
僕、訳分からんこと言って。
宮:いやいや、ありがとうございます。(笑)
松:いや、でもホントそうなんですよね。
宮:いや、なんか仕事の悩みってそれですよほとんど。
あの、期待に応えたいっていうのと、一緒じゃ嫌だって言うのと。
松:一緒じゃ嫌なんですよね。
宮:で、どっかの時点でオッケー出すんですよね、自分の中でこれでオッケーっていう。
松:まあ折衷案じゃないですけども。
宮:それがさっき言ってる、その、今まであった物を強化していくっていう伸ばし方。
補強していく・強化していくって、これは割と簡単なんです。
そうするとどんどん複雑になっていったり重くなったりするので初めての人には近寄りがたいものになっていく。
松:はい。(短く)
宮:ただ、深くっていうのを求めている人も、深いものを渡したらオッケーってわけじゃない、って思うんですよ僕は。
だから、深いって思っている人にいかに、そのちょっと外した所での新しいもの、
「あ、これもオッケー」って言ってもらえるのがすごい好きで。
これでオッケーっていうもので初めての人よりもオッケーなものを探すと、これがけっこう迷走するんですよ。
積み上げるだけならあと2年あればできるんですけどもね。
松:うーん。(唸り声)
宮:ただ、それは松本さんの仕事を見てても、すごいそういう風に見えます。(笑)
松:いやー、でもまあそうですねー、答え出ないですもんねー。
宮:というかね、お笑いとかそういうのって、割と新しいもの見せてくれ、って思う事で。
自分で作っているゲームの方は「いやこれ、もっと豪快だったら」
とか遊んでる自分がもっと豪華なものを求めていくので、ついついハマるんですよね。そちらの方に。
他のメディアのもののほうが「またその手使うの?」とか思いながら、ひねくれて見てて。(笑)
松:あの、他のゲームは、やりはるんですか?
宮:一応、チェック程度にはするんですけど、本当、今ゲームっていうのは自分の作ってるものを遊ぶだけでも
かなりの生活の中(の時間を)を占めるんで。
松:そうなってきますよねー。
宮:どっちかというと、他のメディアのものをパラパラパラパラと。
僕は深く、造詣(ぞうけい)の深いメディアっていうのは無くて、パラパラパラパラ単発的に見るんですけど、
何か「ああ、ここでもこれ悩んでるかー」とか「ここで安く落ちてるなー」ばっかり見ながら。(笑)
松:(笑)
宮:自分の仕事と照らし合わすってのが多いから。(笑)
松:僕はまあその、例えば映画とかゲームとかそうなんですけど、食べ物もそうですね、
最初に口にしたときに、パッとちょっとやったときに、
一回もう、しんどくなって止めちゃうんですよ。
宮:うん。
松:で、三日・四日ぐらいしたときに「あれ?そんなに悪くないんじゃないか?」
って、どっかでフッって何か脳に指令みたいなのが来て、次やり出した時にどんどん深みに嵌っちゃうってのが
大体今までのパターンなんです。
宮:なるほど。
松:宮本さんのゲームもそれが多いですね。一回疲れちゃうんです。
ゼルダ(の伝説)も一回疲れちゃうんですけど、三日・四日したときに
「あれ?やっぱりやりたいかも」って思ったらもう止まらないですね。
あれ何なんでしょうねー。
宮:最初の掴みを大事に作ってるから・・・、けっこう最初の掴みで掴めてないのはショックですねー。
松:あ!そうですか!!
宮:けど、ホントはその、そこを見て欲しいんですよ、その先の。
あの、こっちのこだわってる部分を出来るだけ口当たり柔らかく出そうって思ってるんです!(笑)
松:そうですよね!
宮:パクッと食べてもらって「うまい!」って言ってもらえないのは悲しいんですけども、
そこはまだ負けじゃないんですよ。
松:あーそこは僕がやっぱりおかしいんでしょうね。
あのー、そうなんですよ、一回「ん?」って、
例えばラーメンでも最初食べた時「いま一つやな」と思った奴が、
意外と何回か食べてるうちにハマっちゃうみたいなことがよくあって。
僕は、宮本さんのゲームでもそれは感じますし、もっと言えば女性にも同じものがありますけどね。(笑)
宮:(笑)
松:ええ、一回「ちょっと・・・」(押しのけるような仕草)って思うんですけど
あ、やっぱり会いたいかもってなったら意外と長くいっちゃうってことがありますね。
松:あれですか、その普遍的なものを作りたいって意識が強い方なんですか?
宮:そうですね。そうあった方が嬉しいですね。
古いかとか、新しいかとか、流行ってるかっていうよりは普遍的なものの方が、
ずっと持っている物を作りたいというか、持っていることに何か意味を感じてもらえるようなゲームでも作りたいです。
松:あのー、僕はテレビの仕事もやりながら、この仕事もやりながらって、
最近すごく、普遍的なものってどういうものなんやろうって、すごく今むずかしいなーって思ってるんですね。
で、いわば、凸(デコ)と凹(ボコ)の感じかなって僕は思ってて、受け手が今まではその、すごく凹だったんですね。
で、僕らが一生懸命やる事が凸で、それがうまくカチャッって合えば、僕は何かこう、普遍的なものが生まれるんじゃないかなーって
ずーっと思ってるんですけど、最近その、受け手があまり凹じゃないんじゃないかなって・・・
だから、あんまり僕らが凸を押し付けると、何かこう上手くかみ合わない。
で、特にテレビなんかでいうと、視聴者の方がむしろ凸になってきてて、僕らが凸を押し付けると全然噛み合わないってことがあって。
すごく今そこに、どうやったらその凸と凹がうまく合うのかなーっていうのは、何か考えちゃうんですよね。
ゲームにおいて、今どうなんでしょう・・・その、ゲームを欲している人たちは増えてるんでしょうか減っているんでしょうか?
何かそういうのを考えるん・・・
宮:あのね、いや、ホントはちゃんと考えないと駄目なんでしょうね。
基本的には・・・常に減ると思ってるんですよ。流行ったものはもう必ず減ると思ってるので、ええ。
必ず減るので・・・増えてるか減ってるかっていう事はあんまり気にしない。
どれだけ呼んで来れるかっていう。
娯楽の会社っていうのはやっぱりブームを何回仕掛けられるかって事が勝負ですよね。
ところがゲームビジネスみたいのが出来てきて、なんかそのお金を儲ける仕組みが出来ると、
どんどんそこで回っていくじゃないですか。
何かそのサイクルから抜けたくて。
例えば、スーパーマリオが売れましたよね。そうすると、みんな褒めてくれはるんですよ、スーパーマリオ。
で、スーパーマリオ、いやここが凄いですね、あこが凄いですね、
っていう事の言ってくれはる事の半分ぐらいは、別にスーパーマリオじゃなくても他のビデオゲームでもやってることなんですよね。
という事は、スーパーマリオが出るまで、インベーダー以来、スーパーマリオが出るまでゲームを知らなかった人が世の中多いんです。
松:あー・・・ハイ。(頷く)
宮:それは、ゲーム作ってると、全部知っている人と付き合ってると思うので間違うんです。
松:すっごい分かります。すごい分かります。
宮:だから、その両方がお客さんには居る、っていうのを意識に持ちながら自分をどこにやってるか、
すると、スーパーマリオの時にこの、(他のビデオゲームがやっている)半分のものを取ったのはすごい漁夫の利なんですけども、
それは、そこに出てきたから初めて漁夫の利があるわけで。
次、それを作るには何をするかっていうと、たぶんここ(今までの「半分のもの」)の流れを見てても出来ないですよね。
松:(頷きながら唸る)
松:ああ、あとあの、宮本さんのその、僕チラッと聞いたのはオリジナリティへのこだわりがものすごいっていうのが
聞いたことあるんですけど。
宮:オリジナリティへのこだわりというより・・・、あの、みんながやるパターンに乗ると
それ以上のものを出さないと駄目ですよね。
独自に考えたものっていうのは、まだ仕上げる余地がいっぱいあるんですよね。
だから、みんな割と怖がるので安全な所に牌(パイ)を置きにいきますよね。
そのときは、けっこうそこにいっぱい同じようなものが置かれているので、
こう、目立つように置くのにすごく努力がいるんですよ。
でも、独自の所に行くのは危ないですけども、まだラフに置いてもまだ空いてますから。(笑)
松:(笑)
宮:そのほうが仕事楽しいんですよ。
松:(頷く)
・・・あのー、これ、もうあの、何年か前に全くおんなじ事ゆってるんですよね!(笑)
宮:(笑)
松:あの、まあホントそうなんですよね!
でも、言い換えれば少し卑怯なんですけどね、言い換えれば!
宮:そうなんですそうなんです。(笑)
松:いや、全然卑怯じゃないんですけど。卑怯と言われれば卑怯な部分ではあるかもしれないですよね。
誰も行っていない所に行くっていうのは、「あ、お前らここ分からんかー」ってどっかで言える部分でもあるので・・・。
まあ・・・そうですよね、オリジナリティってそういう事ですよね。
宮:オリジナリティって・・・そういう事ですよね。
天性のもので何かこう・・・本人の中から湧き出してくるようなものって言いますけど、
それはほっといても(放っておいても)出てくるもので。
松:うん。(頷く)
宮:やっぱり、その、人に注目されるオリジナリティっていうのは他のものとの比較ですよね。
松:でも、そうですね、宮本さんはそうは言っても、ちゃんと大衆もしっかりと掴んでおられますもんねー。
そこがすごい・・・。
宮:そこはけっこう臆病なんですよ、だから。
放っておくと、ついつい、そこ(安全な所)に牌を置きにいく方なので、
よけいに違う所に置きにいこうって、こう奮い立たす為に(奮い立たせる為に)みたいな。
特にスタッフには極端に言う。(笑)
松:それは、あの、
「宮本さんそれダメですよ」「こっち行った方がいいですよ」「こんなんした方がいいですよ」
ていう、ブレインの人がいっぱい居られるってことなんですか?
宮:いや、そうでもないですよね。ほっといたらそっち(安全な所)に行く人が多いですよね。
僕が割と奮い立たせて「こっちに行く!」って言って、みんながホントに行くと
「ちょっと危ない!!」って僕が止めに入る。(笑)
松:(笑)
宮:「それは行き過ぎちがうか?」みたいな。(笑)
松:ああ!そうですか!
宮:「もうちょっとここらでも良いやないか」みたいな。
松:あれ、俺はどうやろ・・・
宮:みたいなとこはあるんですよね。
だから、多分その距離感を調整するのがプロデューサーで、自分が居ないとそういう風には仕上がらへんやろうなって思える部分で、
他の人が見てると多分その、仕上がる位置が違うのかな、
それ以外はクリエイティブは、みんながしていますからってみたいな風にだんだんなって来ていますね。
松:はあ~、出来たらこういうテレビじゃなくて普通にあの、居酒屋でお会いしたかったですね~。
宮:(笑) そうですね。
松:やっぱりどうしても意識してしまうんで、もうちょっとこう、ぶっちゃけた話がホントはしたいんですけど。
宮:ぶっちゃけた話が・・・
松:すみません、なんか素人みたいな事なんですけど、どなりちらすことってありますか?
宮:・・・あまりないですね、たまにやりますけどね。たまに。
松:「パーン!」っていっちゃう事ありますか?
宮:たまに、他の人に見せるようにやろうかなってやったことあるんですよ。
松:どういう?
宮:えー、下の人たちがいて、中間の人がいて、僕がいるんですよね。(上に上がっていくようなジェスチャー)
下にけっこう不満が溜まったりしますよね。
その時にこう、(下に少し手を下ろしながら)一回叱って見せた方が納得するんやないか?とか思って。(笑)
松:(笑)
宮:横に並んで座って、けど、あんまりうまくいかなかったですねそれは。(笑)
松:(笑) そうですかー。
あんまキャラじゃなかったんですか。
宮:うーん、だからそれは一時あったんですけど、最近はやっぱりどっちかっていうと、
自分が言ってる意味がよく分かってもらってないときに「違うやろー」っていう事があるくらいで。(笑)
松:(笑)
宮:だから、あまりどならないですよ。だから、イジイジと言ったりする事の方が多いかも分かりませんね。
松:そうですか・・・。
宮:「いやしかしどうなんやー」みたいな事の方が多くて、あまりどならないですね。
・・・どなる?(松本の方を見ながら)
松:いや、僕も実はあの、意外とないんですよ。
宮:そうですか。
松:僕の場合は完全にお笑いの仕事なので、現場で怒っちゃうと、もう、弱っちゃうんですよね。
宮:ああー・・・。
松:あのスイッチ・・・なんでしょう、ホットプレートみたいな怒り方しか僕できないんで、
一回怒っちゃうと、もうアッツアツになると冷めるのにものすごい時間がかかって、
多分その日一日もう無理なんで、だから我慢しちゃうんですね。
で、ストレスがどんどん溜まっていくっていう、でどこかでこう「バン!」ってなっちゃうって事があるんですけど、
物づくりをしている方ってどうなのかなーって。
宮:それはね、会議とかしてると重くなりがちになりますよね、うーんとか言って。
松:そうですね。
宮:そのときに自分がそこにいると、中にいるとなかなか気づかへんですけども、人がやっているのを見てると
ちょっと笑わしたくなりますね。
松:ほぉ。
宮:やっぱり笑ってる方が結果がOK、結果が広がるんで。
自分が落として笑うとか、一緒に落としてくれる奴がいるので。
「僕ら素人ですからー!」みたいな言い方をして喜んでるメンバーが多いから
「またこんな事してしもうたわー!」みたいな事言いながら(笑)
松:(笑)
宮:関西の、
松:ノリで。
宮:ノリで。
自分一人でやってると、けっこうディレクターと1対1とかでなるとすっごく重くしてしまうんです。
それは気を付けた方がええなーって思うけども。
<<その2へ続く>>
宮本茂(以下、宮):こんにちわ。
松本人志(以下、松):あ、松本です。
宮:宮本です。
松:わざわざありがとうございます。
宮:いやこちらこそ。
<席に着く二人>
松:すみません、よろしくお願いいたします。
宮:こちらこそよろしく。
松:あのー、早速なんですけど。
色々その、僕は自分ではゲーマーとは思っていないんです。
奥さんにはあなた十分ゲーマーよって言われるんですけど、
ゲームセンターにそんな行くわけでもありませんし、常に何かゲームを持ち歩いているわけでもないし。
携帯(電話)で最近流行っている携帯のゲームもやらないんですけど。
のめり込んだゲームが10タイトルくらいはあって、
当然その1タイトルにはパート2やパート3もあったりするんです。全部で10タイトルくらいで。
ただそれはとことんやり込んじゃうんですよ、やり込んでやり込んで。
その10タイトルのうちの約半分以上が、ホント数年前に気付いたんですけど宮本さんの(ゲーム)でした。
宮:そうですか(笑顔で)。ありがとうございます。
松:当然、宮本さんの作品を選んでやってたんじゃなくて、後で気づいたら宮本さんのだった。
「なんだコレは」と思って。あーこの人凄いなって。で、なんかもう、嬉しくなっちゃって。
凄い人に会うと嬉しいですよね。この人ってどんな人なんやろうって。
いや、私生活は全然いいんですけど、ちょっと脳みそをお伺いしたいなーっていうかそんな感じになったんですよ。
宮:ガッカリされたらどうしよう。(笑)
松:いやいやいやいや!!
それがこう、ちょっとお会いしたいなと思った最初なんですけど。はい。
あのなんでしょうね。
気が付いたら自分のコントローラーを宮本さんに、僕自身動かされていたみたいなそんな感覚になりましたね。
どこから来るんでしょうねあの辺の発想というか。
宮:僕はね、えーと、任天堂に入ったんですよね。その時は別にゲームがいっぱいあったじゃなかったのでゲーマーでもなくて。
それからスペースインベーダーとかパックマンとか出てきて、同じくとことん遊んだんですよね。
とことん遊んでいるうちに会社の中ではゲームをよく知っている人になって。
それ以来、自分はずーっと作っているゲームで遊ぶのでね結構一生懸命・・・
松:あの、僕が凄いなと思うのはやっぱり凄く頭のいい人だと思うんですよね。
凄く頭のいい人のはずなのに、ものすごく幼稚な部分もちゃんと残してらっしゃって、
その自分もこういう仕事をしてて感じるんですけど。いや僕はもともとアホですけど。
いかに幼稚な部分を残しながら技術を取り入れながら表現していくかっていうのはすごく難しくて。
成長しすぎないように努力するというか、あのピクミンを見ていると本当にそうで。
すごく子供のままで(笑)。ピクミンは本当に最高ですね!
ピクミンのあの発想、あの子供の発想から、でも技術はしっかり付いてきて。
あのーなんて言うんでしょう?あの辺の幼稚さを保つというか、どうお考えですかね・・・?
宮:いや、自分自身遊びながら作るんですよね。
松:はい。
宮:あーあの、ある意味考えて作るんですよ、計画的に。
けど、実際作り始めると遊びながら作っていくので、だからそのままなんですよ。
子供のころから遊んでいた事とか色んな事が。
ただ、ちょっとずつ技術的な背景が分かってきたり、一緒に作る人との付き合い方が変わってきたり。
自分自身あんまり昔と違う事をしていると思わなくて、ずーっと昔と同じことを続けてる間に。
松:うーん。(唸り声)
宮:だから自分の作った物が、松本さんみたいに遊んでもらっている人がいつもすごい気になる。
松:あ、人の事ってやっぱり気に・・・?
宮:けっこう気になるんです。
人に合わそうと思うんじゃなくて、どう見て、僕(の見ている視点)と同じように見て遊んでほしいんですよ。
自分が作りながら見てる通りに遊んでもらえれば理想なんで。
松:「心技体」ってよくスポーツでいう・・・、技術と心と体とっていうその部分で、
その心って「童心」、この世界でいうと僕は「童心」が大事で、
そこに技術とか体力が合わさって面白いことが出来ればいいなーって思うんですけど。
それを宮本さんがまさにやってらっしゃるなって思うんですよねー。
宮:それしかでき・・・あ、あのね、会社に入ってオトナになっていく途中で、
けっこう技術とかの方が優位になってくる・・・
松:はいはい。(頷く)
そうですねぇ・・・。
宮:それが怪しいと思うようになったんですよね、どこかのキッカケで。30歳くらいかで。
それまではけっこう見せびらかす、色んな事したくなってたんですよね、育ち方からして。
30くらいになると少し、そういうものが怪しく見えてきたり。
で、「みんながそっち行ってるから」っていうのには
自分はそっちに行きたくないっていう方なのを思い出したりしてる間に、割と本音で作るというか。
松:うーん。(唸り声)
宮:結果は・・・、あ、結果関係なくじゃないですよ。
結果はすごい求めてるけども、「割と本音で作ろうや」っていう。
で、さいわい周りに、自分と一緒に作っているメンバーの中に色んな人がいて。
これがまたありがたいんですよね。
松:そういう人が集まってくるんですよねぇ。
宮:はい。
自分がクリエイティブでもあるけども、その人もクリエイティブですよね。ほとんどチームの。
ただそれをこう、どう作ってるかというと、自分が居いひん(居ない)とそうならへんやろうなーっていうのだけにはしたい、
っていうところで、自分がプレイヤーでいるのが一番わかりやすいですよね。
松:あー・・・。
いや、僕はまあ、僕にはできないですけど、すごく羨ましいお仕事やなぁ、と思いますねぇ。
宮:いやいやいや。(笑)
松:いやいや、僕はホント、表に出ちゃった事がすごくイヤで。
できれば表に出ずに自分のやりたい物がやりたかったですねぇ。
松:あの、マリオの・・・64(ロクヨン)のマリオも宮本さん・・・?
宮:そうですね。
松:ですよね。
宮:マリオは全部、初代から。
松:(嬉しそうな松本)
あのー、64のマリオ、僕がやり出した時に・・・すいません!ちょっと気持ち悪がられるかもしれないですけども、
もうね極端な話、あの世界からね、出たくなくなりましたね・・・。
宮:(笑)
松:あの世界にちょっと僕はもう、しばらく入り込んでしまって。(笑)
あの、極端な話、全くあれと同じ世界を創ってやろうかなと思うくらいに。(笑)
・・・入り込みましたね。
宮:箱庭を作ろうという感覚で。
松:あーああ、そうですね!
宮:子供の頃に遊んでた場所と同じ事を新しくまとめて、合理的にまとめて箱庭にする。
徐々に3Dになってきてどんどんそれがやりやすくなってきたんですよね。
あの時点で初めて立体にして。
松:革新でしたねー。いやー、素晴らしいですよ。
松:あのー、僕どうしても聞きたいんですけども、答えられない部分はしょうがないんですけども。
ホントに勝手な、個人的な質問なんですけども。
ピクミン3(スリー)は無いんですかね?
宮:(笑)
松:(笑)
宮:これ、実はね、その筋ではっていうか業界筋では毎年アメリカで夏前にしゃべる機会があって、
作ってる作ってるって言い続けて、今年やっと「次のハードで作るからね」っていうのを正式に言ったんですよ。
だから・・・。
松:(喜びながら笑う松本)
宮:まだ、いつとは言ってないですよ。(笑)
松:(笑)
すみません、これもうホント僕が無茶苦茶うれしいんですけど!そうですか!
宮:はい。(笑)
もう5年間ちょっと作っては止め、ちょっと作っては止めってことを繰り返してて。
松:いやー、3いつ出んねやろー、いや、(3は)ないのかなーって思って、
また最初からやろうかなーって今思ってたところなんですけども。そうですか!
宮:はい。やはりやります。やってます。
松:あのー、これね僕が周りから言われる事なんです。
僕は、これまた素人みたいに宮本さんにそういうこと言いたくなるんですけど。
どうしても・・・、例えば、
自分がやっていたコントをもう一回やってくれ、別にキャラはそのままで台詞さえ変えてくれればええやんけ、
って好きな人は言ってくれるんです、でも僕はそれをやりたくなくて。
プラス何かが無いと絶対やる意味がないって僕は思うんです。
そんな事言っている癖に、ゲームに関しては、ピクミンに関しては宮本さんに
「もう同じでもいいから、もうステージ違いでもやってくれ!」
って僕は思うこの矛盾さ!(笑)
宮:うんうん。(笑)
松:あー、やっぱファンは勝手なもんやなーって思うんですよ。
宮:それは・・・
松:ピクミン1のときは登場人物1人なんです。で、ピクミンも3色なんです。
でも(ピクミン)2になってから博士と助手と2人になって、ピクミンも5色になる。
(ピクミン)3はプラスそこに何かを、たぶん宮本さん乗せてきはると思うんですけど、
あ、もちろん乗せてくれるのはうれしいですし、そうなんですけど、
でもファンにしたら
そんなに込み入らなくても、もう前のままで、ステージさえ替えてくれれば僕らは十分楽しめるんですけどね。
宮:(笑)。うーん、そう・・・
松:すみません。(笑)
僕、訳分からんこと言って。
宮:いやいや、ありがとうございます。(笑)
松:いや、でもホントそうなんですよね。
宮:いや、なんか仕事の悩みってそれですよほとんど。
あの、期待に応えたいっていうのと、一緒じゃ嫌だって言うのと。
松:一緒じゃ嫌なんですよね。
宮:で、どっかの時点でオッケー出すんですよね、自分の中でこれでオッケーっていう。
松:まあ折衷案じゃないですけども。
宮:それがさっき言ってる、その、今まであった物を強化していくっていう伸ばし方。
補強していく・強化していくって、これは割と簡単なんです。
そうするとどんどん複雑になっていったり重くなったりするので初めての人には近寄りがたいものになっていく。
松:はい。(短く)
宮:ただ、深くっていうのを求めている人も、深いものを渡したらオッケーってわけじゃない、って思うんですよ僕は。
だから、深いって思っている人にいかに、そのちょっと外した所での新しいもの、
「あ、これもオッケー」って言ってもらえるのがすごい好きで。
これでオッケーっていうもので初めての人よりもオッケーなものを探すと、これがけっこう迷走するんですよ。
積み上げるだけならあと2年あればできるんですけどもね。
松:うーん。(唸り声)
宮:ただ、それは松本さんの仕事を見てても、すごいそういう風に見えます。(笑)
松:いやー、でもまあそうですねー、答え出ないですもんねー。
宮:というかね、お笑いとかそういうのって、割と新しいもの見せてくれ、って思う事で。
自分で作っているゲームの方は「いやこれ、もっと豪快だったら」
とか遊んでる自分がもっと豪華なものを求めていくので、ついついハマるんですよね。そちらの方に。
他のメディアのもののほうが「またその手使うの?」とか思いながら、ひねくれて見てて。(笑)
松:あの、他のゲームは、やりはるんですか?
宮:一応、チェック程度にはするんですけど、本当、今ゲームっていうのは自分の作ってるものを遊ぶだけでも
かなりの生活の中(の時間を)を占めるんで。
松:そうなってきますよねー。
宮:どっちかというと、他のメディアのものをパラパラパラパラと。
僕は深く、造詣(ぞうけい)の深いメディアっていうのは無くて、パラパラパラパラ単発的に見るんですけど、
何か「ああ、ここでもこれ悩んでるかー」とか「ここで安く落ちてるなー」ばっかり見ながら。(笑)
松:(笑)
宮:自分の仕事と照らし合わすってのが多いから。(笑)
松:僕はまあその、例えば映画とかゲームとかそうなんですけど、食べ物もそうですね、
最初に口にしたときに、パッとちょっとやったときに、
一回もう、しんどくなって止めちゃうんですよ。
宮:うん。
松:で、三日・四日ぐらいしたときに「あれ?そんなに悪くないんじゃないか?」
って、どっかでフッって何か脳に指令みたいなのが来て、次やり出した時にどんどん深みに嵌っちゃうってのが
大体今までのパターンなんです。
宮:なるほど。
松:宮本さんのゲームもそれが多いですね。一回疲れちゃうんです。
ゼルダ(の伝説)も一回疲れちゃうんですけど、三日・四日したときに
「あれ?やっぱりやりたいかも」って思ったらもう止まらないですね。
あれ何なんでしょうねー。
宮:最初の掴みを大事に作ってるから・・・、けっこう最初の掴みで掴めてないのはショックですねー。
松:あ!そうですか!!
宮:けど、ホントはその、そこを見て欲しいんですよ、その先の。
あの、こっちのこだわってる部分を出来るだけ口当たり柔らかく出そうって思ってるんです!(笑)
松:そうですよね!
宮:パクッと食べてもらって「うまい!」って言ってもらえないのは悲しいんですけども、
そこはまだ負けじゃないんですよ。
松:あーそこは僕がやっぱりおかしいんでしょうね。
あのー、そうなんですよ、一回「ん?」って、
例えばラーメンでも最初食べた時「いま一つやな」と思った奴が、
意外と何回か食べてるうちにハマっちゃうみたいなことがよくあって。
僕は、宮本さんのゲームでもそれは感じますし、もっと言えば女性にも同じものがありますけどね。(笑)
宮:(笑)
松:ええ、一回「ちょっと・・・」(押しのけるような仕草)って思うんですけど
あ、やっぱり会いたいかもってなったら意外と長くいっちゃうってことがありますね。
松:あれですか、その普遍的なものを作りたいって意識が強い方なんですか?
宮:そうですね。そうあった方が嬉しいですね。
古いかとか、新しいかとか、流行ってるかっていうよりは普遍的なものの方が、
ずっと持っている物を作りたいというか、持っていることに何か意味を感じてもらえるようなゲームでも作りたいです。
松:あのー、僕はテレビの仕事もやりながら、この仕事もやりながらって、
最近すごく、普遍的なものってどういうものなんやろうって、すごく今むずかしいなーって思ってるんですね。
で、いわば、凸(デコ)と凹(ボコ)の感じかなって僕は思ってて、受け手が今まではその、すごく凹だったんですね。
で、僕らが一生懸命やる事が凸で、それがうまくカチャッって合えば、僕は何かこう、普遍的なものが生まれるんじゃないかなーって
ずーっと思ってるんですけど、最近その、受け手があまり凹じゃないんじゃないかなって・・・
だから、あんまり僕らが凸を押し付けると、何かこう上手くかみ合わない。
で、特にテレビなんかでいうと、視聴者の方がむしろ凸になってきてて、僕らが凸を押し付けると全然噛み合わないってことがあって。
すごく今そこに、どうやったらその凸と凹がうまく合うのかなーっていうのは、何か考えちゃうんですよね。
ゲームにおいて、今どうなんでしょう・・・その、ゲームを欲している人たちは増えてるんでしょうか減っているんでしょうか?
何かそういうのを考えるん・・・
宮:あのね、いや、ホントはちゃんと考えないと駄目なんでしょうね。
基本的には・・・常に減ると思ってるんですよ。流行ったものはもう必ず減ると思ってるので、ええ。
必ず減るので・・・増えてるか減ってるかっていう事はあんまり気にしない。
どれだけ呼んで来れるかっていう。
娯楽の会社っていうのはやっぱりブームを何回仕掛けられるかって事が勝負ですよね。
ところがゲームビジネスみたいのが出来てきて、なんかそのお金を儲ける仕組みが出来ると、
どんどんそこで回っていくじゃないですか。
何かそのサイクルから抜けたくて。
例えば、スーパーマリオが売れましたよね。そうすると、みんな褒めてくれはるんですよ、スーパーマリオ。
で、スーパーマリオ、いやここが凄いですね、あこが凄いですね、
っていう事の言ってくれはる事の半分ぐらいは、別にスーパーマリオじゃなくても他のビデオゲームでもやってることなんですよね。
という事は、スーパーマリオが出るまで、インベーダー以来、スーパーマリオが出るまでゲームを知らなかった人が世の中多いんです。
松:あー・・・ハイ。(頷く)
宮:それは、ゲーム作ってると、全部知っている人と付き合ってると思うので間違うんです。
松:すっごい分かります。すごい分かります。
宮:だから、その両方がお客さんには居る、っていうのを意識に持ちながら自分をどこにやってるか、
すると、スーパーマリオの時にこの、(他のビデオゲームがやっている)半分のものを取ったのはすごい漁夫の利なんですけども、
それは、そこに出てきたから初めて漁夫の利があるわけで。
次、それを作るには何をするかっていうと、たぶんここ(今までの「半分のもの」)の流れを見てても出来ないですよね。
松:(頷きながら唸る)
松:ああ、あとあの、宮本さんのその、僕チラッと聞いたのはオリジナリティへのこだわりがものすごいっていうのが
聞いたことあるんですけど。
宮:オリジナリティへのこだわりというより・・・、あの、みんながやるパターンに乗ると
それ以上のものを出さないと駄目ですよね。
独自に考えたものっていうのは、まだ仕上げる余地がいっぱいあるんですよね。
だから、みんな割と怖がるので安全な所に牌(パイ)を置きにいきますよね。
そのときは、けっこうそこにいっぱい同じようなものが置かれているので、
こう、目立つように置くのにすごく努力がいるんですよ。
でも、独自の所に行くのは危ないですけども、まだラフに置いてもまだ空いてますから。(笑)
松:(笑)
宮:そのほうが仕事楽しいんですよ。
松:(頷く)
・・・あのー、これ、もうあの、何年か前に全くおんなじ事ゆってるんですよね!(笑)
宮:(笑)
松:あの、まあホントそうなんですよね!
でも、言い換えれば少し卑怯なんですけどね、言い換えれば!
宮:そうなんですそうなんです。(笑)
松:いや、全然卑怯じゃないんですけど。卑怯と言われれば卑怯な部分ではあるかもしれないですよね。
誰も行っていない所に行くっていうのは、「あ、お前らここ分からんかー」ってどっかで言える部分でもあるので・・・。
まあ・・・そうですよね、オリジナリティってそういう事ですよね。
宮:オリジナリティって・・・そういう事ですよね。
天性のもので何かこう・・・本人の中から湧き出してくるようなものって言いますけど、
それはほっといても(放っておいても)出てくるもので。
松:うん。(頷く)
宮:やっぱり、その、人に注目されるオリジナリティっていうのは他のものとの比較ですよね。
松:でも、そうですね、宮本さんはそうは言っても、ちゃんと大衆もしっかりと掴んでおられますもんねー。
そこがすごい・・・。
宮:そこはけっこう臆病なんですよ、だから。
放っておくと、ついつい、そこ(安全な所)に牌を置きにいく方なので、
よけいに違う所に置きにいこうって、こう奮い立たす為に(奮い立たせる為に)みたいな。
特にスタッフには極端に言う。(笑)
松:それは、あの、
「宮本さんそれダメですよ」「こっち行った方がいいですよ」「こんなんした方がいいですよ」
ていう、ブレインの人がいっぱい居られるってことなんですか?
宮:いや、そうでもないですよね。ほっといたらそっち(安全な所)に行く人が多いですよね。
僕が割と奮い立たせて「こっちに行く!」って言って、みんながホントに行くと
「ちょっと危ない!!」って僕が止めに入る。(笑)
松:(笑)
宮:「それは行き過ぎちがうか?」みたいな。(笑)
松:ああ!そうですか!
宮:「もうちょっとここらでも良いやないか」みたいな。
松:あれ、俺はどうやろ・・・
宮:みたいなとこはあるんですよね。
だから、多分その距離感を調整するのがプロデューサーで、自分が居ないとそういう風には仕上がらへんやろうなって思える部分で、
他の人が見てると多分その、仕上がる位置が違うのかな、
それ以外はクリエイティブは、みんながしていますからってみたいな風にだんだんなって来ていますね。
松:はあ~、出来たらこういうテレビじゃなくて普通にあの、居酒屋でお会いしたかったですね~。
宮:(笑) そうですね。
松:やっぱりどうしても意識してしまうんで、もうちょっとこう、ぶっちゃけた話がホントはしたいんですけど。
宮:ぶっちゃけた話が・・・
松:すみません、なんか素人みたいな事なんですけど、どなりちらすことってありますか?
宮:・・・あまりないですね、たまにやりますけどね。たまに。
松:「パーン!」っていっちゃう事ありますか?
宮:たまに、他の人に見せるようにやろうかなってやったことあるんですよ。
松:どういう?
宮:えー、下の人たちがいて、中間の人がいて、僕がいるんですよね。(上に上がっていくようなジェスチャー)
下にけっこう不満が溜まったりしますよね。
その時にこう、(下に少し手を下ろしながら)一回叱って見せた方が納得するんやないか?とか思って。(笑)
松:(笑)
宮:横に並んで座って、けど、あんまりうまくいかなかったですねそれは。(笑)
松:(笑) そうですかー。
あんまキャラじゃなかったんですか。
宮:うーん、だからそれは一時あったんですけど、最近はやっぱりどっちかっていうと、
自分が言ってる意味がよく分かってもらってないときに「違うやろー」っていう事があるくらいで。(笑)
松:(笑)
宮:だから、あまりどならないですよ。だから、イジイジと言ったりする事の方が多いかも分かりませんね。
松:そうですか・・・。
宮:「いやしかしどうなんやー」みたいな事の方が多くて、あまりどならないですね。
・・・どなる?(松本の方を見ながら)
松:いや、僕も実はあの、意外とないんですよ。
宮:そうですか。
松:僕の場合は完全にお笑いの仕事なので、現場で怒っちゃうと、もう、弱っちゃうんですよね。
宮:ああー・・・。
松:あのスイッチ・・・なんでしょう、ホットプレートみたいな怒り方しか僕できないんで、
一回怒っちゃうと、もうアッツアツになると冷めるのにものすごい時間がかかって、
多分その日一日もう無理なんで、だから我慢しちゃうんですね。
で、ストレスがどんどん溜まっていくっていう、でどこかでこう「バン!」ってなっちゃうって事があるんですけど、
物づくりをしている方ってどうなのかなーって。
宮:それはね、会議とかしてると重くなりがちになりますよね、うーんとか言って。
松:そうですね。
宮:そのときに自分がそこにいると、中にいるとなかなか気づかへんですけども、人がやっているのを見てると
ちょっと笑わしたくなりますね。
松:ほぉ。
宮:やっぱり笑ってる方が結果がOK、結果が広がるんで。
自分が落として笑うとか、一緒に落としてくれる奴がいるので。
「僕ら素人ですからー!」みたいな言い方をして喜んでるメンバーが多いから
「またこんな事してしもうたわー!」みたいな事言いながら(笑)
松:(笑)
宮:関西の、
松:ノリで。
宮:ノリで。
自分一人でやってると、けっこうディレクターと1対1とかでなるとすっごく重くしてしまうんです。
それは気を付けた方がええなーって思うけども。
<<その2へ続く>>
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この記事へのコメント
1. Posted by ハイロウ 2011年11月21日 22:25
テキスト起こし、読みました。
とても良くまとめられていたので、勝手ながら私のブログにリンクを貼らせていただきました。
事後報告ですみませんが、ありがとうございます。
とても良くまとめられていたので、勝手ながら私のブログにリンクを貼らせていただきました。
事後報告ですみませんが、ありがとうございます。
2. Posted by HARIKEN 2012年11月17日 16:37
テレビ見ないので、大変有り難いです。ありがとうございます^^
3. Posted by あっという間でしたね。 2012年11月23日 14:35
再放送を録画して何度も見たけど、あっという間に時間が過ぎますね。
松っちゃん好きな方だが、しゃべってる宮本さんが貴重すぎて、いちいち自分の事に話を持って行く松っちゃんが、うざくて仕方なかった。
実際はもっとしゃべってて、NHKのアホが間違った編集をしたのかもしれないが、
もっと宮本さんに話させろって、終始イライラするw
でも松本という人間があったから、実現できた対談かもしれないし、難しい所ですね^^;
松っちゃん好きな方だが、しゃべってる宮本さんが貴重すぎて、いちいち自分の事に話を持って行く松っちゃんが、うざくて仕方なかった。
実際はもっとしゃべってて、NHKのアホが間違った編集をしたのかもしれないが、
もっと宮本さんに話させろって、終始イライラするw
でも松本という人間があったから、実現できた対談かもしれないし、難しい所ですね^^;