「ナザリック候! 貴様王に向かってどういうつもりだ!」
門を閉めた王都の内外で睨み合うバルブロ軍と悟率いる討伐軍。
バルブロの怒声に対し、悟は静かに声を大きくするアイテムを使い語りかける。
「知れたこと。不義によって偽の王を僭称する不届き者の、バルブロ元第一王子·····今は反逆者バルブロを討伐しにまいった」
「なんだとぉ? 俺は先王である父王に後を託されたのだ。貴様こそ正統なる王家に歯向かう反逆者ではないか。帝国軍まで引き連れて、貴様は帝国の犬だったのだな!」
バルブロも負けじと言い返す。しかし、悟の余裕は崩れない。
「ジルクニフ·····バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス陛下とは友人でな。友の妻の実家の一大事に力添えをしてくれただけだ。何か問題があるかね?」
「正統な名を持たない偽者か。敵国の偽皇帝と友人とは笑わせる」
「そうかね? 私とジルクニフは友であり、盟友だ。私がある限り戦争にはならないと思うぞ。つまり敵国ではない。それに本当の敵は別にいるのだ!」
一旦言葉を切り反応をまつ。
「敵だと?」
「そう敵だ! 父親である王を幽閉し、血を分けた弟を殺そうと企み、あまつさえ偽の道具を使って王位につき、国を盗まんとする大悪人。バルブロ、貴様だこの馬鹿野郎! 民を考えもしない国政に対するビジョンもなく、ただただ王位にのみ執着する愚物·····それが貴様だ、バルブロ。貴様などに王を名乗らせはしないぞ!」
「言いがかりを!」
ワナワナと震えるバルブロ。青筋が切れそうだ。
「こちらには証拠があるのだ。ラナー、あれを」
「はい」
ラナーは悟に何かを手渡す。
「何だそれは?」
「玉璽だよ。王の印さ·····もちろん本物のな」
「他にも戴冠式で使う一式がありますわよ」
「な、なんだと·····作らせた意味が·····はっ·····」
バルブロ、真実を口にしてしまう。
「今自白したな。バルブロの元にいる兵士達よ! 今聞いた通りだ。そこにいる馬鹿男バルブロこそが、大逆罪を犯した大悪人。一緒にいる貴族どもも同罪だ。バルブロを捕らえたよ!」
城内はザワつく。
「ええい騙されるな。本物はここにある! ナザリック候こそが、偽の品を用意した大悪人だ!」
「やれやれ、言うに事欠いてそれか。並ば貴様の言葉がまやかしだという証拠を見せてやろう」
「まあ、証拠というより証人ですけどね」
ラナーは楽しそうに笑うと、合図を送る。
「ふん、何を出そうと·····げぇぇぇぇっ!!」
バルブロは驚きの声を上げ、他の貴族達もそれと同様の声を出す。
「な、なんで·····馬鹿な。有り得るかぁ!」
ラナーの合図で姿を現したのは、なんと国王ランポッサ三世その人だった。
「なんで·····父は·····と、閉じ込めておいたのに、何故そこにいる!」
バルブロは自らの罪を大声で認めた。
「はい。ゲロったね」
「今、バカブロ兄様が認めましたよ。父上を閉じ込めていたって」
「し、しまったァァァ!」
「兵士達よ、反逆者バルブロを捕らえよ! そしてそれに加担した貴族を逃すな!」
国王の命令に一斉に城内の兵が動く。
「く、くそっ!」
バルブロも自ら剣を抜くが、兵のほとんどが国王の命令に従ったため、抵抗虚しくあっという間に捕縛されてしまう。
何しろ貴族派閥直属の兵士ですら、もはやこれまでと主を見限り国王についたのだ。多勢に無勢。最後まで抵抗していたポウロロープも、一般兵の数に負け縛に就いた。
なんと悟の兵を動かすまでもなく、決着はついてしまったのだ。
何故こうなったのか。悟サイドの動きは次回以降に。