JR東日本 終電繰り上げ なぜ?

  • 2020年10月21日

JR東日本は、来年春から首都圏の17路線で最大37分程度、最終電車の時刻を繰り上げると発表しました。背景には何があるのでしょうか?そもそも、いつ頃から今のような時間帯まで走るようになったのでしょうか?

終電繰り上げの2つの理由

最終電車の時間を繰り上げる理由について、JR東日本は、2つの理由を挙げています。

【理由①】深夜の利用客の減少
JR東京駅のコンコースは、新型コロナウイルスの感染拡大前は、深夜も多くの乗客の姿が見られましたが、最近は閑散としていることが多くなっています。

平日の午後11時54分に発車する東海道線の最終電車は、乗客はまばらで空席も目立ちます。

JR東日本によりますと、ことし8月の平日で東海道線の午後11時台の乗客は、去年と比べて61%減少し、山手線の午前0時台の利用も去年と比べて66%減っているということです。

緊急事態宣言のあと、閑散としているJR新宿駅

深夜の乗客が減ったのは、企業の中でテレワークが普及し、通勤をしない人が増えていることや、深夜まで飲酒する人が減っていることなどが主な要因とみられます。

【理由②】線路の点検や保守を行う作業員の労働環境の改善

線路の点検や保守は、終電後に行われています。
JR東日本によりますと、作業員は昼夜が逆転する働き方を余儀なくされるうえ、高齢化も進んでいて、今後10年間で担い手の数が1割から2割減少すると見込まれています。

このため、最終電車の繰り上げで1日あたりの作業できる時間を増やし、工事にかかる日数を短縮することで、作業員が休みをとりやすくする狙いがあるということです。

こうした課題は、鉄道各社に共通していて最終電車を繰り上げる動きが広がっています。

▼JR西日本
来年春から関西の主な路線で、午前0時前後に出発する電車48本を削減し、最終電車を
最大で30分早めます。

▼大手私鉄
・西武鉄道が最大30分程度の繰り上げを検討
・東急電鉄、小田急電鉄、京浜急行電鉄、福岡県の西日本電鉄なども繰り上げ検討

終電の歴史 終戦直後の中央線は午後7時50分

最終電車の時刻は、経済成長や生活様式の移り変わりに伴って変化してきました。

終戦直後の昭和20年の首都圏の最終電車は、夜行列車を除くと中央線が午後7時50分、東海道線が午後8時55分と比較的、早い時間でしたが、経済の復興にあわせて遅くなっていきます。

前回の東京オリンピックが開催された昭和39年には、山手線が午前0時38分、中央線が午前0時35分と、今と同じように日にちをまたいだ時間帯まで走るようになりました。

昭和43年 通勤ラッシュのピークを迎える国鉄池袋駅

早朝に会社に出勤し、最終電車で帰宅する「モーレツ社員」が日本の経済成長を支え、このあと60年余り最終電車の時刻はほとんど変わりませんでした。

近年では、2回目の東京オリンピックの開催が決まったことや、外国人観光客の急増を背景に夜の経済=「ナイトタイムエコノミー」を強化する狙いから、最終電車をさらに遅くするか議論が進められてきました。

御堂筋線で行われた終電延長の実験

ことし1月、国は大阪メトロと協力して御堂筋線の最終電車を午前2時台まで延長する
実証実験を行いました。

こうした流れに一石を投じたのがJR西日本です。

去年10月、在来線の最終電車の時刻を早める検討を始めたと表明しました。線路のメンテナンスなどにあてられる時間を長くして、作業員の労働環境を改善し働き手を確保することが狙いでした。

ただ、これはいわば例外的な動きで、全体的には、外国人旅行者への対応などから、最終電車の時間は遅くする方向で検討が進められていました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、テレワークの普及や長時間の外食を控えるなど生活様式が一変し、鉄道各社の経営も厳しくなる中、時間の繰り上げを検討する動きが広がるようになりました。

私鉄や都営地下鉄との乗り換えに影響も

JR東日本の最終電車の繰り上げは、私鉄や都営地下鉄との乗り換えにも、影響が及ぶ可能性があります。

このうち、千葉県の船橋駅は、都心とつながる「JR総武線」と、郊外を走る東武鉄道の「東武アーバンパークライン」が接続し、通勤や通学などで多くの人が利用しています。

東武鉄道は、都心から帰宅する乗客の利便性を高めようと、ことし3月のダイヤ改正で、中間のターミナル駅にあたる柏まで行く平日の最終電車をそれまでより33分遅い午前0時32分としました。

JR総武線から乗り換えができるうえ、待ち時間も少ない時間に設定されました。

しかし、JRが最終電車を繰り上げれば、利用客にとっては待ち時間が長くなったり、これまで乗り換えていた電車に乗れなくなったりするおそれがあります。

JR東日本は、乗り換えが多い首都圏の私鉄大手9社や都営地下鉄などに、利用客の利便性をできるだけ確保できるよう協力を要請していくとしています。
 

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