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コロナ禍でエネルギー投資もピンチ!安定供給とクリーン化に向けた投資促進を

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国際エネルギー機関(IEA)が発行している「World Energy Investment」は、世界でおこなわれているエネルギー分野での投資についてまとめた年次報告書です。2020年版は5月27日に公表され、新型コロナウイルスの感染拡大がエネルギー分野にもたらす影響や、それが引き起こすと考えられる将来の課題が示されました。報告書から見えてきたエネルギー投資の現状と、取り組みが始まった対策についてご紹介しましょう。

新型コロナウイルスの影響で、2020年のエネルギー投資が減少

IEAは、1974年、当時の西側先進国を中心にして、経済協力開発機構(OECD)の枠内に設立された国際組織です。石油から再生可能エネルギー(再エネ)まで、さまざまなエネルギーに関するグローバルな協力を推進する取り組みをおこなっています。そのひとつが、国際エネルギー情勢に関する分析と政策提言です。スペシャルコンテンツでも、IEAを代表する刊行物である「World Energy Outlook」について以前ご紹介しました。

「World Energy Investment」はそうした刊行物のひとつです。2020年版には、年頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によってもたらされた社会・経済の不確実性や各国の財政状況の悪化が、2020年のエネルギー分野の投資動向にどのように影響を与えるのか、包括的な予想をおこなっています。

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外部サイトを別ウィンドウで開く World Energy Investment 2020

その中で、2020年の世界のエネルギー投資は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、前年比20%減の約1.5兆ドルになるという見通しがたてられています。金額にして4,000億ドル減で、歴史的な低水準になる見通しです。

エネルギーセクターへの投資額の推移(2020年は予測)
エネルギーセクターへの投資額の2015年からの推移を示したグラフです。2020年は大きく減ることが予想されています。

(出典)IEA「World Energy Investment 2020」より資源エネルギー庁作成

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そもそも、2020年は、エネルギーの消費量自体が大きく減る見通しです。最終的に需要家によって消費されるエネルギーの量を示した「最終エネルギー消費量」で、石油は1兆ドル減と歴史的な下落となることが予想され、電力は1,800億ドル減となる見込みです。2019年の消費量全体のうち最大を占めたのは石油(全体の50%)で、2位が電力(全体の38%)でしたが、2020年は石油の消費量大幅減により、史上初めて電力が最大の支出セクターとなる見込みです。このような需要減が投資の抑制の一因となっているのです。

2000年から2020年にかけての最終エネルギー消費量における、石油・電力・ガス・石炭の量を示した折れ線グラフです。

(出典)IEA「World Energy Investment 2020」より資源エネルギー庁作成

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石油・ガスセクターへの投資は大幅な落ち込み~今後の需給バランスが危うく

投資の中でも大きな減少が見込まれるのが、石油・ガスセクターへの投資です。これらのエネルギー源は、自動車や飛行機、船舶などの燃料としても利用されることから、世界各国で行われたロックダウン(都市封鎖)による移動制限や、経済活動の停滞による需要減の影響を強く受けています。さらに2020年3月からは原油価格が低迷し(サイト内リンクを開く「新型コロナウイルスの影響はエネルギーにも?国際原油市場の安定化に向けた取り組み」参照)、収益低下や将来の不透明性が生じています。こうしたことから投資が抑制され、前年比で総額32%減、金額にして約2,500億ドル減となることが予想されています。これはセクター別では最大の減少幅です。

2020年の投資減少額・率予測(前年比)
石油・ガス・石炭など各セクターにおいて、前年比でどの程度投資額が減少するかを示したグラフです。

(出典)IEA「World Energy Investment 2020」より資源エネルギー庁作成

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もし、2020年における石油市場への投資がIEAの見通し通りの水準にとどまった場合、2025年における石油の供給量は、現在と比べて1日あたり約900万バレル減少すると予想されます。一方、もしも今後、石油の需要が新型コロナウイルス感染拡大以前の水準に戻り始めるとすると、石油市場の需給バランスはかなり厳しい状態になる恐れがあります。

電力では省エネ&再エネへの投資が鈍化~持続可能なシナリオに黄信号

一方で電力セクターでは、価格変動の影響はないものの、前年比10%減、金額にして約800億ドルの減少が予想されています。下のグラフは、電力セクターの中でも、石炭火力発電、石油/ガス火力発電、原子力発電、再エネ発電、電力系統、蓄電池それぞれについての投資額の推移を示したものですが、すべての投資先で投資額が減ると見られています。

電力セクターの中での投資額と投資先の推移
石炭・石油とガス・原子力・再エネ・電力系統・蓄電池の各セクターにおける、2015年から2020年にかけての投資額の推移を示したグラフです。

(出典)IEA「World Energy Investment 2020」より資源エネルギー庁作成

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再エネ由来の電力など、発電する際にCO2を排出しないクリーンエネルギーに関する技術への投資は、近年約6,000億ドルで推移してきました。2020年は額としてはやや落ち込む程度で、電力分野での投資全体では約40%のシェアまで上昇すると見られています。

しかし、IEAが地球温暖化対策の目標として掲げ「パリ協定」でも目標とされている、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つという「2℃目標達成シナリオ」(サイト内リンクを開く「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)から見れば、現状の水準のままでは投資は不十分です。シナリオ実現のためには、再エネ・省エネ・原子力・蓄電池・CCUS(サイト内リンクを開く「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)といった「低炭素電源」に関する技術への投資額を、2030年までに現在の2倍近くまで増やす必要があります。

電力セクターにおける投資額のズレ
2019年と2020年の実際の各セクターへの投資と、SDSを達成する場合に必要とされる投資額の差異を示したグラフです。

右側にある「持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario、SDS)」に基づいた再エネの投資額予測と、2020年の投資額とを比べると、2倍近くの開きがあることがわかる
(出典)IEA「World Energy Investment 2020」より資源エネルギー庁作成

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コロナ禍の危機を脱するため、あらためてクリーンエネルギー転換に注力

IEAは、この不安定な状況が引き続き続くと考えられる中で、政策立案者は「経済回復」と「エネルギーおよび気候目標」を組み合わせ政策を講じていく必要があると述べています。

そこで、IEAは2020年6月18日、「持続可能経済復興プラン」(Sustainable Recovery Plan)を発表しました。これは、①雇用を創出すること ②経済に刺激をあたえること ③エネルギーシステムの持続可能性および強靱性強化を目的としたものです。2021年から2023年の3年間に、官民合わせて総額1兆ドル/年を集中的に支出することが想定されています。支出先として挙げられているのは、電力・輸送・建物・燃料・産業・イノベーションの6セクターです。「イノベーション」では、水素やCCUS、SMR(サイト内リンクを開く「原子力にいま起こっているイノベーション(前編)~次世代の原子炉はどんな姿?」参照)、蓄電池などが対象として挙げられています。

IEAの「持続可能経済復興プラン」の支出先となる各セクターとそれによる効果をまとめた図です。

(出典)IEA「Sustainable Recovery」より資源エネルギー庁作成

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外部サイトを別ウィンドウで開く Sustainable Recovery

これらの報告書とプラン、また研究開発に関するIEAの報告書「Energy Technology Perspectives」をふまえ、2020年7月9日、「IEAクリーンエネルギー転換サミット」が開催されました。この危機から脱却するためには、「クリーンエネルギーへの転換」を経済回復に向けた主要施策として位置づけるべきという観点から、IEAの呼びかけにより開かれたものです。

日本からは梶山経済産業大臣が参加し、以下のように、クリーンエネルギー転換に関する日本の考えを表明しました。

サミットに参加する梶山経済産業大臣

リストアイコン エネルギー転換のための道はひとつではない。各国固有の事情を考慮しながら、みずから転換への道筋を考え行動にうつす必要がある
リストアイコン 日本は国土の特性などにより、再エネのポテンシャルは限られている。しかし制約の中でも、関連法律を改正し、再エネ導入量を増やすことのできる送電網の整備に向け取り組んでいる(サイト内リンクを開く「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味」参照)
リストアイコン 石炭火力発電は、「エネルギー基本計画」(サイト内リンクを開く「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)に記された、非効率な石炭火力のフェードアウトを確実なものとするため、新たなしくみの検討を開始
リストアイコン 石炭火力輸出は方針をさらに厳格化、相手国の脱炭素化に向けた取り組みをうながすことを基本方針とし、トップクラスの技術に限り支援
リストアイコン 日本が2019年にG20議長国として世界に示した「環境と成長の好循環」という考え方に基づき、今後も国際協力を進めていく

コロナ禍は社会にさまざまな影響を与えていますが、クリーンで強靱なエネルギーシステム構築に向けた歩みは、決して止めてはなりません。エネルギー分野における継続的な投資と研究開発が進むよう、世界各国が協力することが今こそ求められています。

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