メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

トランプはホワイトハウスから刑務所に直行する初の大統領に?

なぜここまで再選にこだわるのか

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 11月のアメリカ大統領選までいよいよあと3週間となった10月11日、ドナルド・トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで「自分は(COVID-19/新型コロナウイルス)陰性になり、免疫ができた」と宣言した。ホワイトハウスのショーン・コンリー医師は「大統領は、もう他者に感染させる危険はなくなった」と発表したものの、多くの専門家たちはそれに疑問を投げかける。

 CDC(疾病対策予防センター)は、COVID-19の最初の症状が現れてから10日経過したことを、感染力がなくなる目安の一つとして挙げている。だがスタンフォード大学のウイルス研究所の所長、ベンジャミン・ピンスキー医学博士はCOVID-19に関する限り、「いったん感染した患者がいつまで感染力があるのか、正確に判定できる検査は、現在まだ存在しない」と明言している。

Matt Gush自身の病状について語るトランプ米大統領=トランプ氏のツイッターから拡大新型コロナウイルスの感染中、自身の病状について語るトランプ米大統領=トランプ氏のツイッターから

 トランプ大統領は、10月2日にウォルター・リード軍病院に入院し、わずか3日後の5日に退院。ホワイトハウスの前で聴衆に向かって演説をし、早急に選挙活動に戻ると宣言した。

 一流の医療スタッフがモニターしているとはいえ、74歳という高齢で肥満気味であることを考えると、彼の行動は無謀としか思えない。新たなクラスター発生の危険もある。

 COVID-19の対応、あまりのマナーの悪さで顰蹙をかった討論会、そしてホワイトハウスでのクラスターなどで、トランプ大統領の支持率は下降線をたどってきた。現在では民主党バイデン候補に10%以上のリードを許しているとの世論調査が出ている。

 トランプは、これまで様々な手段を使って民主党支持者へのあからさまな投票妨害を試みてきた。さらには、たとえ選挙で負けても「平和的に」権力を移行させるかどうか、わからないと公言している。白人至上主義武装団体の「プラウドボーイズ」に、「下がって待機せよ」と言及するなど、トランプが選挙で敗北したあかつきには米国で内戦が勃発する可能性を真剣に懸念する声もある。

 いったいトランプ大統領は、なぜここまでなりふり構わず再選にこだわるのか。彼が本当に本人が主張するような「成功したビジネスマン」なのであれば、ホワイトハウスを退いても悠々自適の優雅な引退生活が待っているのではないか。

 だが実は、ドナルド・トランプ氏には何が何でも再選しなくてはならない理由がある。

全ジャンルパックなら15935本の記事が読み放題。


筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

田村明子の記事

もっと見る