中国人が「日本は理想の社会主義国」と褒める訳

外国人にもコロナ支援する弱者に優しい社会

日本では教育の機会がおおむね保障されており、大卒で会社に入れば、だいたい皆同じくらいの給料からスタートする。中国もアメリカも過酷な競争社会だが、日本では正社員ならそうそうクビになることはない。また、日本に人種差別がないとは言わないが、中国人として日本で学び、働いてきた私自身は、これまで差別された経験がない。中国ではアフリカ系の人々への差別が深刻だが、それと比べるのはおかしな話だろうか。

それに、日本では医療費が安いため、病気になれば貧しくても医者にかかれるし、スーパーやコンビニ、ファストフード店も多いので、食べ物も割と安価に購入できる。東京ではあちこちでホームレスの人たちを目にするが、彼らもほかの国でよく見かけるような「物乞い」ではない。

ロックダウンしても何の補償もしない中国と比べれば

もちろん、そんな日本にも貧困から抜け出せない人は大勢いて、とりわけ最近は格差が拡大していることを私も知っている。それでも、貧しい人や苦しんでいる人を助けようとせず、逆に石を投げつけるような者が多い今の中国と比べれば、随分ましだと思ってしまう。

コロナ禍での経済補償に対しても、額が不十分だ、給付が遅すぎると怒っている人が多いが、補償はゼロではない。ロックダウン(都市封鎖)で国民の経済活動を封鎖しながら何の補償もしない中国を知る私からすれば、中国籍でも給付してくれる日本の特別定額給付金制度は大変ありがたい。

このコラムで韓国出身の李娜兀(リ・ナオル)さんも書いていたが、外国人にもコロナ支援の手を差し伸べているのは非常にすばらしいことだ。韓国でも外国人には支給していなかったし、アメリカの給付金も留学生の多くが対象外だったらしい。どうです? 私も中国とだけ比べて日本がすばらしいと褒めているわけじゃないんです。

日本のメディアは格差拡大の現状を憂い、それに対する政府の施策を厳しく批判する。それ自体は報道環境が健全であることの証しだ。ただ、私のような見方があることも知ってもらいたい。日本は日本流の「特色ある社会主義」を誇りに思い、それを世界にもっと「輸出」すべきだ。

周 来友(ZHOU LAIYOU)/1963年中国浙江省生まれ。1987年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「地球ジャーナル ゆあチャン」)としても活動。

<2020年7月21日号掲載>

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