絵本『えんとつ町のプペル』をWeb上で無料公開してからというもの、トランプ大統領と比べられる機会が増え、このブログにも注目が集まっている、このタイミングで、
どうしても話しておきたい話があります。
それは、僕がデビュー1年目の頃のこと。
当時は、今みたいに、ふんぞり返って仕事をしておらず、頭の天辺から足の爪先まで謙虚でしたので、吉本興業の命令は全て聞いていました。
仕事で地方に泊まる時のホテルは相方の梶原君と相部屋。
もちろん、文句は言いますまい。
コンビでベッドを並べたものです。
ウチのコンビは比較的、仲が良い方だとは思うのですが(今でも年に1度は二人で呑みに行ってます)、しかし、だからといって、寝る前に二人で延々とお喋りをするほど仲良しでもありません。
同じ部屋に泊まったその夜。
時計の針は23時頃だったでしょうか。
べつだん喋ることもありませんし、明日も早いので、まったく眠くありませんでしたが、「まぁ、目を閉じたら寝れるだろう」と思い、一足さきに僕はベッドに入りました。
目を閉じて、5~6分ほど経った頃、やはりまったく眠くならなくて、「まいったなぁ」と思っていた時でした。
隣のベッドで寝転んでいた梶原君がスクッと立ち上がり、その気配がコチラに向かってくるではありませんか。
梶原君は、そのまま、眠っている(目を閉じているだけの)僕の顔面を舐めまわすように見てきます。
《何? なんなの?》
梶原君とは知り合って間もなかった頃で、まだ性欲の守備範囲も明確に確認できていなかったので、いろいろな可能性と恐怖が頭をよぎりました。
《もしかして、そっちの人なのか…》
そんなことすら考え、恐怖で目を開くことができまんでした。
30秒(体感では5~6分)ほど、舐め回すように顔面を凝視された後、しかし梶原君は静かに踵を返し、テレビの方に向かいます。
《今のは何だったんだろう…?》
気になって、うっすらと目を開け、横目で梶原君の行動を確認してみると、テレビの下にPAYカード(有料アダルトチャンネルが見れるカード)をブチ込んでいるではありませんか。
そして、
慌ててボリュームを絞り、
ティッシュー箱を小脇に抱え、
ズボン、そしてパンツをズリ下ろしているのです。
そう。
あろうことか、相方が眠っている隣で、自身の煙突町をプペりだしたのです。
『西野が寝てるから、今ならいける!』
たとえ一人になっても、そんなことは信じぬいてはいけません。
梶原君には普段から「アホ、バカ!」と言っておりますが、コンビを組んだ以上、相方のことは最後まで守ることを決めていたので、このことは見なかったことにして、墓場まで持っていこうと決めました。
しかし、しかしです。
そんな僕の身体をモーレツな尿意が襲ったのです。
オシッコがしたくてたまりせん。
ただ、ここで起き上がってしまうと、煙突町ムキ出しの梶原君と目が合うことになります。
《梶原君よ! 1秒でも早くプペり終えて、煙突町を静めてくれ!》
そう願ったのですが、梶原君ときたらアダルトビデオをストーリーからキチンと見るタイプの男でして、物語は、まだまだ序盤も序盤。
美人潜入捜査官が、ようやく敵のアジトに潜入した段階です。
僕は梶原くんの尊厳を守る為、それから数分間、尿意と戦い、
テレビからは、ようやく
「やめろ!やめろ…やめて……ください……あんっ!」
という声が聞こえはじめ、梶原くんの煙突町から煙が上がりはじめた、その時、
さすがに膀胱の限界がきまして、
《梶原くん、ごめん!》
と観念し、僕はベッドから起き上がってしまいました。
当然、梶原君とは目がバッチリと合います。
パンツを最後まで下ろし、
ティッシュ箱を小脇に抱え、
ギンギンの煙突町をムキだしにして、
テレビから聞こえてくる
「いや~ん!やめて!いや、やめないで~!」という叫び声が部屋に響く中、
キングコング二人に沈黙が走ります。
その直後、梶原君が言った言葉に僕は耳を疑いました。
「明日、どのネタでいく?」
信じられませんでした。
今、僕の前にいる煙突男は、全てを無かったことにして話を進めているのです。
無理です。
そんなダイナミックなトーク展開ができる技量など持ち合わせておりません。
「どのネタでいこうかなぁ…」と美人潜入捜査官ネタでイキかけている男は、まだ話を進めています。
この異次元殺法に僕の尿意なんぞは吹き飛び、直後、「この物語を書こう」と決めました。
絵本『えんとつ町のプペル』の誕生秘話でした。
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