人口が減り続けるなか、持続可能な地域社会を築くことは、菅政権の最重要課題の一つだ。
まずは、安倍政権が「地方創生」の名の下で進めてきた諸施策を継承するのだろう。
だが、それでいいのだろうか。三つの理由で疑問を抱く。
第1は、そもそも地方創生は掛け声倒れだからだ。
看板だった「東京一極集中の是正」は見る影もない。「2020年に東京圏の転出入を均衡させる」と唱えたのに、実際には転入超過が続いた。
政府機関の地方移転も文化庁の京都移転が目立つくらいだ。
第2は、実際は旧態依然の補助金行政であり、分権改革に逆行しているからだ。
「創生」関連の交付金は、道路や港湾などの公共事業も幅広く対象にした。プレミアム商品券の原資にもなった。その累計はざっと9千億円にのぼる。
ことしの骨太方針にも、政府は「『新たな日常』が実現される地方創生」との位置づけで、道路や整備新幹線を盛り込んでいる。「創生」を付ければ、何でもありといわんばかりだ。
交付金を受け取る自治体にも歓迎する機運があるからこそ、こうした施策が続く。
しかし、政府が行司役で自治体に計画を作らせ、それを見ながら資金を配る手法は、いかにも政府主導、中央集権的だ。
近年、地方創生のように政府が自治体に計画策定を求める規定が増えている。政府による地方への統制が、以前より強化されつつあるように見える。
菅首相は地方出身で「現場をよく知っている」と語り、地方に寄り添う姿勢を強調する。一方で、規制緩和や競争原理を重視し、ふるさと納税のように自治体も競い合わせてきた。
残念ながら、分権の視点は乏しい。もっと分権を進めて自治体の自由度を広げ、地域づくりを現場に任せるべきだ。
第3はコロナ禍である。
働き方が変わり、大手人材会社の本社機能の淡路島移転も話題になった。在宅勤務経験者の4人に1人が地方移住への関心を高めている、という内閣府の調査もある。
デジタル庁の創設は行政の効率化とともに、国と地方の関係も変えてゆくだろう。
コロナ対応では、政府に先んじた首長が相次いだ。雇用対策や休業補償、PCR検査で独自策を実施した自治体も多い。全国知事会も「緊急事態宣言を市町村単位で」などと提言した。
こうした自治体の臨機応変な対応を可能にする自主財源と権限を思い切って渡す。それが時代に見合う地方政策だろう。
その第一歩として、地方創生を根幹から見直すべきときだ。
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