こんにちは。私はフランスでフリーランスの日本語教師をしています。
生徒さんの様子を見ていると、日本語ネイティブにとっては息を吸うくらい簡単なことでも、外国人にとっては厄介なことがたくさんあることに気がつきます。今回は、外国人が難しいと感じる日本語の文法についてご紹介しましょう。
助詞の使い方
「は」と「が」の使い分け
外国人にとって、助詞を使いこなすのは大変なようです。特に「は」と「が」の使い分けに戸惑いがちですね。日本語教育では、「は」は主題、「が」は主語を示すと教えています。つまり、「私は」は、無理やり英語に訳すと「私について言えば(Talking about me)」ということになります。
「象は鼻が長い」という文は、「は」と「が」の使い方を示す例としてとても有名です。「象」が文の主題で、主語は「鼻」。英語に訳すと「The elephant has a long nose(象は長い鼻を持っている)」。英語やフランス語には「は」のような主題を示す言葉が存在しないので日本語と同じようには訳せませんが、韓国語には「は」に相当する言葉があるそうです。
「へ」「に」「で」の使い分け
この三つの助詞はどれも場所を表す名詞と共に使われるので、外国人は使い分けに苦労するようです。
場所を示す名詞と共に使う場合、以下のルールがあります。
- 「へ」:移動の目的地・到達点を示す。destination
例)東京へ行く。
家へ帰る。
- 「に」:1.移動の目的地・到達点を示す。「買い物に行く」のように、移動の目的を言う時にも使える。人や物が存在している場所を示す。destination & place of existence
例)空港に着く。
映画に行く。
机の上に本がある。
- 「で」:ある行為が行われる場所を示す。place of action
例)ラーメン屋で大盛りチャーシュー麺を食べる。
どこで遊ぶ?
明日、地元でお祭りがある。
て形(「食べて」「買って」)
て形は、「食べて下さい」「食べてはいけない」「食べている」「食べてみる」など、色々な語とくっついて様々な意味をつくり出す動詞の活用の一種です。日本語ネイティブにとって「て形」を作るのは造作もないことですが、外国人にはちょっと大変なのです(特に五段動詞の活用がややこしいのです)。以下、て形の活用のルールです。
五段動詞
- 終止形の語尾が「う・つ・る」→ って(例 買って・待って・作って)
- 終止形の語尾が「ぬ・ぶ・む」→ んで(例 死んで・呼んで・飲んで)
- 終止形の語尾が「く」→ いて(例 聞いて)
- 終止形の語尾が「ぐ」→ いで(例 泳いで)
- 終止形の語尾が「す」→ して(例 話して)
一段動詞
終止形の語尾の「る」を取り去り、「て」を付ける。
例) 食べる → 食べて・見る → 見て
不規則動詞(カ行変格活用・サ行変格活用)
- 来る → 来て
- する → して
こうしてみると、なかなか複雑ですよね。「買いて」「聞って」「飲むで」など誤用を書いてしまうケースも多々あります。
「て形」は初級の山場だと言われており、「て形」をマスターすれば、一気に表現の幅も増えます。「て形」を覚えさせるには、歌がおすすめです。動画サイト等で「て形の歌」と検索すると色々出てきますよ。
自動詞と他動詞
英語やフランス語などは自動詞と他動詞が同形の場合が多いですが、日本語では自動詞と他動詞の形が異なるケースが多いので、一つひとつ覚えるのが大変のようです。「ドアを開く」「ガラスが割る」などの誤用をするケースも目立ちます。
例)
- 開く・開ける
- 閉まる・閉める
- 付く・付ける
- 壊れる・壊す
- 割れる・割る
形容詞
形容詞の「可愛い・可愛くない・可愛かった・可愛くなかった」という変化は、外国人には少し難しいようです。「可愛いだった」「可愛いじゃない」のように形容動詞と混同したミスがとても多いですね。さらに、形容詞には断定の「だ」は使えませんが、「美味しいだ」「暑いだ」と「だ」を付けてしまうケースもよく見られます。
ちなみに、日本語教育では形容詞を「い形容詞」、形容動詞を「な形容詞」と教えています。「い形容詞」はすべて送り仮名の「い」が付くから(「嫌い」は形容動詞なので例外ですが)、「な形容詞は」名詞修飾の際に「な」を付けることから、そのように呼ばれているのです。
日本語は意外と論理的?
日本語はあまり論理的な言語というイメージはありませんでしたが、意外とちゃんとした規則があるんですね(例外もありますが)。
今回ご紹介した難しい日本語の文法ポイントを押さえておけば、外国人と日本語でやり取りする際に役立つことでしょう。
彼らが間違っても茶化したりせず、「日本語の勉強頑張っているんだな」と暖かく見守ってあげてくださいね(^^♪