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 ベルリン市ミッテ区に設置された慰安婦を象徴する少女像をめぐり、同区は13日、「当面の間、置かれたままになる」と発表した。設置した在ドイツの韓国系市民団体「韓国協会」が、撤去を求める区の決定の差し止めを行政裁判所に申請したため。

 フォンダッセル区長は声明で、裁判所の判断が出るまでは新たな決定はしないとし、「日韓が折り合える妥協案を望む」とした。「時代、場所、行為者にかかわらず、女性への性的暴力、特に戦時下での行為を非難する」とも述べた。

 少女像は9月28日、区から1年間の許可を得て、住宅街にある公園前に置かれた。日本政府は不適切だとして、ドイツ政府に撤去を働きかけていた。加藤勝信官房長官は14日の記者会見で、「ドイツ国内の司法手続きであり、政府としては今後の動きを見守っていきたい」と述べた。

 一方、元慰安婦の李容洙(イヨンス)さん(91)は14日、ソウル市内の記者会見で、「歴史の証拠である少女像の撤去を主張するのは悪い行動。絶対にあってはならない」と訴えた。李さんは、ドイツを「日本とは違って歴史を反省した。世界の良心」と評価し、ベルリンには像が必要と強調した。像は元慰安婦たちの「恨みと悲しみ」を表し、「後世の教育のためにも必要」と主張。「いろんなところに建てて、悪い人に罰を与えなければならない。日本はまだ自らを律していない」とも語った。

 韓国外交省の副報道官は13日の会見で、日本政府の撤去への働きかけに関し、「被害者に対する謝罪や反省の精神に逆行する。民間の動きに韓日政府が外交的に関与するのは望ましくない」と苦言を呈していた。 区は10月8日、「国同士の歴史的対立に特定の立場を取るのは慎まねばならない」などとして、設置許可を取り消し、14日までに少女像を撤去するよう市民団体側に要求。市民団体側は区の決定に反発していた。(ベルリン=野島淳、ソウル=鈴木拓也)