Interview

Perfume 52曲の足跡から蘇る涙と喜び。3人にベストアルバムに込めた気持ちを訊く。

Perfume 52曲の足跡から蘇る涙と喜び。3人にベストアルバムに込めた気持ちを訊く。

この9月にメジャー・デビュー15周年イヤーに突入するPerfumeが、初のベストアルバム『Perfume The Best “P Cubed”』をリリース。メジャー・デビュー以来唯一のサウンドプロデューサーである中田ヤスタカ自身がリマスタリングを手がけた旧曲も含め、レーベルをまたいだヒット・シングル満載の全52曲は圧巻としか言いようがない。これまでオリジナル・アルバムにこだわってきた彼女たちが「愛のあるベスト」と迷いなく言うそのワケ、中田ヤスタカとともに育んできた作品への思いを、めいっぱい語ってもらった。

取材・文 / 藤井美保


自分たちで選曲するってこと自体、初めての体験ですし(あ〜ちゃん)

メジャー・デビュー15周年イヤーに突入するタイミングでの初ベスト。今まで出ていなかったのが不思議なくらいですね。

あ〜ちゃん 何度かお話はいただいてたんですよ。でも、中田さんの意向を聞いてもらうと「ベストよりオリジナル・アルバムを出したい」という返答でした。中田さんは常に最新のものを更新していきたい方なので、私たちもそこを大事にしてきました。でも、リスナーとしてPerfumeのことを考えると、好きなアーティストさんのベストを、オリジナルとはちょっと違う特別な気持ちで買ったりしてる。だから今回、中田さんが納得してくれたのか「古い曲のリマスタリングするよ」とまで言ってくださったのは、すごくうれしかったです。自分たちで選曲するってこと自体、初めての体験ですし。

かしゆか そう! 今までの作品は、中田さんが曲順まで全部決めてくださってたので。

のっち メンバーとスタッフとで集まって、「あと何入れたい?」と意見を出し合いながらの選曲会議。スタッフの好みとか、いろんな発見もあってめちゃくちゃ楽しかったです。

どんな基準で選んでいったんですか?

かしゆか シングルは全部入れるという前提で、それ以外でハズせない曲を選びつつ、全体のバランスをとっていきました。

のっち そもそもCDを出すいちばんの理由は、ライブの為なんです。このベストで初めてPerfumeを知る人も多いと思うので、「これ知ってたらライブが楽しいよ」という曲をたくさん入れました。

かしゆか Perfumeってバージョン違いも多いんです。

のっち ライブで使ってるバージョンのほうが、ウチらにとっては「その曲」だったりして。

あ〜ちゃん 「edge」とかもめちゃくちゃいろんなパターンがあるもんね。そうそう、今回選んだものを暫定的に並べてもらって聴いたときに、「何この間奏、知らんぞ?」ってなったのが「Magic of Love」でした。私たち、もはやシングル・バージョンでは踊れない(苦笑)。それで「Magic of Love(Album mix)」のほうを収録したんです。

かしゆか 自分たちの体に染みついてるのは、必ずしもシングル・バージョンじゃないんです。

あ〜ちゃん そこが再確認できたのが面白かったですね。

「このベストはPerfumeの歴史であると同時に、中田さんとPerfumeの歴史でもあるんだ」と気づきました(のっち)

全52曲の最初と最後が新曲というのもPerfumeらしいです。1曲目「Challenger」には、過去を慈しんで未来に向かうというメッセージがこめられている気がしました。

あ〜ちゃん 実はPerfumeの初期も初期、当時のマネージャーがこの「Challenger」の原曲を聴いて、「この人の曲いいな」とプロデュースをお願いに行ったのだそう。今回中田さんから初めて明かされてびっくりしました。あえてその曲をこのタイミングでリアレンジし、歌詞を書き下ろしてくれて、本当にうれしかった。このベストが一気に愛のあるものに感じられるようになりました。

のっち 最初それを知らずにいたときは、「今とは作風も違う昔の曲を歌う意味って何だろう?」と思ってたんです。でも、「僕がPerfumeをやるきっかけになった曲を、今、歌うっていうのはどう?」と提案されたとき、「このベストはPerfumeの歴史であると同時に、中田さんとPerfumeの歴史でもあるんだ」と気づきました。本当に熱い人。その気持ちに乗っかりたいと思いました。

かしゆか その「Challenger」を1曲目に入れたことで、これまでの歩みのすべてがつながって完全な輪になる気がして、この曲の存在意義に納得できました。歌詞もすごく素敵なんです。

メジャー・デビュー15周年に向けた記念ソングに思えました。

あ〜ちゃん デモの仮歌はいつも中田さんのケロケロ声だし、そこで意味を考えすぎると歌入れで感情が入りすぎちゃったりするので、「仮歌は仮歌」というふうにしか聴かないのが常なんですね。でも、この曲のデモは、聴いた途端ヤバいくらい涙が出ました。私たちのこれまでを描きながら、これからをも思い描かせてくれる歌詞。節目のタイミングでこんな言葉をプレゼントしてくれる中田さんって、本当に大人だなと思いました。

のっち 中田さんは、Perfumeが歌うべき言葉を必ずちょうどいいところでくれるんです。今回も「今、私たちに必要なのはこの言葉なんだ」と噛み締めながら歌いました。

かしゆか 成功するかどうかわからないままがむしゃらに頑張ってた時代を思い出して、胸がキューンとしめつけられました。そのときは気づかなかったけど、今、振り返るとたしかにそうだったよね、と。そんな目線の歌なんです。

中田さんとの関係性がどう育っていったか、ポイントとなった曲を挙げて語っていただけますか?

あ〜ちゃん 初めて「あ、いい曲」と思ったのが、「コンピューターシティ」でした。

そんに早くにそう思ったんですね。

のっち メジャー・デビューからするとすぐなんですけど、実はその前も中田さんとは長いので(笑)。

あ〜ちゃん インディーズのときにも「スウィートドーナッツ」、「モノクロームエフェクト」、「ビタミンドロップ」、「おいしいレシピ」、「シークレットメッセージ」、「エレベーター」とかいろいろ書いてもらってましたからね。

何を話していいかわからない子供じゃなくなったんだな、と、感じたのを憶えてます(かしゆか)

「コンピューターシティ」をきっかけに、歌詞にある通り「何かが 変わるよ」と思えたんでしょうか?

あ〜ちゃん あの曲を出したときはまだ高校生。通ってた学校には、同世代の女優さんや歌手の人も多かったんですけど、私たちはできるだけ地味に静かにしてたんですね。「私たちには興味持たなくて大丈夫です。ありがとうございます」という感じで(笑)。でも、「コンピューターシティ」のときは、初めて学校にポスターを持って行きました。先生に貼ってもらおうと思って。それだけ「みんなに聴いてほしい」と思う曲だったんです。

かしゆか 中田さんとの関係性というところで、私が思い出すのは「GAME」の頃ですね。そのあたりから、タイトル決めにしても何にしても、その場で私たちに意見を求めてくれるようになりました。何を話していいかわからない子供じゃなくなったんだな、と、感じたのを憶えてます。

のっち 徐々に徐々に、「あ、この人優しい人だな」と思うようになったんですよね。歌録りの順番を待ってる人に、何も言わずに退屈しのぎのゲームを差し出していくとか、ありました(笑)。とはいえ、話す機会はずっとそんなにはないままで、ステージでの共演がかなったのも、ようやく2017年になってから。中田さんがご自身の郷里で主宰するイベント「OTONOKO」に呼んでくださいました。あのときの「FUSION」は忘れられないですね。ウチの親たちも、そこで初めて中田さんにお会いできたし。

あ〜ちゃん 中田さんのご両親もいらっしゃって。

のっち そうそう。両親同士が「本当にいつもお世話になってます」、「いやこっちこそお世話になってます」って。

あ〜ちゃん 見たこともない共感度で挨拶し合ってました。中田さんも人の子なんだなと(笑)。

かしゆか 息子の顔になってたよね。

中田さんに「日本語の歌詞も入れてください」とお願いしたんです。歌詞の交渉をしたのはそれが初めてだったんです(かしゆか)

楽曲作りに対して、何か積極的な気持ちが出てきたのはいつ頃でしたか?

かしゆか 私たちからリクエストしたことがあって印象に残っているのは、「Spending all my time」です。ちょうど海外のお客さんにも会いに行くことを目標に掲げ始めた時期だったんですけど、私たちとしては、「でも、日本が大好きです!」というスタンスで、実際そういう発言もしてたんです。そこへ上がってきたのが、英語詞だけの「Spending〜」。あんなに「日本が大好き」とか言っといて、英語詞だけっていうのはないだろうということで、中田さんに「日本語の歌詞も入れてください」とお願いしたんです。歌詞の交渉をしたのはそれが初めてだったんですけど、結果、聞き入れてくださって驚きました。思ったことを言い合える関係になれたんだなと思えたのが、うれしかったですね。

のっち 「edge」も思い出すなぁ。歌入れの日に熱を出してしまい、鼻声しか出なくて、そんな自分がすごく悲しくて、泣きながらレコーディングしたんです。中田さんは「鼻声もなかなかいいよ」などと、いろいろ言葉で応援してくれて。

あ〜ちゃん それ、すごく憶えてる。

のっち 泣いたってことは、体調をちゃんと管理して歌に臨まなきゃという意識が自分あったんだろうなと。

レコーディングのことを思い返すと、そのときどきのスタジオの風景が浮かぶんですよ(のっち)

なるほど。そういった歌の面についてもっとうかがえるとうれしいです。

あ〜ちゃん 「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」は、「こんなメロディアスな曲を書いてくれたんだ」とすごく感動してたので、歌うのがすごく楽しみだったんですね。中田さんの仮歌の雰囲気を感じながら、自分なりに「こうがいいかな。ああがいいかな」と、歌い方をいろいろと考えたりもしてました。歌入れの日、「どういう歌い方でいきますか?」と初めて中田さんに質問したんです。そしたら、直接それには答えてもらえず、「歌った感じを生かして作るからいいよ」と。それで全然わかんなくなりました(笑)。最終的に、ちょっとR&Bの人が歌うみたいな強い歌い方をしてますね。懐かしいです。

のっち レコーディングのことを思い返すと、そのときどきのスタジオの風景が浮かぶんですよ。最初の頃は、中田さんからボーカル・ブースは見えなかったんですけど、『LEVEL3』の頃、一度仕切りがガラス張りになったことがあった。あれは恥ずかしくてヤでしたね(苦笑)。

かしゆか 52曲の半分より後ろの頃になると、私自身いろんな歌い方にチャレンジするようになりました。ただただフルコーラス歌って、中田さんのチョイスを受け身で待つんじゃなくて、「1番は強めに、2番はちょっとやわらかめに歌ってみよう。どこが選ばれるかな?」と実験する感覚が生まれました。

Perfumeにとって大きな変化となった曲は?

のっち やっぱり「ポリリズム」かな。CMに起用されたり、歌番組からのオファーが増えたり、『CARS2』の挿入歌となってハリウッドのレッドカーペットを歩いたりと、初めての経験をたくさんくれましたね。

あ〜ちゃん 「ポリリズム」でみなさんが急激に注目してくださった時に出した「love the world」は、ミディアム・テンポということもあって、実はちょっと心配だったんです。でも、それをも楽しむ関和亮率いるビデオチーム。モノクロで戦うなんてそのアーティスティックな仕事ぶりに信頼が深まりました。それまでにない上等な生地の衣装を着せてもらえたのが「ワンルーム・ディスコ」。あのときは「売れたな」と思いましたね(笑)。

かしゆか 最初の海外ツアーで、「言語の壁を越えた」と思えたのが「MY COLOR」です。「手のひらが世界中繋がるウインドウ」という歌詞の直前1音目で、みんなと手のひらをかざし合った瞬間、本当に気持ちがつながり、世界の人々とひとつになれた気がしました。

自分たちがファン・サービスの塊だからじゃないかなと思うんです(あ〜ちゃん)

ここまで長く続けてこられた理由は何だと思いますか?

あ〜ちゃん 自分たちがファン・サービスの塊だからじゃないかなと思うんです。全然求めてもらえなかったときの心情とか景色が頭にこびりついているから、今、こんなに多くの人が求めてくれることがすごくうれしくて、ありがたくて、それに応えたいと思う。たぶん、そういう人がひとりでもいる限り、Perfumeは続いていくんだと思います。

のっち 無理するところと無理しないところのバランスをとるようにしたこと。そして、自分たち自身も「無理せんとこ」、「ここは頑張ろう」とメリハリを持って活動してきたことがよかったんじゃないかと思います。

かしゆか やったことないこと、見たことないことを見つけて、挑戦するのが好きな人の集まりなんですよ。だから常に新鮮な気持ちで、楽しいと思いながらやれてるんだと思います。

10月には「Reframe 2019」が、来年2月には4大ドームツアー「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed”in Dome」も予定されています。

のっち 「Reframe 2019」は正味8日間ですけど、今後目標にしている常駐公演という夢の第一歩となるはずです。これまでステージで培ってきたことを最新のカタチで再構築して、みなさんと一緒に楽しみたいと思います。

かしゆか ドームツアーは『P Cubed』が中心となるので、もう曲は選び放題(笑)。「自由すぎてどうする?」ってくらいだと思うので、まず私たち自身が楽しみでしかたないです。日によってセトリを変えちゃおうか、なんて、またスタッフ泣かせのことも考えちゃうかも?! まさにやってないこと、見たことないことに、チームみんなで挑戦するアニバーサリーなツアーになると思います。ぜひ目撃しに来てください!

「Perfume The Best “P Cubed”」特設サイト
http://www.perfume-web.jp/cam/best-pcubed/

その他のPerfumeの作品はこちらへ。


ライブ情報

「Reframe 2019」

[会場] LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

[日程]
2019年10月16日(水) OPEN 18:00/START 19:00
2019年10月17日(木) OPEN 18:00/START 19:00
2019年10月19日(土) OPEN 16:00/START 17:00
2019年10月20日(日) OPEN 15:00/START 16:00
2019年10月22日(火) OPEN 15:00/START 16:00
2019年10月23日(水) OPEN 18:00/START 19:00
2019年10月26日(土) OPEN 16:00/START 17:00
2019年10月27日(日) OPEN 15:00/START 16:00

「Reframe 2019」特設サイト
http://www.perfume-web.jp/cam/reframe2019
※詳細は随時、特設サイトでお知らせいたします。

初の全国4大ドームツアー開催決定!!

2020年2月1日(土)   京セラドーム大阪 ・ 大阪
2020年2月2日(日)   京セラドーム大阪 ・ 大阪
2020年2月8日(土)   福岡 ヤフオク!ドーム ・ 福岡
2020年2月15日(土)   ナゴヤドーム ・ 愛知
2020年2月16日(日)   ナゴヤドーム ・ 愛知
2020年2月25日(火)   東京ドーム ・ 東京
2020年2月26日(水)   東京ドーム ・ 東京


Perfumeオフィシャルサイト
http://www.perfume-web.jp