卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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あいつの事はよく知らねぇよ、俺と関わりは殆ど無かったしな。でも強かったのは知ってるぜ。ユーハバッハに俺の力を試せなかったのは残念だったけどな。

元死神代行 黒崎一護


原作開始前
1.始まりの嘘


護廷十三隊(ごていじゅうさんたい)、創設者である山本元柳斎重國(やまもとげんりゅうさいしげくに)が総隊長を務める尸魂界(ソウルソサエティ)の守護及び現世における魂魄の保護、虚の退治等の任務をこなす実動部隊。

 

その名の通りに十三の部隊で構成され、一隊二百人強、総勢三千人程度が任に就く死神の集団である。

 

高潔な精神と、強靭な肉体を持った精鋭集団だ。

 

なぜ急にこんな話をしたかと言うと、俺が今年からこの集団に勤務することになるからである。

 

俺の名は萩風(はぎかぜ)カワウソ、今年から死神になる男だ。

 

なぜ死神になったかと最初に言うと「女の子にちやほやされたい!」からである。不純とでも何とでも言うと良い、俺はこれを信条に生き続けるのに誇りを持っている。

 

ちなみに女の子への渇望だけあってか、彼女どころかガールフレンドも居ない。てか、話す機会が無い。俺自身もわかりきっているが、容姿は中の下である。声はまぁまぁ良いかもしれないが、正直影響はほぼゼロだろう。

 

この死神になるには養成する学院でしっかりと成績を残せた者がなれるんだが、その成績も中の下!!

 

てか、浅打(あさうち)っていう死神の武器となる斬魄刀(ざんぱくとう)になる前に配られた刀を斬魄刀にできなかった…

 

なんだよ…サクセスストーリーの影すら見えねぇよ。

 

夢見ていたんだな、俺は特別な死神で…いつか自分の才能が認められるような事件が起こると。

 

それを俺の唯一慕う…いや、そもそも仲良いの一人しか居ないけど、先輩に言ったら「目を覚ませ」と酔っ払いながら言われた。

 

そんな学院でもパッとしない俺に、当然というか友人すらできなかった。てか、思い付きで入ったせいか、周りとの温度差もあったんだよなぁ。

 

そんな学生生活を送ってれば…うん、結果もね…まぁそこは置いとこうか。

 

俺は四番隊に配置された。

 

四番隊とは一言で言うと医療班で、後方支援の最前線にあまり出ない唯一の班といっても良いかもしれない。斬魄刀をモノにできなかった俺が入るなら妥当ではあるだろう。

 

理由は合法的に女の子に触れ合うつもりで入ってない…とは言わないけど、回道はそこそこできるんだよね、俺。でも斬魄刀とかさっぱりですね。

 

護廷十三隊がイケメンを抹殺するための集団だったら、俺は斬魄刀をモノにできたと思うんだよなぁ。

 

卍解(ばんかい)とか、夢のまた夢だよなぁ〜。

 

☆☆☆☆☆

 

いつもよく飲む居酒屋で、俺たちは飲みに行っていた。

 

名目は一応、俺の死神としての就任おめでとうの会である。

 

だが目の前の男、まぁ先輩としか呼んでないからそこは置いとこうか。この人は何かと理由をつけて酒を飲みたいだけなのだろう、この人と知り合った理由なんてたまたま出身地が近いだけだし。

 

うちは圧倒的な過疎地で、かなり遠方から来てるからだろうな。知り合いなんざ居ないし、友達も居ない。てか家族も居ないわ、気づいたらよくわからんボロい母屋で暮らしてた気がする。

 

まあそこは置いといて、やはり俺もこれから死神になるわけだが、まだ俺は春を諦めていない。これからどうすれば良いのか、酔っ払って気分が良くなって来た先輩にご教授願っていたところなのだが。

 

「…すみません、よく聞こえなかったんですが」

 

俺はなんか聞きたくない単語が聞こえた気がした、そりゃとんでもないレベルの。

 

俺は聞き返すと気分の良さそうな先輩はもう一度答えた。

 

「席官になりたかったら最低でも卍解はせんと「くそがぁっ!やっぱり聞き間違えじゃなかった!!」うっさいの、ボケ!」

 

先輩に想定外の現実を教えられたが、今は我慢だ。とりあえず、俺の中の情報を整理したい。

 

「始解できたら席官って噂は嘘なんですか!?」

 

俺には友人は居ない、てか死神の知り合いがこの人しかいない。でも噂程度には小耳に挟んでいる。始解とは斬魄刀の解放の第一段階、だがこれを物にするのにも辛い修行が待っていると聞いている。

 

というか、目覚めないで終わる人も居るそうだ。

 

でも所詮は噂、真実を確かめるには現役の死神から聞くのが一番だ。

 

俺の熱い眼差しを注ぐと、先輩は手に持つとっくりの酒を一気に飲む干す。

 

そして不敵に少しだけ笑う。あ、冗談だったのかな?

 

「ふっ、嘘やな」

 

「ちくしょうめがぁぁ!!」

 

俺は思わず店内で叫び声をあげてしまう、だが今日は俺たちのような宴会をしている客が多いからか追い出されたり目立ったりはしていない。

 

まぁ、だからいつもこんな所で酒を飲んでいるのだろうが。

 

「まぁ席官なんて夢のまた夢、隊長なんざ更にその夢やな!」

 

くそ、席官って雲の上の存在と思ってたけど怪物じゃねぇか!

 

言い忘れてたが、卍解ってのは斬魄刀の最終解放された所謂真の力だ。逆に言えば、そこで斬魄刀としてのパワーアップは終わる。だが護廷十三隊には13人の隊長がいるが、席官はその9倍居る。

 

「あれ、でも卍解って斬魄刀の最終解放ですよね?そしたら席官と隊長の差ってそこまで無いんじゃ…」

 

でもそれだと隊長は席官レベルの力を持って居たら誰でも良いって事になるんじゃないか?

 

「あ、あぁー…そうやわなぁ…ー」

 

先輩は何か言い淀んでいる、これは…まさかここまで全て嘘だったって事か。人の嘘を見抜くのが下手くそな俺でも、これは流石にわかるな。

 

と考えていると、先輩の顔つきが変わった。しかも、なんか手招きして来て耳を差し出すように仕向けられる。

 

なんだ?財布でも忘れたのだろうか?そう俺が考えていると、先輩は静かに話し始めた。

 

「ここだけの話や、実は……隊長は更に上をできなならん」

 

更に…上!?ふぁっ!?

 

「卍解の先…!?そんなの存在するんですか!?」

 

「せや」と先輩は酒を飲みながら頷く。なるほど、これは護廷十三隊でも一部の人しか知らないような事実なのかもしれない。

 

だから先輩は言い澱み、考えたのだろう。まさか……俺には言っても大丈夫と決断したのか?俺はそこに至る才能があるかもしれないって事か!?

 

「それはいったい、どんな力ですか!?」

 

俺は先輩に詰め寄る。知りたい、その力とは何なのか!!!

 

「えっと…えぇ…卍解・改弐(ばんかい・かいに)!!そんな先の力があるんや!」

 

先輩は少しテンパっていた気もするが、その力をおしえてくれた。

 

卍解・改弐(ばんかい・かいに)

 

まさか、そんな力があるなんて…解放したのに改めてるのか。なんか変な意味になってる気がするが、たぶんそんだけ凄い力なんだろう。

 

隊長格の死神は化け物か!?

 

そんな存在に、俺はなれるのか!?

 

ここで俺の頭の中で学院に居た頃の女子の会話を思い出す。

 

『隊長って、もう隊長ってだけでカッコいいよね!』

『そうそう、私もあんな男の人と一晩でも付き合いたいかも』

『顔つきが歴戦の戦士って感じで、もうその目で射抜かれたら大変よ!』

 

「ふっ…」

 

やばい、隊長ってとんでもないな。女の子にモテモテじゃん、先輩だって認めて話してくれたんだぞ?俺は隊長格になれるだけの器だってさ!なら、目指さないわけないよな。

 

女の子がその先に居るなら、俺は必ずその先に行くぞ!

 

「先輩、俺はどうすれば良いんでしょうか!!」




息抜きに書いてたらたまったので投稿します。

あ、先輩はオリキャラです。勘違いというのを起こした諸悪の根源です。

これ以降はそんな出て来ません。

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