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『あつまれ どうぶつの森』NGO運営とされた「おたから島」は“非公式”?食い違う双方の説明と混迷する事態【UPDATE】

広く国内メディアで宣伝された『あつ森』のNGO運営島は「非公式」だった……?取材を進めるにつれて明らかになった双方の食い違いとは。

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先日Game*Sparkでもお伝えした、国際環境NGO「コンサベーション・インターナショナル・ジャパン」(以下、CIジャパン)が運営するとされた、『あつまれ どうぶつの森』を利用しての、生物多様性をテーマとした地球環境問題啓蒙コンテンツ「トレジャーアイランド」。一見シリアスなゲームの使い方として望ましく見えた同コンテンツですが、その制作・運営は大きな問題のもとになされていた模様です。

『あつまれ どうぶつの森』で環境問題を学べるコンテンツと思えたが……


事の発端は、2020年10月9日に当のCIジャパンが、「ニュースリリースは当団体のものではない」、簡単にいえば第三者による騙り、“嘘”であると告知したことに始まります。


通常メディアで記事化する“ニュースリリース”は、事業者(ゲームメディアでいえばパブリッシャーやデベロッパー)が直接発信するもの、あるいは広報業務を請け負った代理店(あるいは個人)から発信されるものの2種類に大別されます。今回のケースではかねてからやりとりのあるPR代理店から事前に送付されていたリリースを元に編集部で記事に起こして掲載しました。加えて、当該のコンテンツの完成度は高く、決して“いたずら”で片手間に作成が行える内容ではないということで、編集部側でもなんら疑いなくコンサベーション・インターナショナル・ジャパンを主語として記事を掲載しています。

事前に編集部に送付されていたプレスリリースより抜粋。
本企画がCIジャパンが主導となっている旨の記載が確認できる

この不可解極まりない事態を受け、Game*Spark編集部では、即座にCIジャパンおよびトレジャーアイランドPR事務局の両者にコンタクトを取りました。

双方の主張が真っ向から対立


取材に対し、本企画のPR・広報業務を請け負うPR代理店(トレジャーアイランドPR事務局)は「CIジャパン側の人間と複数回の協議を重ね、島の仕様や関連する情報発信など事前に承認を得ている」としプロジェクト自体「NGOの選定パートナー」によって行われたものであり、企画合意から実施合意、そして3ヵ月以上にわたる制作物の確認、またリリース時における協力クレジット合意などを実際に行ったと主張。また関連グッズの制作においては任天堂の監修も受けているとしています。

一方、CIジャパン側は「当団体とは全く関係がない、団体名とロゴは無断使用である」と取材に対し再度主張。正確には「以前「トレジャーアイランドプロジェクトチーム」なる団体から2度ほどの企画提案はあったものの、本部の承認が必要で、責任が取れないとして断った」として、このようなやり方を強行した団体に憤りを感じているとしました。また、リリースの発信についても事前に連絡はなく、PR代理店とも面識はない、と該当コンテンツに係る一切の関与を否定しました。

編集部としては当初、CIジャパンが本プロジェクトの主体となっているとしたリリースをそのまま記事化しており、内容に誤りがあれば、直ちに修正すべきと考えて両者に確認をしましたが、双方の主張は真っ向から対立。協議が続けられるということで、どちらが正しいのかその決着を待って記事の訂正をしたいと双方に伝えていました。

突如の運営移管とCIジャパンを外した新チームの発足


ところが今週に入って事態は急転します。10月13日深夜に元々公開されていた「公式サイト(https://treasure-island.jp/)から全コンテンツが消え、お知らせとして下記のメッセージのみが掲載されました。


一連の問題が何を指すのか、また何を協議しているのか、一般のユーザーからはなかなか把握しづらい内容となっており、このアナウンス内で運営主体も移管されたことが明らかになりました。そして、時を同じくして、同プロジェクトからCIジャパンを抜いた「新サイト(https://treasure-otakara.com/)が登場します。

この動きに対して、PR代理店は「CIジャパンとの話し合いを経て新たなチーム体制でプロジェクトが進行することになった」と説明する一方、CIジャパン側は「新たにプロジェクトが進行することは聞いていなかった」とここでも双方の主張が真っ向から食い違う事態に。PR代理店によれば、旧運営事務局と新運営事務局は明確に違う組織体であり、CIジャパンとの協議は旧運営事務局が対面にたっているということで、一連の騒動について新運営事務局は関与していないということです。

当初編集部としても、いたずらにことを荒立てるより、決着を待ってから事実を伝え、元記事においても必要な箇所を訂正するべきだと考えていましたが、事態が一向に収束をみせないため現時点で判明している取材内容をお伝えすることにしました。今後も旧運営事務局とCIジャパンとで協議を重ねるということで、取材を続けながら続報をお伝えしていきます。

本プロジェクトの関係図(編集部制作)


※UPDATE(2020/10/18 11:44):CIジャパンより本件について新たな声明が出されました。
《Game*Spark》
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  • スパくんのお友達 2020-10-18 7:47:14
    そもそも運営主体の移管が本当は何を意味してるのかわからない。
    CIジャパンの名前使え無くなったことの整合性を取るために言ってるだけなのか、本当に移管したのか…どっちにしろ前後の主体の正体が不明過ぎて怖い。国とかヤクザとか出てこなきゃ良いけど…。
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  • スパくんのお友達 2020-10-18 7:38:39
    とりあえず『関連グッズの制作においては任天堂の監修も受けている』の部分は任天堂にも問い合わせていただきたいです。
    昨日まではwhoisでの検索結果に名前が出ていた旧サイト・新サイトドメイン登録者の株式会社DLXや、当初ウェブ電通報に運営主体として書かれていた株式会社マテリアルはどういう関わりなのでしょうね。
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  • スパくんのお友達 2020-10-17 13:59:02
    ばああああああして
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  • スパくんのお友達 2020-10-17 12:54:31
    どうせまた日本抜きで話し進めてたってオチじゃないんか
    もしくは本社の方と濃厚接触や金積んで口約束を取り付けたとか
    取り消したって事は後者の方が濃厚なのかな?
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 22:45:17
    受注してないって事は、PR会社は、グッズ販売で儲ける予定だったって事?
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 21:49:46
    契約書出せないってことは受注してねぇな
    新事務局作るとか
    有耶無耶にして逃げる気マンマンじゃん
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 21:29:05
    一応企画の話自体があったことは認めてるわけだから、双方の担当者が日本のビジネス現場でありがちな肯定なのか否定なのか曖昧なやり取りしてたんだろうね。
    それで形成された認識が双方で異なってたもんだから騒動になったと。
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 20:52:43
    せっかくいいコンセプトなんだから
    どちらか折れてイベント終了まで穏便にしとって
    後から子供の見てないところで決着つけろよ
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 20:01:42
    PR代理店の素性もはっきりしないし、NGO団体もかなり怪しげだ。特に収益源もなく、ボランティアで島の運営をし、リアルグッズのプレゼント企画をやっているだけ。金の流れがはっきりしないのも怪しい。

    場末の広告代理店にこんな体力はないだろうし、ゲムスパも「かねてからやりとりのあるPR代理店」と書いているから、相応に大きいところが裏で噛んでいるんだろうが、どうなんだろう。

    任天堂の監修を受けているという主張が本当なら、環境とかグルメとか、表面だけイメージを取り繕った怪しい案件に協力をすべきではないと思う。
    22 Good
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  • スパくんのお友達 2020-10-16 19:49:32
    AMD JAPANの顛末を思い出した
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『Ghost of Tsushima』前編:英語から考える冥人にとっての「HONOR」とは?【ゲームで英語漬け#31】

第31回は『Ghost of Tsushima』を特集します。10月は文永の役が起きた時期でした。

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1274年10月3日、高麗を征したモンゴル帝国が対馬・小茂田浜に襲来。対する日本側はわずか80騎のみで立ち向かい、奮戦空しく部隊は全滅しました。世に言う「文永の役」の開戦です。

今回取り上げるのは、元寇の対馬を舞台にした侍アクションRPG『Ghost of Tsushima』です。昨日17日には待望のマルチプレイモードが実装され、再び対馬に馳せ参じる侍達も多いでしょう。対馬では鎮魂のため毎年「小茂田浜神社大祭」が行われており、今年も11月8日に開催予定です。疫病対策を講じた上で、本作の舞台となった史跡に足を運んではいかがでしょうか。

練習問題の解答


回答例:ま、とにかくクロのおしおきを始めちゃおうよ! だって、“みんな”がお待ち兼ねだからね!
“waiting for”を単純に「待っている」としても間違いではありませんが、ここはストーリー上重要な場面なので一ひねりほしいところ。こんなときは類語辞典(シソーラス)を使ってもっと印象的になる言葉を探しましょう。最近は機械翻訳も質が良くなっているので、翻訳をやるなら類語辞典を使ってディープラーニングに負けない語彙力を身につけましょう。

Let’s Play in English:日本訛りも立派な英語



本作では登場人物のほとんどが日本人なので、登場人物の喋りは日本人のアクセントに寄せているようです。地名や人名も日本語の発音に準じており、違和感のあるところはほとんどありませんでした。武士や僧侶身分のある人々は丁寧に話すので聞き取りもとてもやりやすいですね。地名はわかりやすさを優先して「Golden Temple」「KISHI Grassland」のように固有名詞でなければ英語に訳してあります。

蒙古兵の言葉は日英共通ですが、「Rice!(米を出せ)」と言葉を使い分けているのが確認できます。日本語では吹き替えの都合上蒙古兵が何を言っているか分からないまま、雰囲気で察するという形になるので、ここは日米での大きな違いです。


俳句はもちろん形式に則ったもので、ダイスケ・ツジ氏による落ち着いたトーンの朗読は日本語とは違った味がありますね。


海外のプレイヤーでも思い入れが出来るように、馬の名付けにも意味が併記されています。


天照大神や迦具土神など日本の神は“kami of ~”と表されます。通常使われる「Divine」や「Spirit」は西欧宗教のイメージが入るので、「神」はそれらとは世界観や信仰の精神を異にするということです。制作者が日本の精神性を大事にしていると分かる表現ですね。

「誉れ」以外にもあったもうひとつの「HONOR」



「誉れ」――作中で侍の精神を表すものとして語られ、仁の生き方の根底を成す言葉です。自らを律する姿を見せ、そして強大な敵に立ち向かう武勇を民に示す。仁を育てた地頭の志村はそのように説明します。非道な手を使わず、正しい方法で勝つことが肝要であると。
誉れを捨て去れば侍でなくなるのか――そんな葛藤が本作の大きな軸となるのですが、実は英語版には翻訳が出来なかったもう1つの「HONOR」があります。


神社や墓に「手を合わせる」ことを、英語では“HONOR ~”と表しています。ここでは動詞としての「Honor」ですね。ケンブリッジ辞書では“to show great respect for someone, esp. in public:”とあり、『Ghost of Tsushima』では神や死者に対して畏敬の念を示す日本の所作を表現しています。

神社や祠に礼拝すると、お守りによって仁に加護が授けられますね。この文脈からすると、侍における「Honor」とは「民に尊敬される武勇を持つ」「助けを求める声に応える」ことが重要です。優れた武人が伝説になるように、民にとって侍は一種の守り神のような存在なのです。一般人を超えた神懸かり的な武勇を持っているのではないか、そんな期待も含まれているかもしれません。

冥人は残虐な殺しで恐れられつつも、対馬を蒙古から救う武人として民の期待を背負います。荒魂と和魂が表裏一体であるように、「畏れ」と「敬い」を同時に受ける仁は、侍とは違う「荒神」のように「Honor」を人々から受けていると言えるでしょう。

覚えておきたい英単語集


  • Peasant:百姓
  • Resolve:決意、不屈の精神、気力
  • Deflection:逸らす
  • Traitorous:裏切りの
  • Stagger:よろめき
  • Massacre:皆殺し
  • Conspiration:謀議
  • Attire:装束
  • Straw hats:菅笠衆
  • Heavenly Strike:紫電一閃


今週のキーフレーズ:You have to do whatever it takes to survive.



生きてくためには何でもやらなきゃ

屈辱的な敗北の末、死にきれなかった仁に、ゆながかける言葉です。道半ばの討ち死によりも、手段を選ばず生き抜く。侍の生き方しか知らなかった仁が、彼女の言葉でその価値観を揺るがされる場面ですね。“do whatever it takes to ~”は「~のためにはなんでもやる(手段を選ばない)」というフレーズで、切羽詰まったシーンでよく登場します。“It takes ~”は「時間がかかる」という意味で使われますが、このような「必要なこと」と取る場合もあるので覚えておきましょう。 

練習問題:次の文を訳しなさい。



You forgot what it’s like to fight someone stronger than you.

同じ場面よりもうひとつ、ゆなの台詞です。討ち死にを望むような言動をする仁を、きつく諫める言葉ですね。口は悪くても他人を放っておけない彼女の性分をにじませるように訳してみましょう。
《Skollfang》
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  • スパくんのお友達 2020-10-18 14:46:26
    >登場人物のほとんどが日本人なので、登場人物の喋りは日本人のアクセントに寄せているようです。

    初めて知りました。
    とても興味深い内容で、素晴らしい記事だと感じます!

    あと「It takes~」で「必要なこと」という意味があるのですね。勉強になりました!!
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  • スパくんのお友達 2020-10-18 14:09:46
    誉れ高い記事
    4 Good
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