@chablis777
シャブリ

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(裕一)はい…。 わっ 五郎ちゃん! 久しぶり!
(五郎)先生…。何だ 何だ? うわうわ…。
先生…。な… 何だよ! 何だよ!
先生…。ちょっと! や… やめて!
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(音)どうぞ。すいません。
ごゆっくり。
…で? どうしたの?
先生…。うん。
僕は もう駄目かもしれません。何が駄目なの?
梅ちゃんの実家でずっと修業を続けてきたけど…。はい。
岩城さんの試験に落ちてばっかりで。
いや… でも…。彼女と結婚する見通しが全然立たないんです!五郎君 五郎君…。
五郎君の腕はいいって 前音のお母さん 言ってたよ。
うん? な… 何でだろう?
(戸をたたく音)うん?
(戸をたたく音)はいはい… はいはい…。
(梅)五郎さん いるでしょう?あっ ちょっと…。
梅!
♪~
どこに…。
あっ… どうも。梅ちゃん。
やっぱり ここにいた!
どういうこと?
うん? 何?
ねえ 五郎さん…この際だから はっきり言いん。
えっ?私と結婚したくなくなったんでしょう?
はあ!?だからわざと試験に落ちるようなことを…。
そんなわけ…。引っ込みがつかんくなったから裕一さんに相談しに来たんでしょう!?違うっつうの!
じゃあ どうして!?ふだんは何の問題もなく仕事ができとる。
ちゃんと納品できる品質のものが作れとる。 なのに…試験になると全然で。
もう正直に言って。私のことが嫌いになったんなら。
違うよ!
おっかねえんだ。
(岩城)始め。
はい!
(五郎)次こそは受からなきゃって…焦れば焦るほど手が震えて思うように動かなくなって。
あれ?
いてっ!
自分でも情けねえと思うけど…。
いや… う~ん… わ… 分かるな~。
僕も すごく緊張する方だからとても ひと事とは思えないね! うん。
本番に弱い人っているよね。ねっ ここにいたよ…。
ちょっと!駄目な人間みたいな言い方せんでよ…。
かばった…。ねえ 五郎君…そういう時さ 頭ん中でね好きな音楽 流してみるといいかも。
好きな音楽?そう。 僕もね緊張して うまく言葉が出なくなった時いっつも頭ん中で 好きな歌 歌ってた。
そうすると 自然と不思議と心が落ち着くの。
分かりました。やってみて。やってみます!
頑張って!
頑張るよ! 約束する!
次は絶対合格する!
分かった。
ごめんね 巻き込んじゃって。
よかったね~ 仲直りできて。
今日は泊まってきんね。うん。
最近は配給される食料も減って大したもん作れんけど…。
(華)吟伯母ちゃん 来たよ。(吟)ありがとう。
梅~。久しぶり。
何事かと思ったじゃん!急に豊橋から出てきたっていうから。
お騒がせしました。いいでしょう。
3人で会うのも久しぶりだし。まあね。
ちょうどよかったわ。 お魚 持ってきたの。
わあ… ありがとう!
すごい…。ちょっと何ぃ!? それ もったいない!
今は 何でもかんでも貴重なんだから。
じゃがいもも皮に栄養あるんだから皮ごと煮れば おいしいのに!
ちゃんと家事やっとるの?やっとるよ!
どうせ 今も お母さん任せなんでしょう。
貸しん。 ほら。
♪~
いや~ お魚おいしかったね。(五郎)はい!
今 あんないい魚なかなか手に入らないですよ。
うん…。やっぱり軍人さんのうちはいろいろと優遇されとるんだね。変な言い方しんでよ。
軍人は お国を守るために命を張っとるの。
それに民間には分からん苦労だっていっぱいあるのよ。
あっ お義兄さん お元気ですか?
転属決まって いよいよ前線に行くことになったって。
そっか… 寂しくなるね。そっか…。
最初から その覚悟で結婚しとるからね。あ~ 豊橋の方は? どう?お母さん 元気?
うん 元気だけど…。
最近 特高に 目 つけられとる。
特高!?
(梅)キリスト教の中でもうちの宗派は監視の対象みたい。教会にも行けんし 集会も禁じられとる。
(吟)大丈夫なの?
目立つことしんかったら大丈夫だと思うけど…。
毎日のように監視されとるとやっぱり疲れるわ。
監視なんて…。
何も悪いことしとらんのにね。ねっ。
文学だってそうだよ。言論統制も厳しくなって小説書いとるってだけで監視の対象になる。
梅ちゃんも?私は書くよ。
今は出版できんくてもちょうど東京に出てきたし信頼できる編集者さんに見てもらうために原稿持ってきた。
そっか。
何でもかんでも統制されて不自由な世の中ね。本当だね。
お国を批判する人は裁かれてもしかたないと思うけど。
それ言いだしたら…文学も芸術も死ぬことになる。
表現の自由は侵されていいものじゃない。僕も そう思います。
今は 国民が一丸となってお国のために戦わんといかん時代なの。
うん…。 でも 人が心で思うことって止めれんじゃないかな?
一致団結とか 一丸となってとか言うけど人は みんな それぞれ違う考えがあって当たり前っていうか…。
(吟)やっぱり あんたは のんきよね。
いい年して世の中のことが何も分かっとらん。
そうかな? 私は音姉ちゃんの言っとること分かるけど。
だから…。
(ため息)
もういいわ。
(ノックとドアの開閉音)
(五郎)失礼します。あっ… ありがとう。
遅くまで大変ですね。うん。
懐かしいな…。うん?
作曲の道は諦めましたけど今でも音楽は よく聴くんです。フフッ。
先生のレコードも全部買ってます。うれしいな~ ありがとう。
今は 戦意高揚の曲しか作らせてもらえないんですかね?
うん?
書きたいものが書けなくなるって大変ですよね。
まあ… でも 僕はね求められるものには全力で応えたいなって思ってる。
まあ… 仕事が頂けることは本当にね ありがたいことだからさ。
ほっ ほっ ほっ…。
おはよう。おはよう!
何しとるの?うん? お芋作ってるの。
梅も やりんよ。
やだよ~。体 動かすと気持ちいいよ!
おはようございます。おはよう! よく寝られた?
はい。 ぐっすり。あっ 僕 手伝います。
あっ 本当に? じゃあ そこにあるから。はい!
よし…。どれ…。
よいしょ。
おお… 頼もしい!五郎君 農業にも向いてそうだね。
ありがとうございます。やめてよ うちの大事な跡取りなんだから。
おはよう。おはよう。
ああ… みんな 早いね。
よし! 五郎さん 私も手伝う。
んっ。えっ? さっき やらんって。
ハハハハ…。
1 2?そうそうそう…。
1 2!
梅ちゃん。うん?これ おばあちゃんにあげて。
わっ 華ちゃん作ったの?うん。
かわいい~。 おばあちゃん 喜ぶよ。本当?
うん。今度は お母さんと一緒においでん。
そうだね。・華~ 学校 遅れるよ。
は~い! 梅ちゃん またね。またね。
行ってらっしゃい。 気を付けてね。行ってきま~す。
それ 出版社に持っていく原稿?
うん。 大事なものだから 慎重に扱わんと。
よし…。
よし!
何? これ。
音楽挺身隊?
こんなのあるんだ。
行かんけどね。 柄じゃないし。
えっ? でも ここ入ったら歌えるんでしょう?
いや… でも ほらこういうの向いとらんから。
ふ~ん… その程度なんだ。
えっ?
お姉ちゃんの歌に対する気持ち。
こんな時まで大好きな歌ができるって幸せなことじゃん。
戦争がもっと激しくなったらできんくなるかもしれん。
なのに 何でやらんの?
庭仕事やっとるだけでいいの?
まあ… 私が口出すことでもないけど。
お世話になりました。今度は いい報告持ってきます。
待ってます。気を付けてね。
またね。うん。
久しぶりに梅ちゃんと五郎君 会えてよかったね。
じゃあ 仕事 行ってくるかな。ねえ 裕一さん。
うん? うん?
私… やってみようかな。何を?
音楽挺身隊。えっ?


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