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（ノック）
（猿橋）失礼します。（小山田）はい。
明日は　え～…　１３時より慰問講演。
１５時より演奏家協会の定例会議。
そのあと　坂梨大佐と会食となっております。
こちらは　新たに参加した音楽挺身隊員の名簿です。
どれ…。
古山　音？
（猿橋）古山裕一氏の奥様だそうです。
♪～
♪「泣いて　生まれて　響く命」
♪「きっと嬉しくて　笑っているんだ」
♪「僕らはきっと　出逢うでしょう」
♪「手を引き　背を押し　出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って　ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を　超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで　響くはエール」
（音）はっ！（潔子）音さん！？
潔子さん！
懐かしい～。　元気そうね。
潔子さんも参加するんだね。うん。
ほかにも　うちの卒業生いっぱいいるみたいよ。
へえ～。お子さんは？　大きくなったでしょう。
もう１１歳。あ～　そっか～。
身長こんな　もう…。そんなに大きいの。うん。
へえ～。
（神林）初めまして。
小山田先生率いる音楽挺身隊の顧問を務める　神林康子であります。この度の志願まことにご苦労に存じます。皆さんに心得ておいてほしいことがあります。
それは　音楽は戦力増強の糧であるということです。
我々が今日まで築き上げてきた日本の音楽を戦局のため　祖国のために全力でささげることが我々の使命であると心に刻み挺身活動に邁進して頂きたい！
（裕一）その神林さんとは何か話した？
まさか…。とてもそんな雰囲気じゃなかったし。
挺身隊も　ああいう感じだとは思っていなかったから　少し驚いた。
うん？　ああいう感じって？
何だか　すごい迫力だったの。
挺身隊っていうより　軍隊みたいだった。
う～ん…。
音楽の話より戦争の話ばかりで…。ついていけるかな？
まっ　ほら　まずはさ　慰問に行ってみて先のこと　そのあと考えたら？
うん…　そうだね。うん。
たくさん練習しなきゃ。歌うの久しぶりだし。
頑張って。うん。
当時　音楽挺身隊は軍需工場や戦時産業に関わる施設への慰問を通じて戦意高揚に努める役割を担っていました。
（蓮沼）本日は　よろしくお願いいたします。
♪～
♪「見よ東海の　空あけて」
♪「旭日高く　輝けば」
♪「天地の正気　溌剌と」
♪「希望は躍る　大八洲」
♪「おお清朗の　朝雲に」
♪「聳ゆる富士の　姿こそ」
♪「金甌無欠　揺ぎなき」
♪「わが日本の　誇りなれ」
（拍手）
（岩城）針じゃなくて糸を押すんだて。
（五郎）はい！
（光子）五郎ちゃん帰ってきてくれてよかったわ。
（梅）次の試験は頑張ってもらわんと。
東京までお迎え　ご苦労さまだったわね。
吟も音も　元気にしとったら安心だわ。
まあ　みんないろいろあるみたいだけどね。
そりゃあ　あるでしょう　大人なんだから。でも　大丈夫。
私の娘たちだからね。
そうだね。うん！
（２人）フフフフ…。
また来とるわ。
毎日　熱心なこと。
あっ…。
東京の出版社の方ですって。
僕も　この前　ちらっと会いました。
デビューの頃から　お世話になっててすごく信頼できる人だって。
へえ～　そう。
お忙しい中　ありがとうございます。
（森脇）しばらくの間作品は持ち込まないで頂けますか？
えっ？
作品自体は　すばらしい出来栄えです。ですが…ご一家に問題ありと　耳にしました。
監視されてらっしゃるでしょう？
申し訳ありませんが　今後関内さんとはおつきあいを差し控えさせて頂きます。
間違ってますよ…　こんな世の中。
（弘哉）音楽挺身隊？うん…　最近ね　慰問で忙しいの。
毎日ね　でも　楽しそうにやってるよ。
自分たちの音楽で喜んでもらえるの楽しいって。
音先生の歌　僕も聴きたいです。
あっ　そっか…　結局　そうだよね発表会できなかったもんね。
でも…　いつか絶対やろうね。
はい。　それまで　ハーモニカはずっと練習続けます。
うん。　…あっ！
はい。　これ　あげる。
昔ね　ハーモニカ倶楽部いた時使ってた楽譜。　よかったら。
いいんですか？うん。ありがとうございます。
吹いてみる？はい。うん！
♪～
ご苦労さまでした。
あの…　合唱　とってもよかったです。久しぶりに楽しい気持ちになれました。
本当にありがとうございました。
では　お出口までご案内します。どうぞ。
よかったね。うん。　次も頑張ろうね。
うん！
ただいま。お帰り！　今日　どうだった？
大成功。　すごく喜んで下さった。よかったね～。
これ　浩二さんからお手紙。
珍しいな。
（浩二）「兄さん　お義姉さん　華ちゃんお元気ですか？こちらは　なんとかやっています。りんご農園は男手が皆　兵隊に取られてしまい今は　地域の子どもたちが手伝っていて僕は　その指導係として日々　忙しくしています。母さんは　兄さんのレコードを毎日　聴いています。活躍を心から喜んでいるようです。ただ　最近…」。
母さん　お茶　入ったよ。
「体の調子を崩しがちなのが気がかりです。まだまだ元気と思っていてもやはり　親は年老いていきますね」。
お義母さん　大丈夫かしら？
うん　ねえ…　いや様子見に行けたらいいんだけどね。
近々　一度　みんなで行ってみましょうか。うん…　そうだね。
うん…。・ごめんくださ～い。
（吟）うちの婦人会の班長さんがまた　あんたに来てほしいって。
最近　音楽挺身隊で結構忙しくて…。
音楽挺身隊って小山田先生の？そう。
慰問の予定も詰まっとるし歌の練習もしんといかんし…。
あんたは　そうやって　いつだって好きなことしかやんないのよね。
好きなことをして何がいかんの？
好きなことで　誰かの助けになるなら別に　それでもいいでしょう？
向いとらんことを無理してやるよりいいと思う。
あんたって　時々とんでもなく残酷なこと言うわ。
うん？
自分には音楽があるけど私には何もないって　そう言いたいわけ？
お姉ちゃん？もういい。　帰る。
姉とは　ずっと一緒だったし何でも分かってるつもりでいたんですけど…知らない顔もあるんですね。（恵）うん…。
（保）まっ　これでも食べて元気出してよ。
これはね　米ぬかのチョコレート。米ぬか！
（恵）フフッ　米ぬかって時点でチョコじゃないけど。
はい…。
さあ。
うん。
どう？
う～ん…。
う～ん…　もうちょっと研究してみるわ。フフッ。
あっ！　音さんって三姉妹だったっけ？妹さんもいたわよね？
小説で賞を取った子だよね。えっと…　梅ちゃん？
ああ…　妹２人が音楽や文学の道で活躍してるとなると複雑なのも分かる気がするな。
ふだんは隠していた感情があらわになってしまう。
これも戦争か。
う～ん…。お水ね？　うん。　お水　持ってきます。
（智彦）世話になった。
行ってらっしゃいませ。
どうぞ　ご無事で。
軍人の妻は　無事など願うな。