@chablis777
シャブリ

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(潔子)合唱?(音)うん 慰問先の方々も一緒に歌ったら楽しいんじゃないかなと思って。
(蓮沼)いいかもしれません戦意高揚のためにも。
そういえば 音さん歌を教えてたって言ってたもんね。
うん。じゃあ 古山さん 選曲して下さる?
はい!
(裕一)ただいま。
・ただいま~。
ただいま!わっ! あ~ お帰りなさい。ハハハ…。
ごめんなさい。 気が付かなくて。ううん 全然。
すぐ ごはんの用意するね。うん。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
ドイツ語だと難しいし…。
やっぱり日本語の曲の方がいいかな…。
(華)お母さん。うん?おやすみ。
あ~ おやすみなさい。
ドイツ…。
お母さんって マグロみたいだよね。マグロ?
うん。 マグロって寝てる時も止まらないでず~っと泳いでんだって。
確かに。 お母さんが じっとしてるとこ見たことないかも。
ず~っと動いてる。うん。
うわ~っ…。うわ~って。ハハハ。
華 寝たよ。あっ ごめんなさい。 ありがとう。
挺身隊の合唱の選曲を任されたんだけど難しいね。
お茶いれようか。 一息ついたら?
・ごめんください。
大将かな?
おお どうした?(鉄男)悪いな こんな時間に。
ううん。おでん屋やってた頃 買っといた酒が出てきたから 誰かと飲みてえと思って。おっ!
いいんですか?裕一さん お酒弱いですけど。
大丈夫。ザルみてえな人も連れてきたから。
(木枯)久しぶり。木枯君!
いや~ 木枯さんの曲は名曲!全部 名曲だから!
「酒は涙か溜息か」いや… これが一番かな~。
でもね 「丘を越えて」も捨て難い!
だから 言ってっぺ 全部名曲だって。ハハハハハ。
今は さっぱりだけどな。全然書いてないし。
何で?書いても通らないんだよ。
「お前の音楽は軟弱だ。 もっと世の中の空気に合わせろ」だってさ。
ふ~ん…。でも 俺 そういうのって無理だし。
いや~ もう それで正解!
木枯さんの個性無理に曲げる必要なんてないんですよ。
うん そうだね!その方がね 木枯君らしいよ。
ありがとう。
俺も正直 今の音楽業界には違和感ある。
戦意高揚 忠君愛国そればっかしじゃ つまんねえしやりがいもねえと思ってな…。
だから一旦作詞から離れてみることにしたんだ。
だから新聞社行ったんだ。(鉄男)うん。
(木枯)裕一は大したもんだよ。うん?
求められてる音楽を 質を落とすことなく次々に生み出してる。
いや… 僕はね ただ お国のために頑張ってる人を応援したいだけ。
それが今の僕にできるたった一つのことだからね。
真面目だね。(笑い声)
(いびき)
頑張れよ。
できた!
あっ… ごめんなさい。
2人とも寝ちゃいました。ああ… 随分飲んだんですね。
お布団 出さなきゃ。木枯さんも泊まっていかれます?
ああ…いや ちょっと これが待ってるんで。
あっ… フフッ。
変わんないですね 裕一は。
まっすぐで純粋で。フフフ。
利用されなきゃいいけど。
うん?
あっ いや… お邪魔しました。あっ お気を付けて。
それじゃあ。
これは…?
(保)うどんかん。寒天の中に うどん入れてみたの。
怖い…。
やっぱ 駄目か…。
また新しいの期待してます。
いや… 実は この店一旦 閉めることにしたんだ。
(恵)この人ね近くの工場で働くことになったの。
勤労動員で。
そうなんですね。
こんな状態で店続けるのもしんどいなって思い始めてたんだよね。
代用コーヒーなんてコーヒーじゃないしそんなんじゃもはや喫茶店とは言えないでしょ。
そっか… 寂しくなるね。うん…。
(ラジオ)「大本営 海軍部発表。南太平洋 某方面において我が海軍部隊…」。
(ラジオを切る音)
しかたないよね。 そういう時代だから。
まあ 今日は ゆっくりしてってよ。うん。
2人とも 今日はお休み?
いや 午後から取材です。これから ラジオ局。
日曜日なのに大変ね。裕一君 ラジオ聴いてるよ。
相変わらず 戦果が上がる度に放送局に呼び出されてるの? 大変だね。
まあ 今は 戦意高揚の曲求められてますからね。
まあ… 大本営の発表と実際の戦況は結構違うみてえだけどな。
うん?
うちの記者の大本営担当が言うにはかなり旗色が悪いらしい。
ガダルカナルも転進じゃなくて本当は退却だった。
米英軍は 南方で 着実に反撃に転じてる。
でも 局に来てる軍人は 今はわざと隙を見せて 敵を引き付けてから一気にたたく大作戦 準備してるってもう少しの辛抱だからって。
そりゃ 軍人は そう言うべな。
いや… 新聞社だって同じ報道してるでしょ?
事実と違うならどうして それを報道しないの?
そだ単純な問題じゃねえんだよ!
あのな 俺たちだって本当のこと…。(ドアが開く音)
(保)あっ いらっしゃいませ。(恵)いらっしゃいませ。
(保)奥のテーブル どうぞ。
先生 今こそ更なる戦意高揚が必要な時期です。
ここが ふんばりどころですよ。
気弱になってる連中を 先生の音楽で奮い立たせてやりましょう!
さすがですね。
お見それいたしました。
どれも みんなで歌いやすそう。さすが音さんね!
よかった。
神林先生。
(神林)ご苦労さまでした。今日は練習日と聞きましたが?
はい。 慰問先の皆さんと合唱する案が出まして 今 選曲しておりました。
合唱?
こちらが候補の曲でございます。
これは… どういう基準で選んだのでしょうか?
あっ… はい それは…。
私が選曲しました。
歌いやすくて 心豊かになれる曲をと思って選びました。
何をなまぬるいことを!
いいですか? 我々の使命は軍需産業に従事する者たちの士気を高め日本の勝利に貢献することです。
音楽は軍需品なんですよ。軍需品?
今は芸術だの楽しみなどといったのんきなことを言っている時勢ではありません。
必要なのは決戦意識と戦力の増強。
戦争の役に立たない音楽など要らないのです!
それが分からないのですか!?
よく分かりません。
音楽は 音楽だと思います。
その音楽を聴いて 誰が 何をどう思うかは人それぞれで…。
あなたは何のために ここに来たんですか?
歌を聴いてくれた人たちに笑顔になって頂くためです。
話になりませんね。 お帰りなさい。
挺身隊に非国民は必要ありません。
ありがとう。
どうしたの?
神林先生に…非国民って言われてしまって。
さすがに こたえるね。
でも… みんなが同じ考えでなくてはならないのかな?
そうじゃない人は要らないっていう世の中は 私は嫌。
もちろん 私も自分の国は好き。
でも… 何よりもまず家族や友達 周りの人たちに幸せでいてほしい。
それって 自分勝手なことなのかしら…。
でも… こうなってしまった以上この国に生きる人間として…できることをやっていくしかないんじゃないのかな?
・ごめんください。
はい。
古山裕一さんですか?…はい。
おめでとうございます。 召集令状です。


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