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（華）痛っ！
（音）大丈夫？うん…。
もう　お布団入ったら？
・（戸が開く音）・（裕一）ただいま～。お父さんだ！
お帰り！遅くなってごめんね。
お帰りなさい。あっ…　音。
予科練の若者はね　すばらしかった　もう。
感動した！そう…。うん！
お父さん　鉄男おじさんが羊羹くれたよ。お父さんの分　取っておいた。
本当？うん。　来て。やった～！
すごい　おいしかったんだよ。おいしかった？　お父さんの　あんの？
♪～
♪「泣いて　生まれて　響く命」
♪「きっと嬉しくて　笑っているんだ」
♪「僕らはきっと　出逢うでしょう」
♪「手を引き　背を押し　出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って　ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を　超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで　響くはエール」
４か月後　映画「決戦の大空へ」は全国一斉に封切られました。
「若鷲の歌」のレコードも同時に発売。
どちらも大ヒットを記録しました。
♪～（「若鷲の歌」）
（保）いい曲だな～。
（恵）映画もレコードも大人気ね。
おかげさまで。　今はラバウル海軍航空隊の曲作ってます。
歌は　ビクトリーレコードの灰田勝彦さんなんですよ。
レコード会社違うのに？うん。
ラジオの企画だから実現したんです。
（伴坂）是非　我がビクトリー…勝利蓄音機でレコードにさせて下さい。
へえ～　すごい！　戦争になってからすっかり売れっ子作曲家ね。
うん…　戦争のおかげですかね。
あっ…　その　別に深い意味はなくて。
裕一さんの音楽は人の心を湧き立たせる力があるから今　求められるのかなって。
でも…　僕の曲で戦う人の力になるならそれでいいんじゃないかなと思ってます。
「古山裕一」って書いてある！
お前が行けよ。お前が行け。
ちょっと待って。　失礼かもしんないよ。
うん？　どうしたの？
古山裕一先生ですか？
はい。昨日　学校の行事としてみんなで「決戦の大空へ」を見てまいりました。
ほう～！感動いたしました！
感動しました！かっこよかったです！
映画館を出たら　自然とみんなで「若鷲の歌」を歌っていました。
すばらしい曲を作って頂きありがとうございます！
気を付け！
一同　敬礼！
直れ！
（梅）糸くず　ついてる。（華）お父さん　梅ちゃんと五郎ちゃんが来た。
（五郎）ありがとう。（華）結婚したって！
五郎君！　ハハハ…。先生～！
おっとっとっと…。あ～！
いや～　長かったね～！　よかったね～！
はい！　岩城さんのおかげです。
駄目な僕に根気強く教えて頂いて。
もう　梅ちゃんに振られるんじゃないかって心配してたんだよ～。
私には　五郎ちゃんしかいないので。
あら　お熱い…。　梅が素直にそんなことを言う日が来るなんて…。
お姉ちゃん　もう…。
お義姉さん　これ。
うそ～。ああ…　え～？
お姉ちゃんがそんなことで泣くわけないわ。（笑い声）
結婚できたのは　先生の助言のおかげです。
違うよ。　五郎君が頑張ったからだよ。
あっ！　あった。
五郎君　これ　覚えてる？
僕が書いた曲。そう。
結婚したら渡そうと思って編曲しといた。
一生の宝物です！ありがとうございます！いいえ。
五郎君　本当におめでとうございます。
作曲家には　なれなかったですけど今　僕は幸せです。
フフッ…　よかった。
ただ…。うん？
僕は馬具職人になります。
馬具のほとんどは　軍に納められます。
五郎君…　馬具は人を殺すための道具じゃない。
人や馬の命を守るためにある。
はい…　岩城さんにもそう言われますけど…。うん。
時々…　胸が苦しくなります。
先生は　なりませんか？
差し出がましいようですが先生には　戦争に協力するような歌を作ってほしくありません。
先生には　人を幸せにする音楽を作ってほしいんです！
僕の曲は　人を幸せにしてないかな？
先生の歌を聴いて　軍に志願した若者がたくさんいます。
五郎君…国のために戦いたいと思う気持ちは決して悪いことじゃないと思う。
戦わなければいいのです！戦いがなければいいのです！
現実　日本は今　戦ってるんだ。
多くの人が　勝つために命を落とした。
その命に報いるためにも戦い続けるしかない。
戦争に行く人が増えれば無駄に死ぬ人が増えるだけです！
命を無駄と言うな！
（足音）
（ドアの開閉音）
（足音）
梅…　少し出てくる。
うん。
・（戸の開閉音）
どうしたんだろう？
裕一さんの大声　初めて聞いた。
何があったの？
裕一さんは　自分が召集されんことを申し訳ないと思っとる。
みんな戦っとるのに自分は何もしとらんって。
後ろめたい気持ちが　どんどん　どんどん戦意高揚の歌に傾かせとる。
怖いの…。
ごめん。
そっか…。
あのね…五郎ちゃん　キリスト教に入信したの。
そうなの？
あの人　まっすぐすぎる。
ちょっと不安。
そうか…。
昔は　すぐ言い合いになっとったのに今は　落ち着く。
不思議だね。
そうね。
ありがとう。
梅…　結婚おめでとう。
ありがとう。
♪～
ちょっと…。フフフ…。
お世話になりました。
じゃあ　行くね。気を付けてね。
失礼します。
♪～
梅ちゃん　五郎ちゃん　またね。
まだ仲直りしてないんですか？
「聖書」渡された。そう…。
難しいね…　いろいろ。
久方ぶりに　弘哉がやって来ました。
すっかり大人っぽくなったよね。うん！
（弘哉）今日は　裕一さんと音先生に報告があって　来たんです。
報告？
僕　予科練に合格したんです。
（華）予科練って　この前お父さんが行ったところ？
そう！えっ試験　難しいんでしょう？　すごいね！
入隊する前に　最後に　裕一さんと音先生にお礼のご挨拶をしに参りました。
そっか。「決戦の大空へ」を見て心を動かされました。
私も仲間と共にこの国のために戦いたいと思ったんです。
それに　「若鷲の歌」を作った方がこんなに身近にいる。
これが私の目指す道だと気付いたんです。
裕一さんから頂いたハーモニカを持っていきます。
音楽教室　本当に楽しかったです。
ありがとうございました。
（トキコ）あの子が　自分から何かをやりたいって言いだしたの初めてなんです。
音楽を初めてから少しずつ自信がついたと思います。
お二人には　本当に感謝しています。
そんな…。
お国のために立派に戦いたいんだって運動も勉強も　すごく頑張ったんです。
そんな姿　見たら応援するしかないですよね。
弘哉君は本当に立派だと思います。
ありがとうございます。
最後の一個。
立派な飛行兵になってたくさんの敵を倒してくるよ。
♪「若い血潮の予科練の」弘哉。
♪「七つボタンは」では　失礼します。
♪「桜に錨」
♪「今日も飛ぶ飛ぶ」弘哉君！
♪「霞ヶ浦にゃ」元気でね。
♪「でかい希望の雲が湧く」
♪～
い…　慰問ですか？（山崎）はい。
軍から　先生に是非ということです。
いずれ出発のご連絡をさせて頂きますのでお待ち下さい。
はい。