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(裕一)「僕の曲作りは 人との触れ合いの中で生まれてきました。だから 一度は戦場をこの目で見たい。お国のために命を懸けて戦う人を現地で応援したいのです。必ず生きて帰ります。戦争が終わったらもう一度 夢の続きを始めましょう」。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
♪「朝も昼も夜もずっと そこにある」
♪「暗闇にほら響け 一番星」
♪「愛する人よ 親愛なる友よ」
♪「星影に響くはエール」
裕一の慰問先は ビルマ現在のミャンマーでした。
同行者は 作家の水野伸平と洋画家の中井潤一。
あっ。
(磯村)ようこそ。暑くて不快かもしれませんが不便がありましたら何なりと おっしゃって下さい。
当時 ビルマを占領していた日本軍はインド北東部の要地 インパールを攻略する作戦を開始していました。
(水野)内地では 3週間でインパールを陥落させると聞いてきましたがもう期限を過ぎています。戦況は いかがなんでしょうか?
まあ そう焦らずに。
皆さんは しばらくラングーンで休養してて下さい。
あっ 磯村中佐殿!
(中井)古山さん どうします?えっ?
あいつは ここでじっとしていられる人間じゃない。
今頃戦地に行きたいと頼んでいるはずです。
中井さんは どうされますか?
僕は水野と行きます。あいつのことが好きなんで。
♪~
「ラングーンの町は思いの外 静かであった」。
我が軍は主力部隊の後方…。
「戦況を聞くため 司令部に顔を出した。作戦は 予定どおりには進んでいないようだった」。
奇襲攻撃を仕掛け後方をかく乱しております。
「午後から 学校へ慰問に出かけた」。
「現地の子どもたちは驚くほど日本語がうまく私の歌を上手に歌ってくれた。土曜日の夜は 現地の記者連中も集まりすき焼きをした」。
ド~ン! ドンドン ドンドン…。
「水野さんは お酒が回ると変な浄瑠璃を語り 皆を笑わせた」。
デン! …どこまで言った?
ため池 ため池…。あ~…。
「1か月後 ようやく水野さんと中井さんは前線に行くことが許された」。
「別れ際に水野さんから詞を託された」。
♪~
「雨季に入った。来る日も来る日も雨である」。
「洗濯屋に出した衣類は カビが生えて出す前より汚い」。
(物音)
わっ わっ! あっ あああ…。
待て! あっ あっ…。
「サソリは ほうきで外に出した」。
お~ そうそう…。
「水野さんと中井さんも帰ってこない。心配だ」。
「ビルマに来て 2か月がたった」。
(足音)
「まだ戦地に行く命令が来ない。それほど戦況が悪いのであろうか」。
「このままでは 日本をたった意味がなくなってしまう」。
(ノック)
はい。・大倉です。 夜分遅く失礼します。よろしいですか?あ~ もちろんです。 どうぞ。
(大倉)失礼します。いや… すごい雨ですね。
失礼します。これ… あの…。
よかったら どうぞ使って下さい。
何か戦況の変化でもありました?あ~ いや そうではないんですが…。
先生は 福島の出ですよね?はい。
藤堂清晴さんって ご存じですか?
し… 小学校の恩師です。
そうですか~。はい。
藤堂さん… いえ 藤堂大尉はビルマにおられます。
ビルマに?ええ。 私も人づてに聞いただけですので詳しいことは分からないのですがよく先生の話をされているようです。
深いご縁があったようですね。いや… と… とっても!
では 藤堂大尉の配属先を調べておきますね。
ありがとうございます。おやすみなさい… あっ これ。
ありがとうございます。
おやすみなさい。おやすみなさい。
(光子)ご苦労さま。
(五郎)ありがとうございます。(光子)あら?
五郎ちゃん 一人で全部任されとるの?
(五郎)はい! 昨日から。
頼もしいわ。 岩城さんの指導のおかげね。
(岩城)いや… こいつの ひたむきさです。フフッ そうね。
まあ とにかく こんな世の中だけど仕事があるのは ありがたいわ。
五郎… 馬具は人と馬の命を守るもんだで。忘れるな。
何度も言われてますから 分かってます。
厠へ行ってきます。
今までは一人前になりたいって思いで突き進んどったもんが合格して立ち止まってしまって…。戦争に協力しとるんじゃないかって気持ちが あふれてくるようです。
心配だわ…。
(汽笛)
音と華は まさの病状が悪化したとの知らせもあり福島に疎開することにしました。
(浩二)先生 ありがとうございました。
(音)ありがとうございました。
(まさ)ごめんね。せっかく来てくれたのに寝てばっかりで。
いえ ゆっくりされて下さい。
華 もっと顔見せて。
んっ…。
はあ…。
はあ…。
♪~
兄貴の才能を開花させるきっかけだから。
ごめんなさい 勝手に。いや… フフッ。
いっつも じっと座って難しい音楽 聴いてた。
そっか…。もともと俺の誕生祝だったんだけどね。
フフフ…。
分からないもんですよね 人生って。
兄ちゃん 心配?
兄ちゃんは 軍にとって大事な人だ。
そんな危険なとこ行かせられっことねえよ。 なっ?
そうですね。ああ。
華ちゃん いい子だね。
おてんばだけど 優しい子です。
俺も早く結婚しねえと。
このままじゃ喜多一も権藤家も潰れちまあ。
母さん 倒れてから 急に焦ってきた。
どんな方がいいんですか?いい人がいたら紹介しますよ。
あっ… 原 節子みてえな?
(カラスの鳴き声)
ごはん作るわ。
あっ… 私やります 浩二さん。
(雨音)
あっ… お帰りなさい。
これを…。
失礼します。
前線は地獄です。
険しい山 濁流の大河 悪疫 食糧不足。
戦う以前に命を保つことさえ難しい。
前線部隊への武器や弾薬 食糧の補給も全く追いついていない。
それなのに進撃命令を出す司令官。
全て無謀で無駄な死… まさに犬死にです。
あの… 日本に勝てる見込みは?
ってか… あの…水野さん どうされたんですか?
更に先に向かいました。
この実情を伝えるのが作家の使命だと。
(雷鳴)
一杯の水がないだけで死んでゆく者がいます。
そんなこと許されていいのでしょうか?
古山さん… 日本は負けます。
命を尊重しない戦いに未来はありません。
(雨音)