菅内閣1カ月 政策全体像が見えない
2020年10月17日 06時43分
菅内閣が発足して一カ月。菅義偉首相はこの間、携帯電話料金引き下げなど、個別の政策に言及してはいるが、内政・外交にわたる政策の全体像が見えてこない。国会の場で誠実に語るべきである。
首相はきのう記者団に「振り返る間もなく、早かったなぁというのが率直な感じだ」と語った。首相には時の流れが速く感じられたのだろうが、私たちには「なぜもっと早く国会を開いて所信を明らかにしないのか」との思いが募る長い一カ月間でもあった。
首相はこの間、デジタル庁新設や携帯電話料金引き下げ、不妊治療の保険適用など、実現を目指す個別の政策には言及してきた。各国首脳とも電話で会談している。
しかし、どんな社会を目指すのか、国際社会とどんな関係を築くのか、ここから読み取るのは困難だ。どれも散発的で首相交代を実感させる政策に乏しい。「自助、共助、公助、そして絆」というだけでは具体像は結ばない。
これは首相が、国民を代表する国会と誠実に向き合わず、説明したり、質問に答えたりしていないことと無縁ではあるまい。
菅内閣は首相指名選挙や組閣を終えると、すぐに国会を閉じてしまった。今月二十六日に臨時国会を再召集する予定だが、首相が所信表明演説を行うのは九月十六日の組閣後四十日もたってからだ。
菅氏と同様、任期途中で首相を引き継いだ福田康夫、麻生太郎両氏の所信表明はともに組閣の五日後。四十日後は極めて異例だ。
しかも、菅首相が記者会見を開いたのは就任時だけ。質問できるメディアを限定した内閣記者会のインタビューを二回行い、記者団の質問に答える短時間の取材機会はあったが、内閣記者会が求める会見には応じていない。
これでは国民への説明責任を果たしたことにはならない。
首相には政策の全体像に加え、詳細な説明が必要なことがある。日本学術会議推薦の会員候補のうち六人の任命を拒んだ問題だ。
首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と述べているが、抽象的で説明になっていない。首相の任命を形式的とし、裁量を認めなかった従来の法解釈を、一片の内部文書で変更したことの妥当性も厳しく問われなければなるまい。
所信表明演説、各党代表質問に続き、一問一答形式の予算委員会も始まる。首相は自ら目指すところを詳細に説明し、国民の疑問にも誠実に答えるべきである。
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