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 国有地の売却額を値引きした時の算出過程に問題がある。公文書を改ざんした経緯を詳細に記録したファイルが残されている――。森友問題をめぐり、見過ごすことのできない「証言」が新たに浮上した。政府は国民に説明する義務がある。

 改ざんに加担させられたことを苦に自死した元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻雅子さんが、国などに損害賠償を求めた裁判での出来事だ。俊夫さんの元上司で売却契約時の担当者の発言とされる音声データを、原告側が証拠提出した。

 問題の国有地の価格は、鑑定で9億5600万円だったが、地下のゴミの撤去に費用がかかるとして1億3400万円に減額された。一連の森友疑惑の原点だが、音声データによれば、国側の当事者がずっと疑念を抱いていたことになる。

 元上司は昨年3月に雅子さん宅を弔問で訪れた際、値引き額を決めたのは国土交通省大阪航空局だったと説明したうえで、「この8億の算出に問題がある」「撤去費用が8億になるかという確証が取れてない」などと語った。特定の政治家に配慮して減額したわけではないと言いつつ、契約について繰り返し悔いを口にしたという。

 改ざん行為についても、俊夫さんが財務省本省とのやりとりなどをまとめたファイルがあったと述べ、「どういう過程でやったかが全部わかる」と説明。佐川宣寿(のぶひさ)・元財務省理財局長の名をあげた雅子さんに、「(改ざんは)もちろん佐川さんの判断」と答えたとされる。

 原告側は裁判でこのファイルの提出を求めており、関係者の証人尋問も申請する考えだ。国側がこれに真摯(しんし)に対応すべきなのは言うまでもない。

 改ざんを命じられた俊夫さんの精神的苦痛や、自死との因果関係の程度を判断するうえで、経緯の解明は欠かせない。あわせて主権者であり納税者である国民にも、なぜこのようなゆがんだ行政がまかり通ったのか、明らかにする必要がある。

 前政権の「継承」を掲げる菅政権は、財務省による調査を経て関係者の処分が済んでいることや、大阪地検の捜査が終結したことをあげて、この問題にふたをしようとしている。

 だが不正行為の当事者である財務省の調査は説得力を欠く。また、捜査はあくまでも刑事責任の有無を判断するためのものであって、事案の全容が明らかにされたとは到底いえない。

 「真相を知りたい」という雅子さんの訴えは国民の多くの思いでもある。行政を監視する国会の責務は、内閣が交代しても変わらない。裁判所任せにしては国権の最高機関の名が泣く。

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