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 すべての世代が安心できる社会保障のあり方を考える、政府の全世代型社会保障検討会議が約4カ月ぶりに開かれた。

 菅政権のもとで初の会議は、少子化対策にテーマを絞り、首相の肝いりの不妊治療への保険適用や男性の育休取得を促す方策などを話し合った。

 若い世代向けの施策の充実を、社会保障改革の目玉にする考えなのだろう。

 だが、国民が社会保障に抱く最大の不安は、少子高齢化で制度を維持できるのか、必要な給付は守られるのかだ。聞こえの良い話だけでなく、「痛み」の分かち合いも含め、将来不安に応える議論にするべきだ。

 出生率は4年連続で低下し、国内で生まれた日本人の赤ちゃんは昨年、想定より2年早く86万人台まで減った。子育て世代への支援拡充は急務である。

 だが、首相がこだわる不妊治療など個別の政策だけで、少子化に歯止めがかかるわけではない。安定した雇用の確保、子育てと仕事が両立できる環境の整備、家事や育児を男女がともに担うことが当たり前となる意識の改革など、総合的な取り組みが欠かせない。幅広い視点で議論を深めてほしい。

 仮に対策が効果をあげても、人口構成は急には変わらない。人口減少、超高齢社会に対応した「給付と負担」の見直しこそ、改革の「本丸」だ。

 ところが首相は「めざす社会像は自助、共助、公助、そして絆」と繰り返すばかり。共助や公助をどう見直すのか、どこまで自助を求めるのか、具体的な中身はいっこうに語らない。

 自民党総裁選の際には、消費税について「将来的なことを考えたら、行政改革は徹底して行ったうえで、引き上げざるを得ない」と発言した翌日、「あくまで将来的な話。安倍首相がかつて、今後10年ぐらい上げる必要はないと発言している。私も同じ考え」と修正した。社会保障のこれからを、真剣に考えているのだろうか。

 政府は、給付抑制策として75歳以上で一定以上の所得がある人の医療費負担を1割から2割に引き上げる案なども検討中だが、それで少子高齢社会を乗り切れるわけではない。

 今後、年金、介護なども含めて給付をどこまで抑え、必要な財源をどこに求めるのか。高齢者人口がピークを迎える40年代までを展望して全体像を示さねば、将来不安は拭えない。

 首相は「年末に最終報告を取りまとめる」としている。しかし、前政権が「国難」とまで言った少子高齢化に本気で向き合うならば、目の前の問題と中長期の課題を分け、腰を据えて議論する必要がある。

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