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役立たずと言われたので、わたしの家は独立します! 作者:遠野九重

第2章

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18. 遺産はすごい本でした&魔物が出現しました!

 

 我が名は青き星海の竜リベル。


 フローラリア・ディ・ナイスナーの婚約者だ。


 今日はフローラの付き添いで、王都の冒険者ギルド本部を訪れている。


 ここに来るのは300年ぶりだが、当時の面影は何も残っていない。


 まあ、当然と言えば当然だろう。


 人も物も、常に移り変わっていくものだ。


 そしてそれは。竜である俺も例外ではないらしい。


 竜とは孤独にして孤高の存在であるはずだが、俺はフローラという婚約者を得た。


 じきに結婚式が行われ、俺たちは夫婦になるだろう。


 ……その時のことを考えると、胸のあたりにこそばゆい感覚が沸き上がってくる。


 これが「照れ」という感情だろうか。


 フローラに出会ってからというもの、不思議な心の動きをいくつも経験している。


 たとえば、先程の会議だ。


 フローラは今日までのあいだに多くの資料を読み込み、質疑応答の予想まで立ててから話し合いの場に臨んだ。


 その準備の甲斐もあってか、イースという財務担当の職員からの鋭い指摘にもフローラは戸惑うことなく、スラスラと答えを返し、会議の主導権を最初から最後まで握っていた。


 どうだ、俺の婚約者は素晴らしいだろう。


 可愛らしいだけでなく、頭も回る。


 会議室にいる全員に向かって自慢してやりたいほどだった。


 今も、ふとすると口元がにやけてしまいそうになる。


 とはいえ、俺が人前でだらしのない顔をすれば、フローラに恥をかかせてしまうかもしれない。


 だから、ニヤける代わりに、フローラの頭を撫でることにした。


「わっ。急にどうしたんですか? くすぐったいです」


「嫌だったか?」


「ううん。嫌じゃないです。

 私、会議で頑張りましたし、もっと褒めてもらっていいと思います」


 フローラは、ふふん、と自信満々の表情でそんなことを言う。


「いいだろう。……頑張ったな、フローラ」


 俺はいつになく強い力で、わしゃわしゃ、とフローラの頭を撫でた。


 ところでここは冒険者ギルドの魔導エレベーターの中で、今は地下に向かっている。


 俺とフローラの2人きり……ではなく、ヘラルドという白髪の老人も一緒にいる。


 ヘラルドの肩書きはグランドマスター、いわば、冒険者ギルドという組織のトップだ。


 要するに『冒険者』という存在の頂点に立つ存在、と考えればいいだろう。


 ヘラルドは穏やかな視線を俺とフローラに向けながら、こう言った。


「いやはや、お二人とも若いですな。

 わたしのような年寄りにしてみれば、羨ましい限りですわい」


「若い……?」


 俺は思わず首を傾げる。


「ヘラルドよ、年齢ならば俺のほうが上ではないのか?」


「わたしは今年で65歳になります」


「俺は……少なくとも300歳は越えている」


「あ、私は15歳です。もうすぐ16歳ですね」


 ほう、フローラの誕生日が近いのか。


 たしかハルトのヤツが言っていたな。


 女性を喜ばせたいなら誕生日の祝いを忘れるな、と。


 帰ったら義父上(ちちうえ)殿か義兄上(あにうえ)殿に相談しておくとしよう


 それはさておき――


 ヘラルドは俺たちの言葉に大きく頷くと、こう答えた。


「確かにリベル殿の生きた年月はとても長いのでしょう。

 そのことは立ち振る舞いからも十分に伝わっておりますとも」


「ならばなぜ、俺のことを若い、と?」


「フローラ様と話しているときのリベル殿は、まるで人間の若者のようでしたからな。

 先程も、わたしの存在など忘れて2人きりの世界に入っておったでしょう。

 もちろん責めるつもりはございません。むしろいいものを見せていただきました。

 恋をすれば人は若返ると言いますからな」


「……俺は、竜なのだがな」


 俺は小声で反論すると、ヘラルドから視線を逸らした。


 面と向かって「恋」などという言葉を聞かされたせいか、どうにも鼓動が落ち着かない。


 フローラのほうを見れば、照れているらしく、頬と耳には朱色が差していた。


 俺も普段に比べると、少しだけ、鼓動が早くなっている気がした。





 やがて魔導エレベーターが動きを止めた。


 冒険者ギルド本部の地下に到着したらしい。


 チリン、という鈴の音とともにドアが自動で開く。


 その向こうには真っ直ぐな通路が伸びている。


 石造りとなっており、どこか古めかしい。


「フローラ様にお渡ししたいものは、一番奥の部屋にあります。

 さあ、こちらへ」


 ヘラルドはそう言って魔導エレベーターを出た。


 俺とフローラもその後ろについていく。


「ここ、かなり古いですね」


 石造りの廊下を見回しながら、フローラが言った。


「地上の建物はこれまでに何度も増改築しておりますが、地下のほうは300年前――冒険者ギルドが設立された当時のままとなっているようです。

 リベル殿にとっては懐かしいのではありませんかな?」


「……ああ、そうだな」


 俺は頷きながら、懐かしい気持ちに浸っていた。


 300年前にもここを歩いた覚えがある。


 たしかここにはフローラの先祖……ハルトの実験室があったはずだ。


 天才的な錬金術師でもあったハルトはここで『ラストエリクサー(究極の霊薬)』を生み出した。


 ――『究極』なんだから『アルティメット』が正しいんだろうけど、ニホンジンとしては『ラストエリクサー』が定番だよな。


 まるで意味の分からない発言だったが、ともあれ、ハルトなりに故郷を懐かしみながら『究極の霊薬』に『ラストエリクサー』という名前を付けたのだろう。


 そしてそれを飲み、ハルトは未来視の魔法を手に入れた。


 あの時は驚かされた。


 薬の副作用なのか、それとも未来視の魔法の影響かは分からないが、ハルトの黒髪は銀色に染まり、瞳も青色に変わっていた。


 ちょうど、フローラとまったく同じ色合いだ。


 そして眼と髪の変化が終わった直後、ハルトは意識朦朧となりながら、こう呟いていた。


「――やっとわかった。すべてがわかった。なぜオレがここに来たのか。

 それはきっと、遠い未来に生まれてくるあの子の幸福のためだったんだ」


『あの子』とは、おそらく、フローラのことなのだろう。




 ……俺がそんなことを考えているうちに、廊下の奥に辿り着いた。


 その先はオリハルコン製の分厚いドアによって閉ざされている。


「このドアは選ばれた者にしか開けることはできない……と言われております。

 実際、この300年ずっと閉ざされたままのようです」


 ヘラルドは立ち止まると、俺たちのほうを振り返ってそう告げた。


 ドアのすぐ右横の壁には、オリハルコン製のプレートが張り付けられており、そこには未知の言語が刻まれている。


「ヘラルド、これは何だ?」


「申し訳ございません、わたしにも分からんのです。

 おそらく、ドアを開けるためのヒントと思いますが……」


「私、読めます」


 フローラが小さく手を挙げてそう言った。


 かたちのよい眉を寄せ、「むむむ」と呟きながらプレートをまじまじと見つめる。


 可愛らしくて撫でたくなるが、今は邪魔をするべきではないだろう。


 やがて解読が終わると、フローラは俺とヘラルドのほうを向いた。


「『ナイスナー家の血を引くもの、この扉に触れよ』って書いてあります。

 やってみますね。……えい」


 フローラは右手を伸ばすと、オリハルコン製のドアに触れた。


 すると、ゴゴ……ゴゴゴゴゴ……と重低音が鳴り響き、ドアが左右に開いていく。


「おおおおっ……!」


 ヘラルドが感嘆の声を上げる。


 その横で、俺は過去の記憶を掘り起こしていた。


 思い出した。


 廊下の突き当りにある部屋――それはハルトの実験室だ。


 ラストエリクサーを飲んだあと、ほどなくして意識を失ったアイツをここから運び出した記憶がある。


 俺の記憶が正しければ、ドアの向こうには書物が塔のように山積みとなり、実験のメモが床一面に散らばっているはずだ。


 あいつは片付けが苦手だったからな……。


 だが、部屋の光景は、俺の予想とまったく異なるものだった。


「なんだと……?」


 室内はもぬけの殻となっており、書物もメモも、実験器具も残っていなかった。


 これは推測になるが、ハルトは未来視の魔法によってここにフローラが来ることを知り、その時に備えて片付けておいたのかもしれない。


 あいつは時々、変なところで格好をつけたがるからな……。


 そんなことを考えながら部屋の中を見回していると、奥のほうに祭壇のようなものが存在していることに気付いた。


 祭壇の上には、一冊の本が安置されている。


 これが、ハルトの遺産だろうか。



 * *



 私が手を触れると、オリハルコン製のドアは自動的に開きました。


 この仕掛け、リベルが眠っていた洞窟にもありましたね。


 そこから考えるに、冒険者ギルドの初代グランドマスターであるトルハさんは、私のご先祖様のハルトさんと同一人物ということで間違いないでしょう。


 ドアの向こうは広めの部屋となっていて、奥には祭壇がありました。


 近寄ってみると、そこには一冊の古びた本が置かれています。


 カバーの部分は分厚く、金縁の装飾が施されていました。


 なんだか高級感がすごいですね。


「これがトルハさんの遺産ですか?」


 私が確認のために尋ねると、ヘラルドさんは頷きました。


「はい。おそらく、そうだと思います。魔導書か何かでしょうか……?」


「ちょっと読んでみますね」


 私は本を手に取ります。


 表紙には、ご先祖様の故郷の言葉で『遺産目録(インデックス)』と書かかれていました。


 ええと。


 このふりがな、おかしくないですか?


 読み方としては『遺産目録(いさんもくろく)』が正しいような……。


 私はご先祖様の故郷の言葉についてはひととおりマスターしたつもりですが、もしかしたら、知識に抜けがあるのかもしれません。


 ともあれ、本の中身を読んでいくとしましょう。


 著者はハルト・ディ・ナイスナーとなっています。


 私のご先祖様ですね。


 前書きのところには、本の説明が載っていました。


 ふむふむ……なるほど……。


 説明にざっと目を通したあと、後ろのページをパラパラとめくります。


 そこには見開き2ページごとに色々な魔導具の名前とスケッチ、説明などが書かれていました。


「これは、魔導具の図鑑か?」


 リベルが横にやってきて、本を覗き込みながらそう呟きました。


「いいえ、ただの図鑑じゃないです。

 この本のなかに魔導具の実物が収納されている、って書いてありました」


「本のなかに……?」


 リベルが不思議そうに首を傾げます。


 私としても同じ気持ちでした。


 本のなかに物が入っている、というのは一体どういうことなのでしょう?


「とりあえず、やってみますね」


 私はリベルにそう告げると、前書きに書かれていた内容を思い出しながら、右手で本を高く掲げました。


 まず最初は、本の力を使うためのキーワードを唱える必要があるそうです。


「『開錠(オープン)』」


 ご先祖様の故郷の言葉でそう呟くと、ピカッ、と本が青色の輝きを放ちました。


 そして――


「……ふわっ!?」


 頭の上に、何かがぽふっと落ちてきました。


 いきなりのことだったので、なんだか変な声が出てしまいます。


 落ちてきたのは、白くて大きなとんがり帽子でした。


 先端の部分には赤色のリボンが結んであって、ちょっとオシャレです。


 前書きによると、とんがり帽子は本の使い手がナイスナー家の人間かどうかを判別する魔導具のようです。


 もしナイスナー家の人間でなければ、被った瞬間にとんがり帽子は消え失せてしまい、その人は本から魔導具を取り出すことができなくなるようです。


 私はご先祖様の血を引いているので、大丈夫みたいですね。


 さて、次の手順に行きましょう。


 本を開き、前書きの次のページをめくります。


 そこには箒の絵と、細かい説明が書いてありました。


 魔導具の名前は『魔法の箒』、ひとりでに動いて周囲を掃除してくれるだけでなく、物を運んでくれたり、乗って空を飛ぶこともできるようです。


 今回は、これを取り出してみましょうか。


 私は本を掲げて、定められた呪文を唱えます。


「『召喚(コール)』――『魔法の箒』」


 すると、開いていたページからポンッと箒が飛び出しました。


 普通なら箒はそのまま地面に転がるところでしょう。


 ですが魔法の箒は空中でクルンと一回転すると、地面を掃く部分……穂先をまるで二本足のように使って着地しました。


 そして、まるでお辞儀をするように、持ち手の部分……柄のところを折り曲げます。


 なんだか生物みたいな動きですね。


「おお……!」


 ヘラルドさんが後ろで感嘆の声を上げました。


「この箒が、初代グランドマスターの遺産ですか」


「いえ、他にもあるみたいです」


 私はパラパラと『遺産目録』をめくります。


 本の中にはおよそ100種類を越える魔導具が収録されており、どれでも好きな時に取り出せるようです。


 そしてその大半は、農具や大工道具など、西部の開拓に役立ちそうなものばかりでした。


 これらを活用すれば、街のひとつやふたつ、あっというまに作ることも可能かもしれません。


 なんだかちょっとワクワクしてきますね。





 * *





 ――ナイスナー家が西部の開拓に乗り出した時、我が遺産をその家の娘に渡すべし。


 冒険者ギルドの初代グランドマスターはそんな言葉を残しています。


 というわけで『遺産目録』はそのまま私のものとなりました。


「本当にいいんですか?」


「もちろんですとも」


 現在のグランドマスターであるヘラルドさんは、ニコニコと笑みを浮かべながら頷きます。


「そもそもの話、本から魔導具を取り出せるのはナイスナー家の方だけなのでしょう?

 ならば、我々が持っていたところで何の意味もありません。ぜひ、今後の開拓に役立ててください」


「ありがとうございます。

 本に収納されている魔導具があれば時間も費用も大きく削減できるでしょうし、すごく助かりました」


「それは何よりです。

 いやはや、それにしても肩の荷が降りた思いですな。

 代々のグランドマスターに伝わっていた使命を、わたしの代で果たすことができたのですから。

 フローラ様、わざわざ地下までお越しくださり、本当にありがとうございました」


 ヘラルドさんは晴れ晴れとした表情を浮かべながら、深々と頭を下げました。


 それから私たちは魔導エレベーターのところまで引き返し、地上の一階に戻ります。


 ちょうどその時のことでした。


 冒険者ギルドの職員さんが駆け寄ってきて、ヘラルドさんに向けてこう告げたのです。


「大変です! 王都に魔物が出現しました! すでに怪我人も出ているようです!」


「なっ……! 町中に魔物だと! 馬鹿な、ありえん!」


 想定外の事態に動揺しているらしく、ヘラルドさんは普段の丁寧な口調も忘れて叫んでいました。


 私も私で、かなり驚いています。


 魔物というのは、人里離れた山や森の中にポツポツと発生することはあっても、街や村にいきなり出てくることはありません。


 これはいったいどういうことなのでしょうか。


 まさか“世界の傷”がこの近くで開いたとか……?


 いえ、考え込むのは後にしましょう。


 300年に渡って人々を魔物の脅威から守り続けてきたナイスナー家の者として、こういう場合、やるべきことは決まっています。


「ヘラルドさん、私、ちょっと行ってきます」


「フローラ様、危険ですぞ!」


「大丈夫です。私、それなりに強いですから。

 ……リベル、一緒に来てもらって構いませんか」


「当然だ。おまえが望むなら、地の果てだろうと海の底だろうと付き合おう」








 私とリベルはすぐに冒険者ギルド本部の外に飛び出しました。


 あちこちで人々の悲鳴が木霊しています。


 どうやら魔物は一ヶ所に固まっているわけではなく、複数の箇所で暴れ回っているようです。


 放っておけば王都の人たちの被害は広がっていくばかりです。


 早急に対応したいところですが、さて、どのように動くべきでしょうか。


 ……そうですね。


 いいことを思いつきました。


 私は右手に抱えていた『遺産目録』を掲げます。


「『開錠(オープン)』」


 虚空から白くて大きなとんがり帽子が現れ、私の頭に覆いかぶさりました。


 これで『遺産目録』から魔導具を取り出すことが可能になったわけですが、今回使うのは――


「『召喚(コール)』――『魔法の箒』」


 そう、魔法の箒です。


 箒は私の考えを読んでいたように、ふわりと地面から浮かぶと、横倒しになりました。


 そこに横向きに腰掛けます。


 座り心地は……意外に悪くないですね。


 箒の周囲では風が渦巻いて、私の身体を支えてくれています。


 見た目に反して、かなりの安定感です。


 私は腰に下げていた魔杖メリクリウスを手に取ると、リベルに向かってこう言いました。


「私は空から魔法を使って、魔物を片っ端から狙い撃ちしていきます。

 リベルは打ち漏らしの処理をお願いします。

 もしも重傷の人がいたら冒険者ギルド本部まで運んであげてください。あとで私が治療します」


「なかなかに仕事が多いな」


 フッ、とリベルは口元に笑みを浮かべます。


「だが、おまえの願いとあらば叶えてみせよう。

 なぜならば、俺は頼れる婚約者だからな」


「よろしくお願いします。リベルのことはいつも頼りにしてますよ」


 私はそう告げると、魔法の箒に乗って空へと舞い上がりました。


 箒の操り方はとても簡単でした。


 頭の中で念じると、それに応じて箒が自動的に動いてくれます。


 渦巻く風のおかげで落ちる心配もありませんし、至れり尽くせりです。


 それなりの高度に達したところで周囲の様子を眺めると、どうやら魔物は王都の外周部……スラムのほうに出現しているようです。


 一方で貴族街の方は平和そのもので、同じ王都だというのにまるで別世界のようでした。


 ……というか、王都に魔物が出現するという異常事態なのに、近衛兵のみなさんや王都の騎士団はまったく動く様子がありません。


 まさかとは思いますけど、スラムの人たちを見捨てるつもりなのでしょうか。


 いや、さすがにそれはないですよね。


 放っておいたら貴族街や宮廷にも被害が出るでしょうし、ただ単に、出動が遅れているだけ……と信じたいところです。


 ともあれ、魔物の居場所はおおよそ見当が付きました。


 あとは一掃するだけです。


 私が魔杖メリクリウスを手に入れたのは1ヶ月ほど前のことですが、今日までのあいだに暇を見ては魔法の練習をしていました。


 今後、どこかで“世界の傷”が開いて魔物の群れが押し寄せてくる可能性もありますからね。


 リベルの力に頼ってばかりというのも申し訳ないですし、自分なりにできることを探していました。


 その結果を、今からお見せしましょう。


 私は意識を集中させながら魔杖メリクリウスを掲げました。


 空気中の水のつぶを増幅し、温度を奪って凍らせ、氷の槍を作り出していきます。


 その数は、およそ1000個です。


 もうちょっと練習すれば2000個や3000個も可能かもしれませんが……今回はこの数で十分でしょう。


「魔物だけを狙って、いい感じに突き刺してください。難しければリベルに任せるので無理はせずに。――《アイスランス・レイン》」


 私の言葉に従って、氷の槍が一斉に降り注ぎました。




 * *




 私の《アイスランス・レイン》によって魔物のほとんどは倒され、残りもリベルがすぐに蹴散らしてくれたおかげで、スラムの人たちへの被害はごくわずかに留まりました。


 怪我をした人については、私の《ワイドヒール》できっちり治療しています。


 そのあと宮殿に戻ると、ドレイク王から感謝の言葉を掛けられました。


「フローラリア姫、そしてリベル殿。王都を守ってくれて感謝する。

 この返礼は、必ずさせてもらう。

 それにしても、なぜ街の中に魔物が……?

 調べておく必要があるかもしれんな」


 それは私も同意です。


 今回はたまたま私とリベルがいたから丸く収まったわけですが、次はどうなるか分かりません。


 それに、もしかしたら王都以外の街中にもいきなり魔物が現れる可能性もありますからね。


 今回の件についてはフォジーク王国、ナイスナー辺境伯国、そして冒険者ギルドの三者が共同で調査を進めていく……ということになりました。


 こういうときに未来視の魔法が発動して、バーンと答えを見せてくれたらいいんですけどね。




こういうときに未来視の魔法が発動して、バーンと答えを見せてくれたらいいんですけどね。 (フラグ)


次回は、1章のラストで転落したあの人たちの末路です。


更新は7月19日 (日) 23時00分頃を予定しています。

(2週間後なのでご注意ください)


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