犬小屋に12時間以上、犬と閉じ込められたことも
「父は保育園と家庭では、家族と接する態度がまったく違いました。保育園では子供たちに教育者として振る舞っていましたが、家族で遠出したり、運動会など学校の行事に参加することはありませんでした。家族旅行も両親と妹だけが熊本に1度行ったくらい。だから思い出になるような家族写真もありません。
酔っ払うと暴力が酷くなり、私や母は首を絞められることもあった。あの人に殺されると思いました。別の日には、母が暴力に恐怖を感じて自宅の裏のみかん畑に逃げ隠れると、父がテスト勉強している私を呼んで、押入れや家中を探させたりもしました。
日頃から私には、『俺が言うこと聞けんのか』『俺を誰だと思っているんだ』と威圧するような言い方で、学校から帰ってくるとお風呂など家の掃除をさせました。母は『子供への暴力だけはやめてほしい』と抵抗していましたが、私の返事が悪かったり、掃除ができていないと、正座をさせて平手打ちする毎日です。
中学の頃には、飼っていたシェパード犬が人に慣れないからと、屋外にある狭い犬小屋に12時間以上も犬と閉じ込められたりしました。テストで高得点を取っても『勉強するな。お前に夢があるわけないだろう。俺を見て学べばいいんだ。他の連中なんて見なくていい』と、洗脳に近い状態です。家では、家族で笑って過ごす時間もたくさんありましたが、それは父が不在のときだけ。父が帰って来ると、私は2階の自室へと逃げました」
「半身麻痺の義母にも暴力」
「子供には本当に申し訳なかったと思っています」と語るA子さんが、さらに「許すことができない」と強調したのが、保育園設立に資産を譲り渡して支えたA子さんの母への吉文氏の暴力だった。当時同居していたA子さんの母は脳梗塞で倒れ、重度の半身麻痺を患っていたという。長女が語る。
「母が父に暴力を振るわれるのを見て、高齢の祖母は身体を張って何度もかばっていました。すると、父は祖母に向かって、『お前は何を言うか!』と倒れ込んでいる祖母の脇腹を何度も蹴り上げたのです。
大切な財産をなげうって保育園建設を支えたのは祖母です。その祖母が脳梗塞で入院しているときも、父はゴルフには行っても、1度たりとも病院へ見舞いに来たことはありません。それどころか、機嫌がよくないと私たちの前であろうと、日常的に祖母にまで暴力を振るっていた。祖母は1997年3月23日に亡くなりました。父には、一言でいいから母と祖母に『あの時はすまんな』と謝って欲しかった。女性や子供に手を出す人が真の教育者と呼べるのでしょうか」
しかし、吉文氏の教育者らしからぬ振る舞いは、暴力だけにとどまらなかったという――。
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