核のごみ処分 自主・民主・公開原則で
2020年10月16日 08時07分
核のごみ処分場の立地調査受け入れを相次いで表明した、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村。どちらも大地震の恐れが、否定しきれていない。本当に「適地」かどうか。綿密な調査と情報公開が必要だ。
寿都町に続いて高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場の調査受け入れを表明した神恵内村は、ニシン漁で栄えた漁業の村だ。資源の減少などにより主要産業が衰退していく中、財政への不安が募る。
人口約八百二十人。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、二十五年後には四百人を割り込むことになる。文献調査を受け入れるだけで、最大二十億円の交付金が手に入る。一般会計予算の六割に近い額。のどから手が出るほどほしい気持ちはよくわかる。
立地されることが決まれば、当初は近くに二十秒間いるだけで人を死に至らしめるという危険なごみを、無害化するまで数万年にわたって厳重に管理することになる。だが、村の持続可能性のためだと説かれれば、「いやだ」とは言えない村民も多いに違いない。
「ほおを札束でたたくよう」(北海道知事)にして、多くの原発が過疎地に立地されてきたのと同様の構図である。
国は三年前、核のごみを“安全”に埋設、管理できそうな地域を示す、「科学的特性マップ」を作成し、自治体の立候補を促した。火山や活断層、未来の人類が誤って掘り返す恐れがある鉱物資源の存在などが確認されたエリアは不適地とされ、適地は「緑」、不適地は「オレンジ」に塗り分けた。神恵内の村域はほとんどがオレンジ色だ。
神恵内村の沖合には、延長約七十キロの活断層が走っており、マグニチュード(M)7・5クラスの大地震を引き起こす恐れがあるという専門家の指摘がある。
神恵内村から南へ約四十キロの寿都町は大半が「緑」だが、「黒松内低地断層帯」を抱えており、大地震発生の恐れはやはり、否定しきれないという。
自主・民主・公開−。日本学術会議が提唱し、原子力基本法にも明記された原子力平和利用の三原則。核のごみ処分に関してもこれを堅持すべきである。
調査の情報は速やかに公開しなければならない。
国内には既に英仏から返還された核のごみが大量に“仮置き”されている。処分場は必要だ。だからといって、過疎地に押しつけるようなことになってはならない。
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